目次

  1. 1. 後継ぎ遺贈型受益者連続信託とは?
    1. 1-1. 二世代後まで財産の管理ができる唯一の方法
    2. 1-2. 後継ぎ遺贈型受益者連続信託は事業承継でも利用が可能
    3. 1-3. 後継ぎ遺贈型受益者連続信託は遺留分侵害額請求の対象になる可能性がある
    4. 1-4. 遺言では二世代後までは指定できない
  2. 2. 家族信託における後継ぎ遺贈型受益者連続信託の三つの利用例
    1. 2-1. 配偶者と子どもに財産を残すケース
    2. 2-2. 高齢の両親が障がいのある子へ財産を残すケース
    3. 2-3. 配偶者と自分の甥に財産を残すケース
  3. 3. 後継ぎ遺贈型受益者連続信託を利用すると税金はどうなる?
    1. 3-1. 財産を受け継いだ人物に相続税が発生する
  4. 4. まとめ 2代目以降も相続の道筋を決められる一方、リスクも想定を

「相続会議」の司法書士検索サービス

「自分が亡くなった後も財産の行き先をコントロールしたい」
相談に来る方から、こんな希望を聞くことがあります。背景は様々です。
「まずは奥さんに、その後は介護してくれた子供に渡したい」

「知的障がいがあり財産の管理ができない子どもがいる」

「妻に相続した後、子どもがいないので、財産を自分のきょうだいに戻したい」
などなど。

こんなときにも、家族信託で解決することができます。

遺言で決められるのは、自分の次までです。「自分→妻→特定の子供」や「自分→子供→孫」というような、二代目や三代目以降の財産の承継先を決められる機能は遺言にはありません。

これは、唯一家族信託でのみ実現可能な機能になります。
具体的には、信託契約書の中で自分が亡くなった場合に、誰に継いでもらうかを、あらかじめ定めておきます。「私が亡くなったら妻へ、妻が亡くなったら子供Aへ承継する」という条項を記載するイメージです。

これにより、生前に自分と妻の面倒を見てくれた子供に、残った財産について渡す道筋をつけることができます。私達は「超遺言効果」と呼んでいます。

 但し、永遠に道筋をつけられるわけではありません。信託法91条により、信託がされた時から30年を経過後に財産権(受益権)を取得した受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでとされています。

家族信託の機能は? 生前の管理から「跡継ぎ遺贈」にも対応

「自分が死んだら妻に相続させて、妻が死んだら…」後継ぎ遺贈は可能?

この二代目・三代目以降も決めておける機能について、会社などの事業承継でも活用ができます。

会社の経営には、自社株式だけでなく、社長個人の所有不動産を事業用に使用している場合には、当該不動産も後継者に引き継がなければいけません。社長個人の資産であると同時に、会社の経営には欠かせない資産であり、後継者以外に相続されることや共有になることは会社の経営にも大きく影響するからです。

そのため、現社長からの財産承継の道筋を定めておきたいという希望もいただきます。例えば、自分の次は長男、その次は長男の子供(孫)を後継者にと考えている場合です。

また、大家業を営んでいる方で、親から引き継いだ収益不動産を次の代に承継していきたいという場合にも、活用できます。

不動産にて、後継ぎ遺贈型受益者連続信託を組むメリットとして、登録免許税の負担が軽減されることがあります。不動産を信託して受益権を承継する形にすると、不動産登記の変更のために納税する登録免許税が1つの不動産につき、数千円の負担ですみます。そのため、何代にも渡って不動産を承継していく場合には、登録免許税を抑えることができます。

後継ぎ遺贈型受益者連続信託でもリスクがあります。それが、遺留分の問題です。遺留分とは「特定の相続人が最低限もらえる取り分」になります。

例えば、父親と母親、長男、次男の家族で、長男には子供がいるとしましょう(下図を参照)。その時、父親と長男との間で不動産管理を長男に託す信託契約を締結しました(委託者兼受益者 父親、受託者 長男)。
信託契約の内容として、最初の財産権(受益権)の持ち主は父親、父親が亡くなったら財産権(受益権)は長男、長男の次は長男の子供へと承継されるように定めたとします。

