準確定申告の必要書類は? 申告書の書き方や還付金受け取りの注意点も解説

人が亡くなると、相続税の申告以外に準確定申告をしなくてはならないこともあります。全員が必要なわけではありませんが、もし必要となったら4カ月以内に行わなくてはなりません。どんな書類が必要なのでしょうか。税理士が手続きの流れを確認しつつ、準確定申告の必要書類について解説します。
人が亡くなると、相続税の申告以外に準確定申告をしなくてはならないこともあります。全員が必要なわけではありませんが、もし必要となったら4カ月以内に行わなくてはなりません。どんな書類が必要なのでしょうか。税理士が手続きの流れを確認しつつ、準確定申告の必要書類について解説します。
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大切な人が亡くなったとき、相続人は被相続人(以下「亡くなった人」)の財産の整理から遺産分割の協議、そして相続税の申告手続きを行いますが、もう一つ、申告手続きで忘れてはいけないのが準確定申告の手続きです。
準確定申告は通常の確定申告の手続きと共通する部分は多いですが、準確定申告特有のルールがいくつか存在します。
通常の確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について所得税を計算しますが、準確定申告は1月1日から亡くなった人の死亡日までに生じた所得について所得税を計算します。
準確定申告は必ず申告をしないといけないわけではありません。基本的に確定申告の場合と同じ考え方ですが、以下のような場合は準確定申告が必要、または不要になります。
【準確定申告が必要な場合】
【準確定申告が不要な場合】
通常の確定申告は納税者本人が確定申告を作成・提出しますが、準確定申告は納税者本人が亡くなっていますので、相続人(遺言により「遺産の全部を与える」や「遺産の2分の1を与える」など、遺産を特定せずに割合を指定して遺産を受け取る包括受遺者を含みます。以下「相続人等」)が代わりに作成・提出をします。準確定申告書は相続人等が2人以上いる場合は連署により提出しますが、別々に提出することもできます。
通常の確定申告は所得が生じた年の翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告書を提出しますが、準確定申告は亡くなった人が亡くなったことを知った日の翌日から4カ月以内に準確定申告書を提出します。
なお、確定申告をしなければならない納税者本人が翌年1月1日から3月15日までに確定申告書を提出しないで亡くなった場合は、前年分及び本年分の申告書はともに亡くなったことを知った日の翌日から4カ月以内が提出期限になります。
準確定申告書は亡くなった人の住所地を管轄する税務署へ提出します。
医療費やふるさと納税などの寄付金控除、配偶者控除、扶養控除などの所得控除を受ける場合は準確定申告をすることで還付を受けられる場合があります。
ただし、これらの所得控除を適用したからといって必ず還付が受けられるわけではありません。所得税を計算した結果、支払うべき所得税が給料や年金などですでに源泉徴収された金額や予定納税よりも少なかった場合は還付を受けることができます。
なお、還付の申告は対象年の翌年1月1日から5年間手続きが可能になります。
まずは、亡くなった人が前年分の確定申告書を作成しているか確認する必要があります。その申告内容を確認したうえで、たとえば個人事業や不動産賃貸、個人年金などがある場合は、準確定申告が必要と考えられます。また、給与や公的年金で源泉徴収税が差し引かれている場合は還付を受けられる可能性があると考えられます。
相続人等が2人以上いる場合、準確定申告の提出方法は2パターンあります。1つは相続人代表を決めて各相続人等が連署をして準確定申告書を1つにまとめて提出する方法です。相続人代表者は税務署から送付される書類や問い合わせの対応を行うことになります。
もう1つは各相続人それぞれが準確定申告書を提出する方法です。この場合、その申告書を提出した相続人等はほかの相続人等に申告内容を通知する必要があります。
所得税及び復興特別所得税の確定申告書
準確定申告は通常の確定申告書の同じ様式で作成します。なお、2022年までは所得の種類によって確定申告書Aと確定申告書Bが使い分けられていましたが、2023年の確定申告から確定申告書Aが廃止され申告書の様式が統一されました。そのため、2023年以降の準確定申告からは統一された申告書で準確定申告書を作成することになります。
青色申告決算書または収支内訳書
亡くなった人が個人事業や不動産賃貸を行っていた場合、青色申告決算書(亡くなった人が青色申告承認申請書を提出している場合)、または収支内訳書を作成します。この書類も通常の確定申告の時に提出する書類と同じ様式で作成します。
確定申告書付表
相続人等が2人以上いる場合、「死亡した者の_年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)」を提出します。この付表には相続人代表の氏名や各相続人の情報などを記入します。付表の様式は国税庁のサイトからダウンロードできます。
準確定申告の確認書
相続人等が2人以上いる場合でe-Taxによる電子申告(以下「e-Tax」)により準確定申告書を提出するときは、相続人等は相続人代表に準確定申告の提出を委託する旨を記入した確認書を提出します。確認書の様式は国税庁のサイトからダウンロードできます。
委任状
相続人等が2人以上いる場合で準確定申告に係る還付金を相続人代表が一括して受領するときは、各相続人が署名した委任状を提出します。委任状の様式は国税庁のサイトからダウンロードできます。
