農地法で売買が制限されている

農家の高齢化が深刻になっています。農林水産省の統計によると、平成31年の農業就業人口は168万1千人で、平成22年と比較すると、9年間で92万5千人減少しています。
平均年齢は66.8歳だといい、仮に一般企業に勤めていれば、多くが定年退職している世代によって、日本の農業は支えられています。

私の住む青森県八戸市近隣でも、就農人口の減少に伴い、休耕地や荒れた耕作放棄地が増える一方です。
「農業をしていた父が死亡し、後継者がいない」
「農地を相続したが、首都圏で働いており管理できない」
これらは農地に関する相談の典型例です。農地を処分したいという趣旨の相談も増えています。

ここで問題となるのが、農地の保護や権利に関する事項を定めた「農地法」です。
農地法の目的は第一条に記載してあり、次のとおりとなっています。

第一条 この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もって国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。

要約すると、農業従事者の地位保護と農業生産力の向上などが主な目的とされています。
そのため、宅地と異なり、農地は売買などの権利移転に制限が課されます。

「田畑」も含む実家の売却の話が白紙に

以前、60代の女性から「使用しなくなった母の生家を売却するので登記を依頼したい」という相談がありました。
守秘義務が課されているため、実際の事例を大幅に改変し、脚色しています。

聞くと、生家は八戸市近隣の農村にあり、築100年ほどの古民家で、売却先も見つかっているといいます。

母が亡くなった10年前から、週末に滞在して野菜を作ったり、家の手入れをしたりしてきましたが、自身も高齢になったため農作業の負担が大きくなりました。
処分する旨を知人に話したところ、運よく古民家暮らしに憧れていたという人が見つかったので、手続きを進めてほしいとのことでした。

女性の夫はすでに死亡し、3人の息子たちはみな首都圏で仕事をしています。
八戸近隣に所在する財産をすべて処分し、そう遠くない将来に、東京に住む長男のもとに身を寄せる予定だそうです。

さっそく登記状況を確認してみると、所有者はすべて女性の母名義のままでした。
売却前に相続登記が必要です。

地目を確認すると、売却予定の土地に「畑」と「田」が含まれていました。農地が含まれている場合は、売買等に制限があることは先に書いたとおりです。
結果として、残念ながら本事例では売買取引が白紙に戻ってしまいました。

次回は、農地法による権利移転の制約などについて解説します。

(記事は2020年3月1日時点の情報に基づいています)