目次

  1. 1. 贈与税の時効は6年、悪質なら7年
    1. 1-1. 贈与税時効の起算日
  2. 2. 贈与税の時効が成立しないケース
    1. 2-1. 名義預金のように贈与と認められない場合
    2. 2-2. 10年前や15年前の贈与なら時効は成立する? 
    3. 2-3. 贈与が成立していた証拠さえ残しておけば、時効は成立する?
  3. 3. 贈与税の申告漏れは、数年後の相続税調査の過程でばれる
  4. 4. 贈与税の申告漏れに対する4つの罰則
    1. 4-1. 無申告加算税
    2. 4-2. 過少申告加算税
    3. 4-3. 重加算税
    4. 4-4. 延滞税
  5. 5. まとめ 贈与時には税理士に相談を

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年に110万円を超える贈与を受けたとき、贈与税の申告が必要になりますが、6年もしくは7年が過ぎると時効になります。時効を過ぎると、国税局や税務署は課税処分を行えません。

なお、贈与税の時効は「原則6年」で、贈与があったことを隠して時効になるのを待っていたなど「偽りその他不正の行為」があった場合は「7年」となります。

時効の起算日は、贈与を受けた日ではなく、贈与税の申告期限の翌日です。申告期限は贈与を受けた翌年3月15日ですから、その翌日である3月16日が起算日となります。例えば、2023年に贈与を受けた場合、時効の起算日は、2024年3月16日です。

では、贈与税の時効である最長7年が経過しさえすれば、放っておいてもまったく問題ないのでしょうか? 実はそんなことはありません。

本人が贈与と思っていても、税務署に贈与と認められず、「相続税の申告漏れ」と判断されることがあります。たとえば親から子に100万円を贈与をしたつもりでも、そもそも「贈与はなかった」とみなされてしまったら、その100万円は親の財産と判断されてしまうためです。

ここで、贈与について規定する民法549条の条文を見てみましょう。

「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」

この条文を見てわかるように、贈与が有効に成立するには「贈与する人の意思表示」と「贈与を受ける人の受諾」が必要になります。したがって、名義預金は贈与とはみなされません。名義預金とは、「親が勝手に家族名義の預金口座を作って管理していた」というように、口座の名義人と実際にその預金を管理していた人が違う預金のことです。また、「子が入院中の親の財産を勝手に引き出していた」といった場合も、贈与として認められません。

こうなると、そもそも贈与はなかったとされるため、時効は適用されません。たとえ子の名義の預金でも、親が支出・管理していて子がその存在を知らなかったのであれば、「実質的に親の財産である」と判断され、相続税の課税財産になってしまうのです。

名義預金のほかにも、贈与契約書がなく贈与があったことを証明できなかったり、認知症などで贈与者の判断能力が乏しかったりした場合も、贈与があったとは認められない可能性があります。

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確かに、贈与があったことを隠して時効になるのを待っていた場合の時効は「7年」です。しかし、10年、15年前の贈与であっても、贈与の証拠がない場合、税務署から贈与とみなされず、相続税の対象とされる可能性があります。

たとえば、父親が長男に500万円を贈与したにもかかわらず長男が申告を行わず、15年後に父親が亡くなったケースを考えてみましょう。時効の7年を大幅に過ぎているので「時効が成立する」と考えるかもしれません。

しかし、税務署は次のようなロジックで時効の成立を防ぐことができます。

「贈与契約書も作成せず、贈与税の申告もしなかったということは、この500万円は贈与ではなく、長男が父親からお金を預かっていただけですよね。そうであるなら、父親の遺産になるので、相続税の対象となります」

贈与契約は口頭の合意で成立するものの、税務署は贈与税の時効を簡単には認めてくれません。

では、贈与の客観的な証拠として贈与契約書を作成していれば、時効は成立するのでしょうか。これも脱税目的である場合、時効が成立するとは限りません。やはり、実際に契約書に書かれたとおりの贈与の合意があったかどうかが問われるのです。

