目次

  1. 1. 葬儀費用の負担者と支払い方法
    1. 1-1. 葬儀費用の内容
    2. 1-2. 葬儀費用の負担者は法律で決まっていない
    3. 1-3. 相続財産から支払えるが注意が必要
    4. 1-4. 葬儀費用の主な支払い方法
  2. 2. 相続税の課税価格から控除される葬儀費用
  3. 3. 相続放棄をしても葬儀代の支払い義務は残る
  4. 4. 葬儀費用に関してよくあるトラブル
    1. 4-1. 相続人の一部が過度に豪華な葬儀を行う
    2. 4-2. 長男や喪主だけが相続費用を多く支払った
    3. 4-3. 余った香典を誰が受け取るかで争いになる
  5. 5. 葬儀費用のトラブル防止の方法と弁護士に相談するメリット
    1. 5-1. 生前対策として故人が喪主や費用負担者、葬儀の規模などについて希望を残しておく
    2. 5-2. 葬儀費用や香典の領収書・明細をしっかり残す
    3. 5-3. 負担割合を家族間で話し合い、記録を残す
    4. 5-4. 弁護士に相談するメリット
  6. 6. 相続と葬儀費用に関するよくある質問
  7. 7. まとめ 葬儀費用の扱いは事前の確認と協議が大切

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葬儀費用は誰が負担するか、どこから支払うかが明確に決まっていないため、後々のトラブルになりやすいポイントです。基本的には喪主が立て替え、後から相続財産(遺産から払う)で清算されることが多いものの、支払い方法や分担のあり方には一定のルールや注意点があります。

葬儀にかかる費用は、一般的に以下のように分類されます。

  • 葬儀業者への支払い:式場使用料、棺、遺影、搬送
  • 僧侶や寺院へのお布施:読経料、戒名料、初七日法要
  • 会葬者への接待費:通夜ぶるまいや精進落としの食事、返礼品(香典返し)
  • 火葬に関する費用:火葬場使用料や市町村に支払う火葬許可関連手続き費用

これらを合わせると、地域や宗派、葬儀の規模によって数十万〜百万円以上かかることもあります。

誰が葬儀費用を負担するかについて、民法上は明確な定めがありません。通常は喪主が一時的に立て替え、後日相続財産から精算するのが一般的な流れです。

複数の相続人がいる場合は、実際に支払った人がその分を他の相続人に請求する(いわゆる「求償」という)かたちで調整することもあります。ただし、葬儀費用の負担割合をどうするかは、遺産分割協議での話し合いに委ねられており、トラブルの原因になることもあるため注意が必要です。

葬儀費用は、被相続人(亡くなった人)が遺した相続財産から支払ってよい費用とされています。たとえば相続人全員の同意があれば、故人の預貯金を解約して葬儀にあてることは基本的に認められます。

また、民法909条の2の規定により、相続人は全員の同意や家庭裁判所の手続きなしに、一定の範囲内で預貯金の一部を仮払いできる制度も利用できます。これは、葬儀費用など急ぎの支出に対応するための制度で、他の相続人の同意がなくても引き出しが可能です。

ただし注意点もあります。あまりに高額な葬儀費用や、香典返し以外の目的で使われた支出などは、「相続人としての支出ではない」とみなされるリスクがあります。結果として、相続放棄をしても支払い責任が生じる可能性もあるため、社会通念上の適正な範囲内で利用することが重要です。

葬儀費用の具体的な支払い方法には、以下のような選択肢があります。

【遺産分割協議による合意】
相続人同士で話し合い、喪主が立て替えた費用を誰がどのように負担するかを決めます。費用の領収書などをもとに協議を行い、トラブルを防ぐためにも記録に残しておくことが望まれます。

【預貯金の仮払い制度の利用】
前述のとおり、民法909条の2に基づいて、被相続人の預貯金の一定額を仮払いすることができます。金融機関や相続人の数などにより上限は異なります。

【死亡保険金からの支払い】
生命保険の受取人が明確に指定されている場合、保険金は相続財産ではなく「受取人の固有財産」として扱われます。そのため、喪主が受取人であれば、その保険金から葬儀費用を支払うことが可能です。

