自分の死後、SNSはどうなる? 事前に追悼アカウントや抹消予約の指定ができる
普段何気なく使っているスマホやPCは、もしパスワードやIDを家族と共有していないと、あなたが亡くなった途端にアクセスできなくなります。それは写真や動画といった思い出のほか預金口座や連絡先のシャットアウトにもつながりかねません。 デジタル終活を長年取材してきた専門ライターの古田雄介さんが、デジタル化が一層進む現代の終活や相続の問題点を読み解きます。
普段何気なく使っているスマホやPCは、もしパスワードやIDを家族と共有していないと、あなたが亡くなった途端にアクセスできなくなります。それは写真や動画といった思い出のほか預金口座や連絡先のシャットアウトにもつながりかねません。 デジタル終活を長年取材してきた専門ライターの古田雄介さんが、デジタル化が一層進む現代の終活や相続の問題点を読み解きます。
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インターネット上にあるもっとも細かい個人情報はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にあるという人は多いでしょう。顔写真や来歴、いつどこで誰と会ったか、何を感じて何を思ったかなど、使っているうちにさまざまなかたちで人となりが蓄積されていきます。ある意味で、免許証やマイナンバーカードよりも「自分」を証明するものになっているかもしれません。
それゆえに、自分に何かあったときにSNSページの行く末を案じる人が多いようです。編集部経由で次のような質問をいただきました。
質問:「自分が死んだらSNSのアカウントを全部消したいです。どうやってやればいいですか?」
残念ながら、どのSNSにも通用する決定的な対策というものは存在しません。利用者が亡くなった後のルールはSNSの運営元が各自で作っているので、利用しているSNSのルールを押さえてできる限り備えるしかないでしょう。
もっとも整備が充実しているのがFacebookです。Facebookは亡くなった利用者のページを保護する「追悼アカウント」という機能を備えています。故人の友人や家族が所定のページから運営元にリクエストし、運営元がリクエストが本物かどうか等を判断したうえで切り替えてくれます。
本人が事前に「追悼アカウント管理人」を指定しておけば、公開された投稿の管理などを託すこともできますが、それでも私信であるダイレクトメッセージが覗かれることはありません。「ページは残っても、最低限のプライバシーが保たれればいい」ということでしたら、この機能を使ってもらうように周囲に伝えておくのが効果的でしょう。
ページ自体を抹消したい場合は、設定メニューから「追悼アカウント管理人」を指定するページに進み、「死後のアカウントを削除」の意思表示をします。追悼アカウントが申請されて運営側が確認した段階でページを抹消してくれます。
ですから、今回の質問がFacebookのアカウントを指すのであれば、答えはこうです。
A:事前に「死後にアカウントを抹消する」にチェックを入れておきましょう。そのうえで、友人や家族には自分の死を運営元に伝えるようにお願いしておくのも忘れずに。
ほかのSNSを見てみると、同名企業が運営するビジネス向けSNSの「LinkedIn」(リンクトイン)にも、周囲からの訃報を受けてページを削除する仕組みが実装されています。Twitterも同様の申請ページがあります。
InstagramもFacebookが運営していることもあり、追悼アカウントを申請するページが作られています。ただしこちらは、追悼アカウント管理人の指定やページの抹消表明の保存はできません。
こうした死後対応機能を実装するSNSは少しずつ増えています。
しかし、ここで注意したいのは、自らの死と連動してオートマチックに処理がなされるわけではないということです。友人や家族、それに運営元という協力者のアクションがあってはじめて成立する処理です。
周囲の人たちが、あえて運営元に死を伝えなかったり、情報不足で運営元が本当に亡くなったかを確かめられなかったりすると、意図したとおりにはならずに現状維持=放置ということになるでしょう。
このため、身近な家族に「僕が死んだら僕のパソコンでSNSにログインして、僕の代わりにアカウントを抹消してくれ」と頼む人もいます(なりすましと捉えられかねない方法なので推奨はできませんが……)。
また、SNSのアカウント抹消などのオプションがついた死後事務委任契約を結ぶという手もあります。まだ応じてくれるケースが少なく、それなりに費用がかかるなどのハードルはありますが、確実を期すなら効果的かもしれません。
いずれにしろ、最終的に事をなすのは残された人たちになります。いかに自分の意思通りに動いてもらえるかというところは、相続対策全般に共通していそうです。
前回のコラムでは「デジタル遺品を扱う悪徳業者を見抜く 三つのポイントを解説」を書いています。今後もこの「デジタル遺品」連載をお楽しみに!
(記事は2020年3月1日時点の情報に基づいています)