目次

  1. 1. 相続税の税務調査とは
    1. 1-1. 税務調査の種類
    2. 1-2. 税務調査の時期
    3. 1-3. 約20%の人が税務調査を受ける
  2. 2. 相続税の税務調査の流れ
    1. 2-1. 税務署から税務調査の連絡を受ける
    2. 2-2. 調査当日(午前)
    3. 2-3. 調査当日(午後)
    4. 2-4. 調査結果
  3. 3. 相続税の税務調査でのよくある質問
  4. 4. 相続税の税務調査対象になりやすい人
    1. 4-1. 税理士に依頼しないで相続税の申告書を作成した人
    2. 4-2. 相続税がかかるのに相続税申告をしていない人
    3. 4-3. 相続税納税額や遺産総額が多い人
  5. 5. 相続税の税務調査を回避する方法
    1. 5-1. 相続や税務調査に強い税理士に依頼する
    2. 5-2. 相続財産を正しく把握する
    3. 5-3. 相続税額がゼロであっても税理士に相談する
  6. 6. 相続や税務調査に強い税理士の探し方
    1. 6-1. 専門分野を確認する
    2. 6-2. 依頼前に面談する
    3. 6-3. 実績を確認する
  7. 7. まとめ

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税務調査とは申告内容に誤りがないか税務署が確認する調査手続きのことをいいます。そのため、きちんと相続税申告をしていたとしても税務調査が入ることはあります。

ここでは、相続税の税務調査の種類や時期、対象となる確率を紹介します。

税務調査と聞いたら、税務署から強面の税務職員が来て自宅を洗いざらい調べ上げ、多額の追徴課税を支払わなければならないマルサ(査察)のイメージをする人が多くいると思います。そのため、税務調査は恐ろしいイメージが先行してしまいます。もちろん相続人にとって税務調査が来ることは良い気分ではありませんが、税務調査に対して正しい知識を持って臨めば恐ろしいものではありません。

税務調査には「任意調査」と「強制調査」があります。

脱税の疑いがなければ一般的には任意調査になります。任意調査は事前に税務署から調査をする旨の連絡が入るため、急に調査に来ることはありません。調査内容は、おもに税務職員からの質問や必要に応じて貴重品などの保管場所や通帳の内容を確認します。

強制調査はマルサで知られる国税局査察部が担当します。強制調査の特徴は脱税が疑われる納税者に対して裁判所の令状を持って調査がされます。強制調査は拒否することができず、納税に関する資料を押収する権限を持っています。脱税の隠ぺい工作が悪質だったり、脱税額が1億円を超えていると想定されたりする場合に強制調査が入りますので、よほどのことがない限り税務調査は任意調査になります。

税務調査の多くは相続税の申告書を提出した1~2年後の8~11月頃に行われます。3年目以降に実施される場合もありますが、年数が経つにつれ調査確率が減少する傾向があります。

なお、相続税の法定申告期限から5年が経過すると、相続税の時効を迎えるため、以降は税務調査は行われません。ただし、相続財産隠しなど不正行為によって税額を減らしていたことなどが発覚すれば、時効期間は7年まで延長されます。

相続税の税務調査は、税務署員が自宅や事務所などに直接来訪する「実地調査」と、電話や文書による調査をする「簡易な接触」に大別されます。

これらの調査を合計すると、相続税申告をした人の2割が税務調査を受けています。また国税庁によると、2021年に6317件の相続税の実地調査があり、うち約87%で申告漏れなどの指摘がありました。1件あたりの申告漏れ課税価格は3530万円で、1件あたりの追徴課税額は886万円に上りました。

参照:国税庁「令和3事務年度における相続税の調査等の状況」

調査は一般的に以下のような流れで行われます。事前に流れを知っておくと税務職員からの質問にもある程度安心して回答することができるでしょう。

相続税申告を税理士に依頼していた場合は担当税理士、相続人自ら申告をしていた場合は相続人に税務署から連絡が来ます。そして、調査の日時と場所を決めます。調査場所は、基本的には亡くなった方の自宅で行われます。このタイミングでは具体的な調査内容についての話はありません。