葬儀費用は、相続財産から支出することで一定の金額が相続税の課税対象から控除されます。つまり、条件を満たせば、その分だけ課税財産が減り、相続税の節税にもつながります。

ただし、すべての葬儀関連費用が控除の対象となるわけではなく、「相続税法上で認められる費用」と「認められない費用」の線引きがあります。ここでは、国税庁のガイドライン等をもとに、控除の対象となる費用とそうでない費用を整理してご紹介します。

【控除の対象となる葬儀費用】

以下のような費用は、相続税の課税価格から控除が認められる「葬式費用」として取り扱われます。

お通夜や告別式の費用
葬儀社への基本的な支払い(祭壇設営、霊柩車、式場利用、遺影などの準備費用を含む)

僧侶や寺院などへの支払い
お布施、戒名料、読経料、導師謝礼など

通夜や告別式に係る飲食費用
参列者に提供する料理や飲料などの接待費用

遺体や遺骨の搬送費
病院から自宅、葬儀場、火葬場への移送費用、または遺骨の移動費

火葬・埋葬・納骨に要する費用
火葬場の使用料、納骨時の手数料など

遺体の捜索や運搬にかかった費用
たとえば災害で亡くなった方の捜索費や、海外など遠方で亡くなった場合の搬送費など

その他社会通念上必要と認められる費用
死亡診断書の取得費や火葬許可申請に関わる費用など、葬儀に直結する合理的な支出

これらの費用は、相続税申告時に「債務控除」の一環として申告できます。実際に支払った金額を証明できる領収書や明細書を残しておくことが重要です。

【控除の対象とならない費用】

一方で、以下のような費用は「葬式費用」として控除されないとされています。

香典返しの費用
会葬者に返礼として渡すギフトやカタログなど

お墓の購入・借地料
墓石代、墓地の永代使用料、納骨堂の契約費など(これらは非課税財産として別の扱い)

初七日・四十九日・一周忌などの法要費用
葬儀後の法事にかかる僧侶謝礼や会食代は含まれない

このように、葬儀に直接関係のある費用は控除対象となる一方、儀礼的・贈答的な性質のある費用は対象外となる点に注意が必要です。

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相続放棄をすると、借金などの「相続債務」を引き継がなくて済みます。たとえば、亡くなった方が消費者金融から借りていたお金などは、放棄すれば返済義務を免れます。

しかし、葬儀費用は相続財産(故人が抱えていた支払い義務)に含まれるものではなく、本来は遺族が社会的・道義的な責任として支払うべき費用とされています。つまり、「父の相続を放棄したから葬儀費用も払わなくてよい」とはならないのです。

一方で、葬儀費用を支払ったとしても、相続放棄は可能です。たとえば喪主として葬儀を主宰し費用を立て替えても、それは「相続財産を使った」とは見なされません。支払いと放棄の関係を正しく理解しておくことが重要です。

【関連】相続放棄の手続きは自分でできる? 流れや必要書類、注意点まで解説

葬儀は急な対応が求められる一方で、費用の負担や分配をめぐって相続人間にトラブルが生じやすい場面でもあります。以下では、よくある3つのケースを紹介します。

喪主が主導して、他の相続人に相談せずに高額な葬儀を手配した場合、後日「こんなに費用をかけるとは聞いていない」「遺産から差し引くのは不公平」といった不満が噴出することがあります。葬儀費用が社会通念上の範囲を大きく超えると、相続税の控除対象にもならない可能性があります。

喪主や特定の家族が葬儀費用を全額または大半を立て替えたにもかかわらず、他の相続人が後から費用の一部も負担しようとしないケースもあります。「誰がいくら出すのか」を事前に明確にしておかないと、不平等感から争いにつながることがあります。

香典が多く集まり、実際の葬儀費用を上回った場合、その「余剰分」を誰が受け取るかで揉めるケースもあります。香典は法的には、会葬者から喪主に対する贈与と位置づけられており(最判昭和27年12月11日)、原則として喪主個人の財産と扱われます。

ただし、香典が「葬儀費用の補填を目的として受け取られた」ことが明確である場合には、その余剰分を相続財産に組み入れて清算の対象とする余地があると考えられています。トラブルを防ぐには、香典の使途や収支の記録を残し、他の相続人と情報共有をしておくことが大切です。