父親が亡くなり、信託契約書の内容に従って、長男に財産権(受益権)が承継されました。これに対して、財産を全くもらえなかった次男が遺留分侵害額請求をしてきた場合が問題になります。

信託した財産に対して、遺留分侵害額請求の対象になるかは学説が別れていて、まだ明確なルールは示されていません。ただ、遺留分侵害額請求をされて長男が支払うことになった場合に、承継した財産を売却しお金に変えて支払うことにもなりかねません。

そのため、遺留分侵害額請求をされないように事前に関係者全員で合意をとっておくこと、またはもしも信託財産が遺留分の対象となった場合でも、長男が安心できる仕組みを作って進めていくことをお勧めしています。

財産権(受益権)を長男に引き継いだ場合の関係図

信託と並べて比較されるのが遺言です。遺言では、自分の財産を誰に相続させるかは指定できますが、その次を指定することはできません。自分の次の次の人に相続させるためには、自分だけでなく自分の次の人も遺言を作り、相続させる人を指定しておくことが必要です。

ただ、遺言が作れない場合もあります。
例えば、自分の次が高齢の配偶者だった場合、配偶者が既に認知症などになっていて遺言を作る能力がないとされると遺言を作ることができません。

また自分の次に知的障がいのある子どもに相続させたいケースも注意する必要があります。この場合にも知的障がいのある子どもに遺言を作る能力がないと遺言を作ることができず、子どもに相続人がいない場合には国庫に財産が行ってしまうことになります。

次項から、具体的なケースを見ていきたいと思います。

一つ目のケースは、自分(父親)の財産について信託をして、最初は自分(父親)、2番目は配偶者である母親、3番目は子供として財産を残すケースです。

よくご相談をいただくのは、実家です。実家には父親と母親とで暮らしていて、子どもは同居していないケースです。子供には、親の面倒をみると言ってくれている子どもAと、そうでない子どもBの2人がいるとします。

自宅は父親の所有になっています。父親と母親の希望として、施設に行くときには実家を売ったお金で施設に入れてほしいと子どもAは言われていました。このときに、父親がもしも認知症の悪化により、自宅で暮らすのが難しくなった場合、子どもAは実家を売ろうと考えます。でも売れない可能性が高いです。なぜなら、所有者である父親の認知症が悪化をしていると、契約能力がないという理由で、売却ができなくなってしまうためです。

売却できるようにしておく対策の一つが、父親から子どもAに実家を家族信託しておくことです。そうすれば、父親の認知症の影響を受けずに、子供Aは自分の判断で実家を売却して、そのお金から父親と母親の医療費や生活費、施設の費用を払っていけます。

父親が亡くなった時に実家が残っていた場合、信託契約に従い財産権は配偶者である母親に承継されますが、ここで信託契約は終わりません。引き続き子供Aが自分の判断で実家を売却できます。つまり、一つの家族信託で父親と母親の両方の認知症対策ができるのです。

父親が寿命で亡くなった時、母親も高齢であることが予想されます。もしかしたら、認知症になって契約が難しくなっている可能性があります。男性より女性の方が、平均寿命は長いですが、ずっと健康に生きられるとは限りません。子どもAのように面倒を見ると言ってくれる子供が金銭面では安心できるように対策しておく必要があると思っています。

そして、母親も亡くなった場合に、自宅が残っていたまたは自宅売却により得たお金が残っていた場合には、面倒を見てくれた子どもAに渡せます。これにより、面倒を見てくれた子どもAに、子どもBよりも多めに財産を渡すことができます。

また父親から直接子どもAに渡すのではなく、父親→母親→子どもAという順に承継する後継ぎ遺贈型受益者連続信託にしていることには、もう一つ大きなメリットがあります。それは、手元に残るお金を多くすることです。

