日本の子どもたちの課題解決に遺贈寄付で支援する フローレンスとカタリバの取り組み
いろいろな問題に直面し、悩んだり苦しんだりしている子どもは、海外に限りません。今回は、日本国内の子どもたちが直面する課題に向き合う活動です。
いろいろな問題に直面し、悩んだり苦しんだりしている子どもは、海外に限りません。今回は、日本国内の子どもたちが直面する課題に向き合う活動です。
いま、日本の子どもの7人に1人は貧困状態です。コロナ禍で虐待も増えています。以前なら助からなかった新生児の「いのち」が医療の進歩で救われていますが、それに伴って増えている医療的ケアが必要な児童の保育は足りていません。そんな子どもをめぐるさまざまな問題を解決したいと活動しているのが、認定NPO法人フローレンス(東京都千代田区)です。
保育園では預かってもらえない発熱した子どもを預かる病児保育や、定員19人以下の「小規模認可保育園」、医療的ケア児(障がい児)のための保育園や訪問保育など、フローレンスが「親子の笑顔を妨げる社会課題を何とかしたい」と活動を始めたことで広まったり、制度化したりしたものもあります。
活動の性格上、保育事業など事業収益が財源の中核ですが、2019年度の寄付額は2億4千万円。主に新規事業の立ち上げなどに活かしているといいます。遺贈寄付は少しずつ増えているそうで、特定の分野に使ってほしいという要望にも可能な限り応えています。
たとえば、生前に寄付をしてくれていた男性が亡くなりました。妻が遺品を整理する中で「ひとり親家庭を支援したい」という亡夫の思いを知り、相続財産から「ひとり親家庭のために」と寄付をしました。多額の寄付だったこともあり、男性の命日前後に代表の駒崎弘樹氏が自宅を訪ね、活動内容の報告や意見交換をしています。
叔母の相続財産を継いだ女性は、産みの親と養親希望者双方を支援して特別養子縁組を推進する「赤ちゃん縁組」事業へ寄付しました。事業開始から1年半後のことです。もともと、この事業を始められたのは1300人以上から約3千万円の寄付が寄せられたおかげでした。女性はこのときの支援者の一人で、相続財産も活かしたいと考えたそうです。
中高生の教育支援や居場所づくりに取り組む、認定NPO法人カタリバ(東京都杉並区)は、東日本大震災で被災した子どもたちの学習支援の場「コラボ・スクール」運営でよく知られています。いまも宮城県と岩手県、福島県で、子どもたちが学んでいます。最近は、困窮する子どもたちを支援するため、「居場所」づくりを進めるほか、オンライン学習に必要なパソコンなどを提供する事業にも力を入れています。
年約10億円の活動資金の6割が寄付です。これまでに遺贈寄付は50件程ありました。
2018年、父親の相続財産から200万円を寄付してくれた女性がいました。父親が亡くなったころ、震災から時間が経過してコラボ・スクールの活動資金が集まりにくくなったことを新聞で知りました。父親が福島出身で教育に関心があったこともあり、「コラボ・スクールに役立ててほしい」とのことでした。それまで、カタリバとは縁がなかったのですが、活動内容についてお話ししたところ、女性は困難を抱えた子どもたちへの支援活動に関心をもって19年、20年と2年続けて寄付してくれました。「コロナが落ち着いたらボランティアでお手伝いしたい」と話しているそうです。
「課題に気づいてもらうのはNPOの大切な役割です。遺贈寄付をきっかけに活動にご理解をいただけてありがたい限りです」と広報・ファンドレイジング部の松本真理子さんは話します。
「コラボ・スクール」では大学生ボランティアが1カ月以上、スタッフと共同生活しながら活動します。あるボランティア学生の父親が、自身の父親から相続した財産の一部100万円を寄付してくれました。「家庭でカタリバの活動について話をしてくれ、評価いただいたのだと思います」と松本さん。社会人の息子が亡くなって、親がその遺産を活かせないかどうか、相談をしてきたこともあるそうです。一つ一つの寄付に詰まった「思い」を感じることが多いといいます。
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(記事は2021年2月1日時点の情報に基づいています)