源泉徴収票、控除証明書など
準確定申告書を提出するときに添付または提示しなければならない書類があります。たとえば、給与所得の源泉徴収票、公的年金等の源泉徴収票、特定口座年間取引報告書、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書、生命保険料の控除証明書、地震保険料の控除証明書、寄付金控除証明書、医療費控除の明細書など該当する項目があれば添付または提示します。申告書に添付・提示する書類については国税庁のサイトが参考になります。
マイナンバーの関連書類
準確定申告書を提出するときは相続人等のマイナンバー関連書類の添付または提示が必要です。
〈マイナンバーカード(個人番号カード)を持っている場合〉
マイナンバーカードの表面及び裏面の写し
〈マイナンバーカードを持っていない場合〉
通知カード(または住民票の写しなどマイナンバーの記載のある書類)及び運転免許証やパスポートなど身元確認ができる書類
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相続の相談が出来る税理士を探す①相続人等が1人の場合は、申告書に「準確定」と追記したうえで下記のように相続人の情報も記入します。図版「準確定申告書の書き方(相続人等が1人の場合)」の赤字部分が記入例です。
②相続人等が2人以上の場合は、申告書に「準確定」と追記したうえで下記のように記入します。相続人等が2人以上の場合は確定申告書付表を添付しますので、亡くなった人の情報のみでよく、相続人の情報は不要になります。図版「準確定申告書の書き方(相続人等が2人以上の場合)」の赤字部分が記入例です。
確定申告書付表は相続人等が2人以上いる場合に添付する書類です。図版「確定申告書付表の記入例」のとおり記載します。
1 亡くなった人の住所、氏名、死亡年月日などを記入します。
2 準確定申告の納税額または還付額を記入します。
3 相続人代表を選定・記入します。
4 限定承認をしている場合は「限定承認」欄に〇を記入します。
※限定承認とは相続によって得たプラスの財産を限度に亡くなった人のマイナスの財産を相続することを言います。
5~7 各相続人等の住所や氏名、マイナンバー、各人の税額、還付の場合は振込先となる銀行口座などを記入します。なお、相続放棄をした人は記入する必要はありません。
※5(7)の相続分の欄は、法定相続分により財産を取得する場合は「法定」に〇を、遺言による指定相続分により財産を取得する場合は「指定」に〇を付けます。
※5(8)の相続財産の価額の欄は、各相続人等が取得するプラスの財産の相続時の時価を記入します。記入時に分割協議が整っていない場合は、プラスの財産の総額に相続分を乗じた金額を記入します。
2020年1月6日以降に提出される2020年分以降の準確定申告書からe-Taxの提出が可能になりました。
・所得税及び復興特別所得税の準確定申告書
・死亡した者の_年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
確定申告書付表は相続人等が2人以上いる場合に提出しますが、e-Taxの場合は相続人等が1人でも提出します。
・準確定申告の確認書
e-Taxの場合は相続人代表が代表して準確定申告書を提出するため、相続人代表に委託する旨を記載した「準確定申告の確認書」をPDF形式に変換して提出します。
・委任状
相続人等が2人以上いる場合で準確定申告に係る還付金を相続人代表が一括して受領するときは、各相続人が署名した委任状をPDF形式に変換して提出します。
e-Taxの場合は相続人代表のID(利用者識別番号)と相続人代表の電子証明書を添付することで提出することができます。
準確定申告で還付が生じた場合の還付金は亡くなった人のプラスの財産になりますので、相続財産の計上漏れに注意が必要です。一方で準確定申告により納税が生じた場合は亡くなった人のマイナスの財産になりますので、同様に計上漏れに注意が必要です。
準確定申告の還付により還付加算金が生じる場合があります。還付加算金とは税金の納めすぎなどを理由に還付が発生した場合、その還付金について生じた利息相当分のことを言います。この還付加算金は亡くなった人の死亡後に相続人に発生するため、相続人の確定申告における一時所得として申告をします。
亡くなった人が消費税の納税義務者である場合、所得税の準確定申告書の作成と同時に消費税の準確定申告書の作成も必要になります。税務署へ消費税の届出書類の有無や過去2年分位の確定申告書などを確認して、消費税の申告漏れに注意しましょう。
個人事業や不動産賃貸のある亡くなった人は死亡と同時に廃業することになります。そのため、準確定申告書の他にも税務署へ廃業手続きをする必要があります。また、亡くなった人の個人事業や不動産賃貸を引き継いだ相続人は、開業手続きや消費税の届出書、インボイス登録などの手続も同時にする必要があるため、書類の提出漏れに注意が必要です。
通常の確定申告とは異なり、準確定申告では提出書類が増えます。また、亡くなった人の死亡日から4カ月という短い期間で手続きを行わないといけないため、申告書の作成方法がわからない、難しいということであれば早めに税理士などの専門家に依頼したほうが良いでしょう。できれば相続税の申告とともに一緒に依頼するとよりスムーズに手続きをすることができます。
(記事は2023年5月1日時点の情報に基づいています)
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