親を亡くした子どもたちを支える遺贈寄付 あしなが育英会でも増加傾向
病気や災害、自死などで親を亡くした子どもたちや、重度障がいで親が働けなくなった家庭に育つ子どもたちがいます。そんな子どもたちを支える草分けの活動にも、遺贈寄付は役立てられています。
病気や災害、自死などで親を亡くした子どもたちや、重度障がいで親が働けなくなった家庭に育つ子どもたちがいます。そんな子どもたちを支える草分けの活動にも、遺贈寄付は役立てられています。
一般財団法人「あしなが育英会」(東京都千代田区)の名前をご存知の方は多いと思います。1963年以来続く「あしなが」運動は当初、交通事故による遺児を対象にした奨学金の貸与からスタート。その後、交通事故遺児以外にも対象を広げ、約11万人の遺児が会の奨学金を使って高校や大学などに進学しました。会の名称は、名前を明かさない男性の支援で大学まで進学した孤児院の少女の物語「あしながおじさん」に由来します。
2018年度からは無利子の貸与奨学金に上乗せする形で、返済不要の給付型奨学金を始めました。社会的に経済的困窮が広がる現状もあって、2017年に約4700人だった奨学生はいま約7500人に増えています。奨学金以外にも、遺児の心のケアのためのプログラム実施や、アフリカの49か国を対象に、遺児が世界各地の大学に留学できるよう支援するプロジェクトなども実施しています。
コロナ禍は遺児家庭の暮らしを直撃しています。会が、全奨学生と保護者を対象にした調査(2020年11月発表)では、経済的・精神的に追い詰められた姿が浮かび上がりました。大学奨学生の4人に1人が退学を検討。自由記述欄には「農家から出荷できない野菜を破棄する袋ごともらい、虫だらけ、溶けて腐ったレタスの中から、食べられる部分を探しながら涙が出た」(埼玉県・40代母)、「アルバイトがないので食費を削っている。土日は寮でご飯も出ないため、友人からもらったカンパンで空腹をごまかしている」(東京都・大学3年生)など悲痛な訴えが並びます。そこで、会は奨学金基金の一部を取り崩して、返還不要の支援金20万円を全奨学生に配りました(総額約15億円)。20年4月にも15万円を支給しています(総額約10億円)。ますます活動資金が必要な状況ですが、人々の善意を信じているといいます。
活動の原資はすべて寄付金なのです。活動に協力する学生たちによる「あしなが学生募金」は春と秋、全国の駅頭や街頭で行われて風物詩のようになっています。遺贈寄付も大きなウエイトを占め、ここ10年ほどで顕著に増えているといいます。
「信託銀行と協定を結んだり、士業の方に活動を知ってもらったりと、遺贈を増やす努力はしています。今後、遺贈にかかわるチームを拡充して、より多くのご相談に応じられるようにもしますが、なにより活動を知ってもらい、共感いただく方を増やすことが基本だと考えています」と遺贈担当者は言います。
現金に限らず不動産の遺贈も受けています。会のHPには遺言書の記載例も出ていますが、事前の相談を勧めています。「奨学金に」とか「心のケアに活用を」など使い道の指定もできます。
ただ、「あしながおじさん」が匿名だったように、支援者の名前は基本、表に出ることはありません。会は一般財団法人なので、認定NPO法人などのように個人の寄付金が控除対象になることもありません。それでも年間寄付額は40~50億円にのぼり、継続して寄付している人は約2万3千人。それだけ多くの寄付者がいるのは、やはり共感と、長年の活動への信頼があってこそだと感じます。元奨学生たちの「恩返し」寄付も少なくないといいます。
コロナ禍前の予測では、2025年度の奨学生は1万人近くにまで増え、年間72億円が奨学金として必要になるとみていました。コロナによってこの数字はさらに増える可能性が大きいといいます。
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(記事は2021年3月1日時点の情報に基づいています)