目次

  1. 1. 私文書での契約書作成はリスクが! 
  2. 2. 「無効」を訴える親族とトラブルになることも
  3. 3. 信託契約を公正証書で作ることの意義は大きい

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前回のコラム「家族信託を使うのはいつから?『認知症になってから』では遅い理由」では、家族信託の契約は親が元気なうちに、早い時期に発動するようにしましょうと書きました。今回は信託契約書をどの文書形式で作るべきなのかを解説します。

信託は、10年単位の長い期間で財産を管理します。設計によっては何世代にもわたって資産の承継先を定める「数次相続における遺言の機能」を持っています。
そんな重要な信託契約書を私文書で作る場合、万一契約書の原本を紛失してしまうと、信託契約に基づく資産承継の実現ができなくなるという非常に大きなリスクを負うことになります。

また別の観点から見ると、家族・親族の世代を超えて財産管理・資産承継への拘束力を持つため、それを快く思わない利害関係人(法定相続人やその配偶者等)がいた場合、信託契約の有効性そのものを争う事態(契約の無効を主張される事態)が起きかねません。

たとえば、委託者となる親と受託者となる子の契約当事者双方が署名押印した契約書が残っていても、委託者本人が理解納得して署名・押印したのではなく、本人が知らないところで子が勝手に代筆と実印の押印をしたのではないか、という疑いをもたれる可能性があります。また、信託契約の締結日が実際に調印した日付よりももっと過去の日付となっている(親の理解力がしっかりしていた頃の日付にさかのぼっている)のではないか、そもそも信託契約日の時点で委託者となる老親の理解力(判断能力)はなかったのではないか、といったトラブルも想定されます。

以上を踏まえて、もめごとの可能性を未然に防ぐという観点からすると、信託契約書を公正証書で作ることの意義は非常に大きいといえます。公正証書は、「原本」が公証役場に長期間保管されるので、契約当事者に交付される「正本」を紛失しても再発行ができます。また、公正証書作成にあたっては、公証人が契約当事者の面前で契約内容について理解・納得できているか、公正証書の作成意思があるかをきちんと確認するため、後日利害関係人が信託契約の法的効力を否定することはかなり困難になります(法的に有効であることがより確実になります)。
下記に信託契約書を公正証書で作成する場合と私文書で作成する場合のメリット・デメリットを表にまとめましたので、ご参照下さい。

(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)

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