実際に過去の裁判(平成5年名古屋地裁)で、時効が認められなかったケースがあります。不動産の贈与を受けた被告は贈与契約書を公正証書で作成する一方で、贈与の事実を隠すために不動産の名義変更を放置し、時効である7年経過後に名義変更を行いました。「贈与の客観的な証拠もあり、時効も過ぎた」状況です。しかし、このことを知った税務署が裁判に訴え、被告は敗訴。公正証書の贈与契約書は無効となりました。

贈与税の申告漏れが、贈与者が亡くなった後の相続税の税務調査で発覚するケースが少なくありません。相続税の調査では、亡くなった人の残した財産を調べるだけでなく、相続人の財産も調べます。亡くなった人の財産が相続人に流れていた場合、それが相続によるものなのか、贈与によるものなのかを税務職員が確認するため、隠し通すことは難しいでしょう。

令和3年度の贈与税調査の情報(統計年報)を見ると、令和3年中に行われた贈与について、18人が過少申告加算税を、2585人が無申告加算税を課されています(加算税の説明は後述)。「申告誤り」よりも、「無申告」に対する処分のほうが圧倒的に多くなっています。

同統計年報には、過年分(令和2年以前)の贈与について、令和3年度に行われた課税処分の件数も示されています。421人が過少申告加算税、1万2541人が無申告加算税、17人が重加算税を課されています。これらの数値を見ると、令和3年中に行われた贈与に対する処分件数と比べて、過年分の贈与に対する処分件数のほうが多いことがわかります。つまり、贈与税の申告漏れは、数年後に行われる相続税調査の過程で明らかになるケースが多くなっています。

贈与税のルールは相続税法の中で規定されており、「贈与税は相続税の補完税」と言われることもあります。相続税調査を行う税務職員は、「生前贈与の検証は相続税調査において不可欠」という意識をもっています。死亡日から何年も遡って財産の移動状況を調べることも珍しくなく、こうして相続税だけでなく贈与税の申告漏れも明らかになるのです。

また、無償または著しく低い対価で不動産の名義変更をした場合も、贈与税の申告漏れがばれやすいです。税務署は、こうした名義変更の情報を登記情報から把握しているため、贈与税の申告を怠ると申告漏れを指摘されるおそれがあります。また不動産を新規で購入した場合にも、その資金をどこから調達したのか税務署からお尋ねが来ることがあります。収入が少ないにもかかわらず一括購入をしていた場合などは、税務署も「贈与を受けたのでは?」と不審に思い調査が入りやすくなります。

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贈与税を本来の申告期限までに正しく申告をしていなかった場合の罰則には、次の4つの種類があります。

無申告課税は、申告期限までに申告を忘れていた場合に課せられます。自主的に申告した場合、本来の税額に5%をかけた分の金額を無申告加算税として納めることになります。税務署の指摘後の場合は50万円までは10%、50万円を超える部分には15%の税率が課せられます。自主的に期限後申告を行った場合は税率が5%に下がります。

過少申告課税は、申告したものの、その額が不足していた場合に課されます。税率は10〜15%ですが、自主的に修正申告を行った場合は免除されます。

重加算税は、意図的に申告しなかった場合に課されます。税率は、過少申告に対するものは35%、無申告に対するものは40%です。

通常、正しい申告ができていなければ、納税もできていないことになります。納税の遅れに対しては、加算税とは別に「延滞税」が課されるため、さらなる税負担が生じます。延滞税は納税が遅れるほど増えていきます。

贈与を受けても贈与税の申告をせず、時効である7年が過ぎるのを待ったとしても、贈与税の支払いを免れるとは限りません。無申告が発覚すれば、厳しいペナルティが課せられるだけでなく、社会的な信用を失う恐れもあります。そもそも時効を使って贈与税を免れることは、明らかな脱税行為ですので絶対にやめましょう。

あらぬ疑いをかけられないためにも、贈与時には贈与契約を交わすなどして当事者の合意の証拠を残し、贈与税の申告を正しく行いましょう。転ばぬ先の杖として、税理士に相談するのも有効な手立てです。

(記事は2023年6月1日時点の情報に基づいています)

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