父親または母親が財産権を持っている状態で実家を売却した場合には、マイホーム特例が使える可能性が高いです。マイホーム特例は、居住者が家を売却した場合に使える税務上の特例です。子供Aは居住していないため、子供Aが実家を取得して売却してもマイホーム特例は利用できません。マイホーム特例が利用でき譲渡益に課税されなくなることで、売買価格によっては500万円~600万円手元に残るお金が変わってくる可能性があります。

手元に多く残せることは、親の施設費用、生活費、医療費に使用するための売却と考えたときには、大きなメリットになります。

実家の家族信託のため、私どもでは「実家信託」と呼んで、ご説明をしています。空き家の問題解決にもつながるため、ご相談が増えています。

二つ目のケースは、知的障がいのある子がいるケースです。両親が高齢になってきて、自分達が亡くなった後の障がいのある子の生活費など金銭的な不安があって相談に来られるケースがあります。

このときに大きな問題があります。それは障がいのある子に財産を残しても、その子がちゃんと使うことが難しいことです。多額のお金を残しても、もしかしたら誰かに騙されて取られてしまうかもしれません。

そのときに、障がいのある子のことで頼れる兄弟などがいる場合には、その頼れる兄弟などを受託者として家族信託を結んでおき、親が亡くなった場合には、障がいのある子が財産権を取得する後継ぎ遺贈型受益者連続信託としておきます。そうすることで親が亡くなった後も障がいのある子のために、残した財産を使っていく仕組みを作れます。

そして障がいのある子が寿命を迎え亡くなったら、その面倒を見てくれた兄弟に残った財産を渡す、またはお世話になった施設に寄付することもできます。

三つ目のケースは、子どもがいない夫婦で「自分が亡くなったときには、配偶者である妻の生活のために財産を相続させたい」、でも「妻が亡くなったときには、妻側の親族に行くのではなく、自分の甥などに財産を継がせたい」というケースです。

自分達には子どもがおらず、甥がいろいろと助けてくれていたという場合が考えられます。甥は妻の相続人ではありません。何も対策していなかったら、妻が亡くなったときには、妻の両親が既に亡くなっていた場合、妻の兄弟が相続人になってしまいます。

このときに、甥を受託者として後継ぎ遺贈型受益者連続信託を組むことで、いろいろと助けてくれていた甥に恩返しができる仕組みをつくることができます。そして、自分と妻の認知症対策にもなります。

但し、相続人でない甥が財産を継ぐと通常よりも高い相続税がかかることや、妻が借金をしている場合には借金だけ法定相続人である兄弟に行ってしまうことがあるので、注意が必要です。

後継ぎ遺贈型受益者連続信託により財産権を取得した場合には、みなし相続税の対象となり、取得した人物には相続税と同様の負担が発生します。

ただ、小規模宅地等の特例や相続税についての配偶者の税額軽減が利用できる場合には、たとえ後継ぎ遺贈型受益者連続信託により財産を取得しても同様に税務上のメリットを受けることができます。

司法書士への相続相談お考え方へ

  • 初回
    無料相談
  • 相続が得意な
    司法書士
  • エリアで
    探せる

全国47都道府県対応

相続の相談が出来る司法書士を探す

後継ぎ遺贈型受益者連続信託は、渡したい人に渡せる方法として2代目以降も道筋を決められるので、様々な希望が叶えられるようになりました。一方で相談を受けたときに、私が注意していることは受託者の死亡リスク・認知症リスクです。後継ぎ遺贈型受益者連続信託は数十年続く可能性も考えられます。そのときに、受託者が個人だった場合には、当然受託者も年を重ねて老いていきます。死亡リスク・認知症リスクも大きくなります。受託者の死亡や認知症悪化により、信託契約に大きなダメージをうけることもあります。

そのため、後継ぎ遺贈型受益者連続信託で長期的に続くことが予想されるときには、受託者を法人にすることを提案しています。法人には死亡リスク・認知症リスクがないためです。説明を聞いて、受託者となる法人を新たに設立したご家族もいます。

将来に状況が変わっても対応できるような仕組みが、この後継ぎ遺贈型受益者連続信託では特に必要になると考えています。

(記事は2020年6月1日現在の情報に基づきます)

「相続会議」の司法書士検索サービス