目次

  1. 1. 贈与税申告 暦年贈与は110万円まで非課税
  2. 2. 生前贈与の注意点
    1. 2-1. 相続直前の贈与は相続税の対象に
    2. 2-2. 「名義預金」は贈与の成立に疑念を持たれやすい
  3. 3. 税務署に否認されないために生前贈与の「証拠」を残す
    1. 3-1. 贈与契約書の作成
    2. 3-2. 現金贈与なら銀行振り込みを利用
  4. 4. 「あえて贈与税申告」は生前贈与の「証拠」になる?
  5. 5. 贈与契約書の交わし方には注意
    1. 5-1. 「定期贈与」と「連年贈与」の違い
    2. 5-2. 税務署は定期贈与と連年贈与をどう区別する?
  6. 6. まとめ

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贈与税の申告方式には暦年課税と相続時精算課税という2つの種類があります。このうち原則的な方式である暦年課税は、もらう人(受贈者)ごとに年間110万円までの贈与が非課税となり、110万円以内であれば申告も不要です。110万円を超えた贈与額については、受贈者に贈与税がかかる仕組みになっています。

この年間110万円の非課税枠は、贈与税だけでなく相続税の節税にも効果があります。たとえば、親から3人の子に、10年間にわたり毎年110万円ずつ贈与をしたとしましょう。すると、年間110万円以内の贈与のため贈与税は非課税です。さらに、親から子に移転した計3300万円の財産は、親の相続時には手元を離れているため、原則として相続税の対象にもなりません。

ただし、生前贈与によって相続税の節税をするときは、いくつか注意点があります。

まずは、相続開始前3年以内に贈与された財産については、すべて相続税の対象になるという点です。相続直前に生前贈与をしても、相続税対策にはなりません。できるだけ早くから生前贈与をしておく必要があるのです。

2023年度の税制改正大綱では、生前贈与した額を相続財産に加える対象が相続開始前3年から7年になるなど、相続に関連する課税ルールについての大きな見直しがありました。詳しくは以下の記事をご参照ください。
2023年度税制改正大綱を解説 相続時精算課税に年110万円の控除を新設 生前贈与の持ち戻し期間が7年に延長へ

次に、「そもそも贈与が有効に成立しているのか?」という点に注意をしましょう。民法において、生前贈与が有効に成立するには、あげる人(贈与者)と受贈者、双方の意思が求められます。そのため、たとえば親が「子どもに110万円を贈与した」と思っていても、そのことを子どもが知らなかったり、110万円を引き続き親が管理していたりすると、税務署から「贈与はなかった」「110万円は親の財産(相続税の対象)」と判断される可能性があります。

こうした問題をとくに指摘されやすいのが、「家族名義の預金」です。相続税調査では一般的に、死亡した被相続人だけでなく相続人の預金口座も調べられます。このとき、家族名義の預金であっても、その出所が被相続人と把握されると、「相続財産ではないか?」という疑念をもたれる可能性があります。このときに、「生前贈与でもらった財産である」ということを示すことができれば、相続税は課されません。生前贈与を適切に行うことは、後の相続税のためにも重要なことなのです。

ここまでの説明を踏まえ、相続税対策として生前贈与を行うときは、「生前贈与の証拠を残す」ということが必要と考えられます。

それでは、どのようなものが生前贈与の証拠になるのでしょうか? もっとも確実と考えられるのが、「贈与契約書」です。一般的に、贈与契約書には、贈与者と受贈者それぞれが署名や押印をするため、これをもって贈与の合意があった証拠となるからです。

さらに、贈与契約書を交わした後は、その契約どおりに贈与を履行し、その証拠も残しておく必要があります。「現金110万円を贈与する」という契約書だけでは、その110万円が実際に贈与されたかまでは分かりませんから、できるだけ銀行振り込みなどで履歴が残るようにするといいでしょう。

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なお、贈与の事実を証明するために、「あえて贈与税の申告をする」という考え方があります。私も税務職員時代、「贈与額111万円、贈与税額1000円」の贈与税申告書を、毎年数件は目にしていました。

これはおそらく、税務署に対して「生前贈与を行った」と主張するために行っているものと考えられますが、生前贈与の証拠として、贈与税申告書だけでは不十分と考えます。なぜなら、贈与税の申告書は基本的に贈与を受けた受贈者がひとりで作成するものであり、贈与者・受贈者双方の合意を示す証拠にはならないからです。

また、贈与をした親が子どもの代わりに申告手続きをするケースを目にすることもありましたが、「親が勝手に子どもの財産を管理しているのでは」「名義預金があるのではないか」といった余計な疑いをもたれることにもなりかねないため、避けたほうがいいでしょう。

もちろん、何もしないよりは贈与税の申告をしておいたほうが、証拠を残すという意味で望ましいのですが、贈与税申告をする場合も、プラスアルファとして贈与契約書を作り、お金の移動履歴を書面で残しておくことをおすすめします。そして、契約書を2部作成するなどして、贈与者、受贈者の双方で証拠書類を管理するようにしましょう。

最後に、贈与契約を交わす場合であっても、契約のしかたによっては思わぬ税金がかかる可能性があることについて注意喚起をしたいと思います。

次の2つのパターンを比較してみましょう。

  1. 「現金110万円を贈与する」という契約を、10年間にわたって毎年交わし履行する
  2. 「現金110万円を10年間にわたり贈与する」をいう契約を1回交わし、その後10年間にわたって毎年履行する

上記のいずれも、計1100万円が贈与されるという点は変わりません。しかし、1は贈与税がかかりませんが、2は贈与税がかかります。なぜなら、2は「年間110万円の贈与」ではなく「1100万円を受け取る権利の贈与」と解釈されてしまうからです。

1のように、毎年贈与を行うことを「連年贈与」といいます。連年贈与の場合、1年ずつの贈与額に基づき贈与税を計算することになります。したがって、毎年110万円の非課税枠を使うことができます。

一方、2は「定期贈与」といい、実際の贈与の履行が年をまたいだとしても、1度にまとめて贈与税の計算がなされるため、贈与額が110万円を超えてしまい納税が必要となります。生前贈与を使って相続税の節税をするときには、このように契約の交わし方にも注意をする必要があるのです。

私が税務職員だった頃に定期贈与の契約書を目にしたことはありませんが、申告書の添付書類や相続税調査の過程で贈与契約書を見るときは、「定期贈与ではないか?」という視点でチェックはしていました。

生前贈与を行う際は、ある程度の方向性を決めながらも、双方の意思決定は毎年、その都度行うようにすると安心です。そういった意味では、贈与額も、あらかじめ「毎年110万円」などと固定せず、その時々の財産などの状況によって変えるほうが自然でしょう。

生前贈与は年間110万円の非課税枠内であれば申告が不要で、相続税の節税にも効果があります。ただし、適切に行わないと、思わぬ税金が課されるおそれがあります。贈与契約書の作成は、生前贈与の最も確実な証拠となります。生前贈与で迷うことがあれば、早めに税理士などに相談してみてください。

(記事は2023年1月1日時点の情報に基づいています)

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