目次

  1. 1. 最後に残るお金を自然保護活動に

自然保護や環境問題に関心のある人が遺贈寄付を考えたとき、選択肢の一つとなる方法があるのでご紹介します。連載第6回で少し触れた「みどりの遺言プロジェクト」です。

これは、環境保護に取り組む弁護士約450人が参加する一般社団法人JELF(Japan Environment Lawyers Federation:日本環境法律家連盟)が4年前から実施している、遺贈寄付をサポートするためのプロジェクトです。

JELF代表の池田直樹弁護士は「遺贈をしたいと考えても、信用できる団体かどうかの見極めが難しいからと二の足を踏む。相続に関わる中でそんなケースをみてきました。一方、環境保護団体が活動を続けていくにはやはり資金が必要です。それなら、弁護士という客観的立場で団体に信用を供与することによって、両者を結ぶシステムがつくれないかと考えました」と、プロジェクトを始めた動機を説明します。

実際の手続きはまず、JELFが環境保護団体の事業・活動計画の意義や持続可能性、情報公開の度合い、予算状況などを審査したうえで、信頼できると判断した団体をリストアップします。現在、日本野鳥の会やFoE Japan、環境市民など10団体を推薦しています。詳しくはJELFのHP(http://jelf-justice.net/)をご参照ください。

遺贈希望者はリストの中から遺贈したい団体を選びます。その上で、遺言作成から亡くなった後の執行までをJELFの弁護士が手伝います。相談は無料で、遺言書作成や執行などは実費がかかります。これまでに、このプロジェクトを活用して5人が遺言を作成したほか、10人ほどが作成中だといいます。

遺言を作成したうちのお一人、60代の女性の方にお話をうかがいました。
女性は仕事を定年退職したのを機に、老後の準備を始めました。一人暮らしを続け、子どもはいません。葬儀業者とお墓は自分で選んで契約をして、財産に関しての遺言を作成することにしました。亡くなった後、住む家は甥や姪に譲る一方、最後に残るお金は自然保護活動に活かしてほしいと考えました。女性は植物が好きで、地元で長く自然保護活動にかかわってきたのです。

女性はある植物園を訪ねた時、寄付者の名前がベンチプレートに残されているのをみて、名前がこうした形で残せたら素敵だと感じたそうです。だからもし可能なら、遺贈でその植物園に名前が残せたらいいな、と考えました。

信託銀行と遺言信託の話を進めようとしていた矢先、たまたま「みどりの遺言」のことを知り、説明会に参加しました。「自然保護のために活動している弁護士さんに相談したほうが、自分のライフワークの締めくくりとして満足のいく選択ができそう」。そのように感じたそうです。

もともと会員として長く関わっていたこともあって、リストにあった日本自然保護協会とWWFジャパンの2団体に遺贈することに決めました。WWFジャパンには「世界の植物の多様性の保護に関わる活動に使用されることを希望する」として、もし可能なら先述の植物園に役立ててほしいという文言も入れることにしました。公正証書遺言を作成したことで、女性は「肩の荷が下りた気がしています。あとは残された人生を精いっぱい生きていくのみと思っています」と言います。

このプロジェクトのように、信頼できる団体選びや遺言作成をサポートする動きが広まれば、遺贈寄付のハードルはより低くなり、紹介した女性のように自分の「思い」を次世代に繋げやすくなるでしょう。

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(記事は2020年7月1日時点の情報に基づいています)