目次

  1. 1. 贈与契約書を作成するメリット
    1. 1-1. 贈与の履行を確実にする
    2. 1-2. 贈与が確実にあったことを証明できる
    3. 1-3. 税務調査で贈与の事実を主張できる
  2. 2. 贈与契約書の書き方とひな型
  3. 3. 贈与契約書を書く際のポイント
    1. 3-1. 贈与契約書に書くべき5つの要素
    2. 3-2. 贈与契約書はパソコンでもOK、署名は手書きで
    3. 3-3. 贈与契約書の捺印は実印で
    4. 3-4. 受贈者が未成年の場合は親権者の署名捺印も
    5. 3-5. 不動産の贈与には印紙が必要
    6. 3-6. 贈与契約書は贈与者・受贈者双方で保管
  4. 4. 贈与契約書以外の客観的な事実証拠も備える
  5. 5. 贈与契約書にさらに客観性を持たせるなら公正証書の作成を
  6. 6. まとめ

贈与契約書とは、財産を贈与するときに作成する契約書を言います。贈与は口頭でも成立しますが、口約束だけだと不安なものです。贈与の事実を「贈与契約書」という書面に残せば、次のメリットが得られ、安心できます。

口頭だけの贈与契約だと証拠が残らないため、履行されていない部分については放置されるリスクがあります。贈与契約を書面に残せば、贈与を確実に履行してもらうことができます。

贈与契約書は、贈与の事実があったことを確実に証明することができます。そのため、相続発生後、贈与契約書を見て生前贈与を考慮し、より公平に遺産分割を行うことができます。

さらに、相続税の税務調査で不当な課税を防止するのにも役に立ちます。税務調査では、次の2つを指摘されることがよくあります。

  • 子にあげたお金は「名義預金」に過ぎない
  • その都度贈与契約したのではなく、10年に渡って毎年100万円ずつ贈与すると約束していた「定期贈与」ではないか

「名義預金」とは「名義が子だけれど実質的な持ち主は親である預金」です。この指摘が相続発生後にされると「相続税逃れのために預金の名義を子にしただけだ」とされ、相続税が課される可能性があります。

また、「定期贈与」ではないかと指摘を受け、「贈与税を回避するために1000万円の贈与を10年に分けただけだ」とみなされると、贈与の最初の年に贈与契約があったとして1000万円に贈与税が課税されることになります。

贈与契約書があれば、その都度贈与の事実があったことを証明し、不当な課税を防ぐことができます。

では、贈与契約書の書き方について見ていきます。書き方に厳密なルールはありません。しかし、自由に書いてしまうと誤解が生じ、トラブルにつながります。

最初にひな形をご覧ください。

金銭の贈与契約書

金銭の贈与契約書

不動産の贈与契約書

不動産の贈与契約書

株式の贈与契約書

株式の贈与契約書

贈与契約書を作成する際は次の点に気をつけましょう。

贈与契約書は贈与の内容を明確にしてはじめて有効になります。次の5つは必ず書きましょう。

  • 誰があげるのか(贈与者の氏名・住所)
  • 誰にあげるのか(受贈者の氏名・住所)
  • いつあげるのか(贈与契約締結の日付、実際に贈与を実行する日付)
  • 何をあげるのか(贈与財産の種目・内容・金額・住所、その他財産に関する情報)
  • どうやってあげるのか(贈与の方法)

契約書はパソコンでも手書きでも構いませんが、当事者の記入欄については、手書きの「署名」の方が「本人が書いた」という信頼性が高まります。

契約書の信頼性を高めるなら、捺印は三文判ではなく印鑑登録された実印で行いましょう。

受贈者が未成年のときには、贈与者・受贈者だけでなく、受贈者の親権者も契約書に署名捺印をすることが必要です。

贈与する財産内容によっては印紙を契約書に貼らなくてはなりません。金銭や株式、車といった動産の贈与には印紙は不要ですが、土地や建物など不動産の贈与については、贈与額に応じた金額の印紙が必要です。

金額記載がなければ200円、金額の記載があればその金額に応じた印紙を貼付しなくてはなりません。なお、印紙は郵便局の他、法務局や役所、コンビニエンスストアで購入できます。

贈与契約書は贈与者・受贈者の双方が保管できるよう2通作成します。

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贈与契約書さえあれば贈与は万全なわけではありません。契約書は当事者の合意について証明するだけです。そのため、以下のように客観的な事実証拠も備えておく必要があります。

  • 金銭を贈与するならば現金ではなく預貯金口座への振込にすること
  • 預金通帳と印鑑は受贈者側が管理すること
  • 株式や不動産の名義は受贈者に変更すること
  • 名義を変更したらその事実を証する書類を契約書と共に保管すること(登記事項証明書など)

贈与契約書は贈与の当事者間で作成されます。当事者の都合で日付を変えようとすればいくらでも変えられるため、贈与の内容によっては税務調査で信ぴょう性を疑われかねません。

贈与の事実の証拠能力を高めたいのなら、公証役場で確定日付をもらうとよいでしょう。

2023年度の税制改正大綱では、生前贈与に関連する課税ルールの大きな見直しがありました。たとえば、相続開始3年以内に生前贈与された財産は、相続財産に戻したうえで相続税を計算する「持ち戻し」というルールがありますが、この期間が3年から7年に延長されました。2024年1月1日から適用されます。

【関連】生前贈与は亡くなる7年前まで相続税対象に 実質増税への対応策も解説

生前贈与では上記のようなルール改正をはじめ、定期贈与や名義預金にも注意が必要です。贈与契約書の作成は、ポイントを踏まえて自分ですることもできますが、内容に間違いのない契約書にするためにも、弁護士や行政書士などの専門家に早めに相談することをお勧めします。

(記事は2023年1月1日時点の情報に基づいています)