目次

  1. 1. 遺産分割をやり直す必要はない
  2. 2. 遺産分割をやり直すべきなのは
    1. 2-1. 新たに見つかった遺産が遺産分割に影響する場合
    2. 2-2. 相続人が遺産を隠していた場合
  3. 3. 遺産分割後に新たな負債が出てきた場合
  4. 4. トラブルを避けるための工夫
    1. 4-1. しっかり財産調査をする
    2. 4-2. 新たに遺産が出てきたときの対処法について合意しておく
  5. 5. まとめ 財産調査をしっかりする

遺産分割協議や調停が終わった後、相続人たちが誰も気づいていなかった新たな遺産が出てきても、基本的に遺産分割をやり直す必要はありません。新たな遺産と以前から判明していた遺産が別個のもので関連性がなければ、以前の遺産分割に影響はなく無効にする必要性がないからです。

新たな遺産について相続人たちがあらためて話し合い、新たな遺産の分割方法のみを決めれば良いことになります。

ただ、新たな遺産の分け方について合意できなければその遺産を巡ってトラブルになる可能性はあります。

やっとのことでまとめ上げた遺産分割協議がトラブルで振り出しに・・・・。あらためてやり直すのには労力と時間がさらにかかります。トラブルになったら弁護士に相談するのが解決への近道になることがあります。困ったら、相談してみてください。

遺産分割後に新たな遺産が発見されたとき、遺産分割協議そのものをやり直さねばならないケースもあります。以下のような場合です。

新たに発見された遺産の価値が高く「もしもその遺産の存在が始めから判明していたら、相続人は以前にしたような方法で遺産分割をしなかった」といえる場合には、相続人が錯誤無効を主張して遺産分割の効果を失わせることができます。すると、あらたな遺産を含めて全部の遺産について再度遺産分割のやり直しが必要です。

裁判例でも、遺産分割協議の際に判明していた遺産と新たに発見された遺産の区別が不明瞭な場合や両者を別々に処理することについて当事者が充分合意できていなかった場合、遺産分割協議を無効と判断したものがあります(判例:高松高決昭和48年11月7日)。

特定の相続人が遺産を隠していたために当初の遺産分割協議の際に対象から外された場合にも遺産分割協議が無効になる可能性があります。このような場合、他の相続人は「詐欺取消」を主張することも考えられますし錯誤無効も主張できます。

いずれにせよ他の相続人が納得しなければ遺産分割は無効になり、全部についてやり直しが必要となります。

遺産分割後、新たに負債が発見されたときには、その負債は法定相続分に応じて相続人に相続されます。相続開始後3か月経過前であれば、負債の相続を希望しない人は「相続放棄」することによって相続を免れることができます。

負債は遺産分割協議によって負担割合を決められるものではないので、負債が出てきたことによって遺産分割のやり直しにはなりません。

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遺産分割をするときには、後に新たな遺産が発見されてトラブルにならないように以下のように工夫をしましょう。

まずは漏れの無いようにしっかり財産調査を行いましょう。財産調査が不十分で後から遺産が出てきたら「誰が取得するか」という問題が発生してしまうからです。

不動産、預貯金、株式、現金その他の動産、さらには負債も含めて確実に調べます。自分たちだけで充分に調査ができなけらば、司法書士や弁護士などの力を借りると良いでしょう。

遺産分割協議をするとき「万一後から新たな遺産が出てきたらどのように対処するか」を決めておく方法も有効です。

たとえば「新たな遺産が出てきたら相続人〇〇が取得する」「新たな遺産が出てきたらその部分だけ速やかに再協議して分ける」「新たな遺産の価額が〇〇円以下であれば〇〇が取得する。〇〇円を超えていたら再協議する」などのルールを定めます。そうすれば、新たな遺産が出てきたときにもスムーズに対応できます。

なお上記のようなルールがあっても「誰かが遺産を隠していた場合」などには錯誤無効や詐欺取消で全体を無効にできます。

遺産相続の際にはしっかり財産調査を行って後々のトラブルを防ぎましょう。困ったときには弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら進めると安心です。今後の参考にしてみてください。

(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)

「遺産分割後、新たな相続人が出てきたら分割協議は無効か」はこちら