目次

  1. 1. 不可能に思えることを「できる」と言って法外な金額を要求
  2. 2. 信頼できる企業を判断するための3カ条
    1. 2-1. 嘘をついていないか
    2. 2-2. 実績はどれくらいあるのか
    3. 2-3. 法的な質問に答えられるか

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最近はデジタル遺品問題を手助けしてくれるサービスも増えています。しかし、新興の業界は往々にして玉石混淆。デジタル遺品に詳しい記者の古田雄介さんが、40代の男性から受けた相談について解説します。

「急死した家族のiPhoneを受け取ったのですが、すでに初期化されていました。そこから元通りにできるという業者を知人に紹介してもらったのですが、相談したら前金として30万円が必要とのこと。持ち合わせがなく、また、少し怪しい感じもしたので、それから連絡をとっていません。セカンドオピニオンを得たいので、他に対応してくれるところがあれば紹介してください」

この業者の対応を、皆さんはどう感じますか? 他にも似たような話はちょくちょく耳にするので、今回はこの相談にお答えしたいと思います。

連載の第1回でも触れましたが、iPhoneはロック解除を10回連続でミスすると中身を工場出荷時の状態に戻す(初期化)設定が選べます。質問された方のご家族が残したiPhoneは、まさにこの状態になっていると推察されますが、そうなると元通りにすることはどんな専門会社も不可能です。

また、デジタル遺品をサポートする会社には初期診断費用がかかるところもありますが、せいぜい数万円です。2017年からデジタル遺品サポートを提供しているデジタルデータソリューションは初期診断が無料で、成功報酬の平均額が約23万円。それを考えると、前金として30万円というのは法外と言わざるをえません。デジタルデータソリューションにしても、100%の成功保証はしていません。初期化されたスマホでなくても、ロック解除は簡単にはいかないものなのです。

もしかしたら空っぽのスマホを元通りにするような、世の中にまだ知られていない技術を持っているのかもしれません。しかし、業者からは詳しい説明がされておらず、総合的に判断すると信頼に足るものがあるとは思えませんでした。

男性に対して、私は上記の情報を伝え、その業者とは連絡を取らないことをお勧めしました。

信頼できるデジタル遺品サービスを見つけるにはどうしたらいいでしょうか? 頼れる業界団体もまだありませんし、分かりやすい物差しも出てきませんが、私は下記のようなポイントを意識して判断するのが良いと思います。

「故人のFXが1000万円の負債になった」や「スマホのロックは(絶対)開けられる」「デジタル機器を焼却したら情報漏洩が防げる」というようなことを言う業者であれば、警戒したほうがいいでしょう。そうした事実はいまのところ確認されていません。「え?」と思うような事例が書かれていた場合、業者がその情報源も明示しているか探すようにしましょう。

デジタル遺品サポートの相談や対応件数だけでなく、データ復旧や修理サポートなどの周辺業務も含めて実績を見るのがよいと思います。ホームページや口頭の説明では実績がわからなかったり、抽象的な情報しか提示されない場合は要警戒です。

デジタル遺品関連のサービスを提供するなら、相続関連の法的な知識は欠かせません。依頼するまでに、該当のデジタル機器の所有権の状態を確認しない業者は気をつけたほうがいいでしょう(遺産分割協議を経ていない段階では、故人のデジタル機器は法定相続人全員の共有財産となっていることが多いので、確認しないまま進めるのは高いリスクを伴います)。

 悪貨に良貨を駆逐させないためには、依頼する側が良貨を見つけることが効果的なのは間違いありません。世のため自分のため故人のためにも、信頼できるパートナーを探しましょう。

(記事は2020年3月1日時点の情報に基づいています)

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