葬儀費用に関するトラブルは、金銭の問題に加えて家族間の感情的な対立に発展することもあります。相続発生後に揉めないためには、事前の備えと手続き上の工夫が重要です。

葬儀の規模や内容、費用負担の方法について、故人があらかじめ意思を明確にしておくと、遺族の負担や判断の迷いを大きく減らせます。たとえば、遺言書やエンディングノートに「誰に喪主をお願いしたいか」「どの程度の規模にしたいか」などを記しておくとよいでしょう。希望が共有されていれば、過度に豪華な葬儀や不公平な費用負担が避けられる可能性が高まります。

トラブルの多くは、「誰がいくら支払ったのか」「香典はいくら集まったのか」が曖昧なまま放置されることで発生します。葬儀に関する支出の領収書や、香典帳・香典返しの明細などをきちんと保管・整理しておくことで、後々の精算や説明の際に客観的な証拠として役立ちます。これにより、不透明な金銭の流れに対する不満や誤解を防ぐことができます。

葬儀費用の分担については、法律で明確なルールがあるわけではないため、話し合いによって取り決めることが基本です。家族間で「どの費用を誰がどの割合で負担するのか」をあらかじめ協議し、口約束ではなく文書にして残しておくことで、後のトラブルを回避しやすくなります。とくに、葬儀後に費用を清算する場合には、こうした事前の合意が重要になります。

「公平に費用を分担したい」「法的に正しい処理をしたい」と考える場合は、相続問題に詳しい弁護士に相談することが有効です。弁護士であれば、費用分担に関する法的助言だけでなく、相続人間の感情的対立の調整や、相続税申告における控除の扱いなど、幅広い観点から支援を受けることができます。中立的な立場で関与してもらうことで、家族関係を損なうことなく冷静に問題を整理できるのも大きな利点です。

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Q. 葬儀費用を他の相続人が払ってくれないときはどうすれば良い?

まずは他の相続人と費用負担について話し合いを行い、できれば書面などで合意内容を記録しておくとよいでしょう。葬儀費用は被相続人のために支出されたものであるため、合理的な範囲であれば相続人全員で分担するのが望ましいとされています。話し合いで解決しない場合には、家庭裁判所の調停や訴訟手続きを検討することもできます。

Q. 相続放棄すれば葬式費用は払わなくてよい?

相続放棄をしても、葬儀費用は例外的に支払義務が生じることがあります。なぜなら、葬儀費用は「相続債務」ではなく、社会的・道義的な義務として、遺族が負担すべき費用とされているためです。したがって、相続放棄を理由に一切支払わないという主張が必ずしも通るとは限りません。個別事情に応じた判断が必要です。

Q. 納骨費用やお布施、お墓の購入・建立に相続税はかかる?

墓地や墓石の購入費、永代供養料などは相続税の非課税財産として扱われます。一方、香典返しや法要費用(初七日・四十九日など)は原則として控除対象外です。

ただし、初七日法要が葬儀と一体で行われた場合は、控除が認められることもあります。判断が難しいケースもあるため、税理士など専門家に確認すると安心です。

Q. 葬儀費用の食事代には相続税の控除対象になる?

通夜や告別式において、会葬者への接待として出された飲食費は、常識的な範囲であれば葬儀費用として控除の対象になります。ただし、葬儀後の会食や法要にかかる飲食代は「葬儀費用」には含まれず、相続税の控除対象外とされるため、領収書の分類などには注意が必要です。

葬儀費用は、法律で明確な負担者が定められていないため、通常は喪主や遺族が立て替え、後から相続財産や遺産分割で精算する形が一般的です。相続税の計算上、一定額は控除されることもありますが、すべての費用が対象となるわけではありません。

また、葬儀費用は「相続債務」ではなく、喪主や親族としての身分上の義務と考えられており、相続放棄をしても支払い義務が免除されないとするのが通説です。そのため、費用負担をめぐってトラブルになるケースも少なくありません。

負担割合や支払い方法については、事前に家族で話し合い、領収書などの記録を残しておくことが重要です。判断に迷う場合は、早めに弁護士など専門家に相談することで、冷静かつ円滑な対応につなげることができます。

(記事は2026年1月1日時点の情報に基づいています)

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