調査当日は午前10時に税務職員がきます。午前中は主にヒアリングになります。被相続人(亡くなった人)の家族関係、出生からの居住地、趣味、仕事、生活費などが聞かれます。また相続人に関する情報なども聞かれます。このヒアリングを通じて、税務職員は申告内容に齟齬がないか、申告漏れになるようなヒントがないかを確認します。嘘をつくとあとで疑われたり、重加算税の対象になったりする可能性がありますので嘘をつく必要はありませんが、余計なことは発言をしないで質問されたことのみきちんと回答しましょう。

また、あくまでも被相続人の財産に対する調査になります。被相続人本人にしか知らない事実もあるので、知らない場合は知らないと回答しましょう。12時位になると必ずお昼休憩をします。税務職員は自分たちで食事をとるため、相続人が準備をする必要はありません。

午後の調査は5時くらいまで行われます。通帳などの現物確認や、金庫の有無や印鑑などの貴重品の保管場所を確認します。通帳の確認はとくに慎重に行われる傾向にあります。通帳のメモや預金の動きから申告漏れの財産、贈与税の申告漏れ、名義預金が発見されることが多くありますので、相続人も調査の前、できれば相続税の申告をするタイミングで通帳の中身は確認をしておいた方がよいでしょう。

その後に税務職員が事前に調査したことの質疑応答を行います。現地調査は1日で終わるケースが多いですが、2日間に及ぶケースもあります。

実地調査のあとは、税務職員は申告内容に誤りがないかを最終確認します。調査の確認が終わると、調査結果の連絡があります。明らかな誤りがあった場合は、修正申告書を作成して提出することになります。提出後、税務署から延滞税や過少申告加算税の連絡がありますので、延滞税等を支払って税務調査は終了になります。

一方、調査結果に納得がいかない場合、税務署は更正処分を行いますが、相続人は一定期間内に税務署に異議申立を行い、納得がいかない旨を主張します。そこで折り合いがつかない場合は、国税不服審判所へ審査請求、訴訟へと発展して解決をしていくことになります。

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税務調査の当日は、質問を受けながら現物確認を行うこととなります。代表的な質問は、以下の通りです。

  • 被相続人がどのように財産を築いたのか
  • 被相続人の出身地、職業歴、結婚時期、家族構成、生活費、海外の居住歴
  • 被相続人の趣味
  • 被相続人の印鑑の場所
  • 被相続人の貸金庫の場所、貸金庫の中身
  • 被相続人の両親の相続
  • 配偶者の出身地、職業歴、生活費
  • 配偶者の財産状況
  • 相続人(配偶者以外)の職業、家族構成
  • 相続人(配偶者以外)の財産状況
  • 生前贈与の有無や金額、いつしたのか
  • 相続人(配偶者以外)の家の購入歴や売却歴
  • 被相続人の介護や入院・治療にかかった費用
  • 被相続人が亡くなる前に、誰が被相続人の財産管理を行っていたか(いつごろから)
  • 相続開始前に、被相続人名義の金融機関からおろした現金の使い道

上記の質問に対し、事前に回答を用意しておくと、よりスムーズに調査に対応できるでしょう。

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相続税の税務調査は申告数の約2割が対象になります。申告内容によって税務調査になる確率は変わりますが、主に税務調査の対象になりやすい人は以下のとおりです。

税理士に依頼して相続税の申告書を作成したかどうかによって、大きく左右されます。専門家である税理士が関与していない申告書は不備がある可能性が高いことから、特に税務調査が入りやすくなります。そのため税務調査の確率を減らしたいのであれば、相続税の申告書を作成するタイミングから相続に強い税理士に関与してもらうことをお勧めします。

相続税申告をしていない場合であっても、税務調査対象となる可能性があります。

基礎控除や配偶者控除などによって相続税がゼロになるケースが多くあります。しかし、控除の制度が正しく計算されておらず、実は相続税がかかるはずだったケースがあります。そのため無申告であっても「相続税の計算に誤りがないか」「相続財産に算入漏れがないか」などを確認することを目的に税務調査対象となるケースがあります。

相続税の納税額と遺産総額が多い人は、特に疑わしいことがなくても税務調査が行われるケースがあります。数億円もの遺産額がある場合、計算ミスや相続財産への算入漏れの可能性が高まるためです。また、相続税は累進課税を採用しており、相続財産が大きくなるほど追徴税額が大きくなるため、積極的に税務調査が行われることとなります。

【関連】相続税の申告漏れがあった場合、どんなペナルティがある?

