相続税の障害者控除とは 活用する条件やポイントを解説

「相続税の障害者控除」という制度をご存じでしょうか。相続人が障害者である場合には、相続税が減額されるという制度です。今回は、この障害者控除に関して適用要件、控除額の計算方法などを解説します。
「相続税の障害者控除」という制度をご存じでしょうか。相続人が障害者である場合には、相続税が減額されるという制度です。今回は、この障害者控除に関して適用要件、控除額の計算方法などを解説します。
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相続税の障害者控除とは、相続人に障害がある場合、相続税が減額される制度です。相続税の税負担が、障害者の生活資金にまで影響をおよぼさないようにするのが目的です。
この障害者控除を適用するためには以下の3つの要件を満たさなければなりません。
相続財産を相続する時点で、日本国内に住所がある必要があります。住所が海外にある場合は適用対象外です。
ただし、日本国内に住所がなくとも次の2点にあてはまる場合は、適用対象となります。
・日本国籍を有している
・被相続人または相続人の何れかが、相続開始前5年以内に日本国内に住所を有している
障害には、さまざまなものがあります。障害のある全ての人が相続税の控除の対象になるわけではなく、適用対象となるための要件を満たさなければなりません。
また相続税における障害は、「一般障害者」と「特別障害者」の2種類があり、特別障害者の方が障害の程度も重く、控除額も大きく設けられています。
一般障害者・特別障害者の要件は以下のとおりとなります。
一般障害者
・身体障害者手帳上における障害等級が3級~6級
・精神障害者保健福祉手帳上における障害等級が2級または3級
特別障害者
・身体障害者手帳上における障害等級が1級または2級
・精神障害者保健福祉手帳上における障害等級が1級
障害者控除を受けるためには「法定相続人」でなければなりません。
つまり、遺言で「友人に遺産を譲渡する」という文言があった場合、友人が障害者であっても、この友人は法定相続人ではないため、障害者控除を受けることはできません。
障害者である相続人が相続財産を取得しなければなりません。
相続財産を取得しなければ、その人には相続税は発生しないので、障害者控除の適用もありません。しかし、相続人に障害者がいる場合、その障害者は少額でも相続財産を取得することで相続税を抑えることができます。
なぜなら、障害者である相続人の相続税から障害者控除分を控除した後、控除しきれなかった不足分がある場合は、その者の扶養義務者の相続税からその不足分を控除することができるからです。
たとえ、障害者である相続人に相続税額が発生しない場合であっても、扶養義務者の相続税から障害者控除額を控除することができるので、要件を確認して必ず適用するようにしてください。
障害者控除で控除できる金額は、満85歳になるまでの年数1年につき一般障害者は10万円、特別障害者は20万円として計算されます。計算式で表すと次のようになります。
障害者控除の額=(85歳-相続開始日の障害者の年齢)×10万円(特別障害者は20万円)
※「相続開始日の障害者の年齢」に1年未満の端数月があるときは切り下げとなります。
例えば、30歳10カ月の一般障害者が相続人である場合、10カ月は切り捨てとなり、控除額は以下の通りです。
障害者控除額=(85歳-30歳)×10万円=550万円
上記の例では、障害者である相続人の相続税から550万円を控除することができます。この場合、計算された障害者本人の相続税が400万円であった場合、150万円分が使いきれなかったことになります。
この150万円については、この人の扶養義務者の相続税から控除することができます。
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相続の相談が出来る税理士を探す障害者控除を利用するためには、相続税申告書の第6表「障害者控除額の計算書」の添付が必要となり、この計算書で、上記の障害者控除額の計算を行います。加えて、障害者手帳のコピーか、該当する障害者であることを証明できる書類の提出が必要となります。
今回は相続税の障害者控除について、その適用要件や控除額、注意点などを網羅的に解説しました。
障害者控除の控除額自体は大きな金額になります。また、使いきれなかった分は、他の相続人から控除することができますので、大きな節税効果が期待できます。
しっかり要件を確認し相続税を申告する際には適用を忘れずに行ってください。
(記事は2020年4月1日時点の情報に基づいています)