税務調査で指摘を受けると、延滞税や加算税によって本来の納税額より多くの金額を納めなければならないケースがあります。確実に税務調査対象とならない方法はありませんが、確率を下げる方法があります。

ここでは、相続税の税務調査を回避する方法を解説します。

税務調査の確率を減らしたいのであれば、相続税の申告書を作成するタイミングから相続に強い税理士に関与してもらうことをお勧めします。税金の専門家である税理士が作成した申告書は、計算ミスなどの不備を防げるため、税務調査対象に選ばれる確率が低くなるでしょう。

また、いざ税務調査が入ることになった場合でも、基本的に税務署対応は、依頼した税理士が相続人の代理として行ってくれます。相続税に強い、かつ、税務調査に慣れている税理士に依頼すれば、スムーズに税務調査を進めてもらえるでしょう。

現預金や土地などの相続財産を正しく把握することで、税務調査の確率を下げられます。

税務署は被相続人の銀行口座や登記情報から相続財産を確認できるため、申告内容と相続財産に大きな差があると、税務調査の対象となるリスクが高まります。そのため、相続財産を正しく把握し、申告することが税務調査を回避する方法となります。

相続財産が基礎控除額や非課税枠の範囲内で収まり、相続税申告が不要になると思っても、念のために税理士に相談することで税務調査のリスクを軽減できます。被相続人の遺産が基礎控除未満であっても、生前贈与やタンス預金を見逃している可能性があります。これらの財産が相続税申告期限を過ぎてから発見されると、加算税や延滞税などのペナルティの対象となってしまいます。

また、小規模宅地の減額や配偶者の税額経験を適用するには、相続税の申告をする必要があるので注意が必要です。

相続税申告を税理士に依頼する際は、相続税申告や税務調査に多くの実績をもつ税理士を選ぶことが大切です。ただ、相続に関する業務を引き受けていなかったり、相続の経験がなかったりする場合もあるため、税理士を探す際は以下のポイントを押さえておきましょう。

相続に強い税理士を探す方法として、税理士事務所のホームページを確認する方法があります。税理士といっても専門分野がありますので、まずは相続を専門にしている税理士かを確認することが望ましいでしょう。

なかには、相続を専門としている税理士もいます。インターネットで検索する際は「税理士 相続 〇〇(地方名)」などで検索するとよいでしょう。

税理士に依頼する場合は、事前に一度面談することをお勧めします。税理士は相続人の代理人として税務署対応をしますので相続人との信頼関係が必要です。

また、税務職員も人間ですので、税務調査の実績があっても税理士の対応が悪く税務職員から心証を悪く持たれてしまうと、予期せぬ結果を招く可能性もあります。そうならないためにも一度面談をして、税理士の人柄やコミュニケーション能力なども確認したうえで税理士を選定するとよいでしょう。

税理士事務所のホームページなどで専門分野を確認する際は「実績」もあわせて確認しましょう。相続税申告に実績がある税理士は、税務調査の経験が豊富にある可能性が高いため、相続人に調査の事前対策から当日の対応方法まで適切にアドバイスをしてくれます。実際に税務調査が行われた際に慌てることがないよう、豊富な実績をもつ税理士を選びましょう。

相続税の税務調査は被相続人の財産に対する調査になります。すべての相続税申告に税務調査を行うわけではなく、相続財産が多かったり、申告書を税理士が作成していなかったりする場合に調査を受ける確率が上がります。

税務調査では難しい質問がされることもあり、相続人が対応に苦慮するケースがあります。また、相続人にとって税務調査は慣れない行事であるため、不安を完全に払しょくすることは難しいでしょう。

そのようなときは相続に強い税理士、税務調査に強い税理士に対応してもらうことにより適切に調査を進めることができるため、安心して税務調査をしたい場合は相続に強い信頼できる税理士をあらかじめ選定して税務調査に望むことをお勧めします。

(この記事は2023年1月1日現在の情報に基づきます)

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