目次

  1. 1. 根抵当権とは
  2. 2. 相続が発生すると根抵当権はどうなるのか
    1. 2-1. 根抵当権も相続の対象になる
    2. 2-2. 相続で根抵当権の元本が確定することがある
  3. 3. 根抵当権を相続したくない場合の対処法
    1. 3-1. 相続放棄する(不動産も借金も引き継がない)
    2. 3-2. 不動産は相続し、根抵当権だけ抹消する
  4. 4. 根抵当権付き不動産の相続に必要な手続きと注意点
    1. 4-1. 相続登記を行って不動産の名義を変更する
    2. 4-2. 根抵当権の変更登記(債権者・債務者変更)
    3. 4-3. 遺産分割協議書に根抵当権の扱いを明記する
    4. 4-4. 相続人が複数いると対応が複雑になることもある
  5. 5. 根抵当権を抹消する場合に必要な手続き
    1. 5-1. 債務の有無を金融機関に確認する
    2. 5-2. 抹消には債権者(金融機関)の同意が必要
    3. 5-3. 抹消登記を申請する(書類提出・登録免許税)
  6. 6. 根抵当権の元本はいつ確定する?
    1. 6-1. 相続後6カ月が経過すると自動的に元本が確定することがある
    2. 6-2. 相続人の希望により元本を早期に確定させることもできる
  7. 7. 根抵当権を放置したときに起こりうるリスク
    1. 7-1. 元本確定後は債権者の承諾がなければ抹消できない
    2. 7-2. 担保が残ったままでは不動産の活用・売却に支障が出る
  8. 8. 抵当権の相続に関連して、よくある質問
  9. 9. まとめ 根抵当権のある相続は早めの対応がカギ

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根抵当権とは、将来発生する不特定の債権を、一定の限度額(極度額)の範囲でまとめて担保するために設定される担保権です。主に事業用ローンや継続的な取引関係において利用されており、借り入れや返済を繰り返すたびに抵当権の設定や変更登記を行う必要がない点が特徴です。

通常の抵当権は、特定の借り入れ(元本)を担保するもので、返済が終われば役割を終えます。一方、根抵当権では、あらかじめ「極度額(限度額)」が定められ、その範囲内で発生した債務が担保されます。元本が確定するまでは、新たな借り入れがあれば担保の対象に含まれ、担保としての効力が継続します。

この「元本が確定していない状態」が根抵当権の大きな特徴であり、相続が発生した場合には、通常の抵当権とは異なる扱いや注意点が生じます。まずは、根抵当権がどのような仕組みの担保なのかを正しく理解しておくことが重要です。

被相続人が根抵当権を設定した不動産を所有していた場合、その不動産だけでなく、根抵当権に関する法律関係も相続の対象になります。ただし、通常の抵当権とは異なり、相続後の扱いには独特のルールがあります。特に「誰がどの立場を引き継ぐのか」「元本が確定するかどうか」は、相続後の対応を左右する重要なポイントです。

相続が発生すると、根抵当権が付いた不動産の所有権は相続され、根抵当権は原則としてそのまま付いた状態で引き継がれます。また、被相続人が根抵当権の設定者(不動産の所有者)であった場合はその地位を承継し、被相続人が債務者であった場合は債務も相続の対象になります。

相続放棄をしない限り、「不動産だけを相続して、根抵当権の関係は引き継がない」という扱いはできません。プラスの財産とマイナスの側面を一体として承継するのが相続の原則であり、根抵当権付き不動産も例外ではありません。

根抵当権の特徴は、元本が確定するまで、将来の借り入れも担保の対象になる点にあります。相続が発生しても、直ちに元本が確定するとは限りませんが、一定の条件を満たすと元本が確定します。

具体的には、相続開始後6カ月以内に、指定債務者についての合意を行い、その合意の登記をしないと、元本は相続開始時に確定したものとみなされます。元本が確定すると、それ以降に発生する新たな借り入れは担保されず、根抵当権は既存債務のみを担保する状態となります。

この点を理解せずに放置すると、後の抹消や処分に支障が出るおそれがあります。

根抵当権付き不動産を相続すると、借り入れの有無や将来のリスクが分かりにくく、不安を感じる人も少なくありません。相続人には、すべてを引き継ぐだけでなく、状況に応じて負担を避ける選択肢も用意されています。ここでは、根抵当権を相続したくない場合に考えられる代表的な対処法を整理します。

根抵当権は相続財産の一部と扱われるため、相続放棄をすれば、原則として根抵当権付き不動産やそれに伴う債務関係を引き継がずに済みます。相続放棄をする場合は、相続開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません

ただし、相続放棄をしたからといって、すべての関係が即座に切れるわけではありません。

相続放棄をした人でも、放棄の時点で相続財産を実際に管理・占有している場合には、民法940条にもとづき、他の相続人や相続財産清算人に引き渡すまでの間、財産を適切に保存する義務を負います。建物の管理や最低限の保全行為が求められる場合もあるため注意が必要です。

また、相続放棄は一度行うと撤回できません。根抵当権の内容や実際の債務状況によっては、放棄が最適とは限らないケースもあります。不動産登記や相続税との関係も含め、早い段階で専門家に相談することが重要です。

【関連】相続放棄のデメリットとは トラブルを防ぐための注意点、放棄の判断基準まで解説

相続放棄をせず、不動産自体は相続したうえで、根抵当権を整理するという選択肢もあります。すでに借り入れがなく、元本が確定している場合や、債務を完済できる見込みがある場合には、金融機関の同意を得て根抵当権を抹消することが可能です。

また、借り入れが残っている場合でも、借換えや返済条件の見直しによって、根抵当権を解消できるケースがあります。ただし、抹消や整理には債権者との協議が不可欠であり、状況によっては対応が複雑になります。相続後の活用や売却を見据え、専門家の助言を受けながら進めることが現実的です。

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根抵当権付き不動産を相続した場合、通常の不動産相続よりも手続きが多く、判断を誤ると後の抹消や売却に支障が出るおそれがあります。相続登記をはじめ、根抵当権の扱いをどうするかは、相続後の活用やリスク管理に直結します。ここでは、相続時に押さえておくべき基本的な手続きと注意点を整理します。

根抵当権付き不動産を相続した場合、最初に行うべき手続きが相続登記です。被相続人名義のままでは、根抵当権の抹消や売却、金融機関との正式な協議を進めることができません。

相続登記では、不動産の名義を相続人へ変更しますが、根抵当権そのものは自動的に消えるわけではなく、登記簿上も引き続き残ります。相続登記や、その後に行う根抵当権の変更・抹消登記には、登録免許税がかかるほか、司法書士へ依頼する場合は報酬も発生します。費用や手続きの流れを事前に把握しておくことが重要です。

【関連】相続登記の必要書類を一覧表で紹介! 有効期限や取得方法、綴じ方も解説

相続後も事業を継続するなどの理由で、根抵当権を引き続き利用するケースもあります。この場合、債務者や根抵当権設定者の地位が相続人に移るため、必要に応じて変更登記を行います。また、相続後も継続して新たな借り入れを行うなど、根抵当権を引き続き利用したい場合には、ケースに応じて民法398条の8に基づく関係者の合意と、その内容を反映した登記が必要となることがあります。

一方で、今後借り入れの予定がなく、担保として使わないのであれば、根抵当権を残しておくメリットは大きくありません。元本が確定したうえで抹消手続きを行えば、不動産の活用や処分がしやすくなり、将来のリスクも減らせます。どの選択が適切かは、債務の有無や相続後の方針によって異なるため、慎重な判断が必要です。

相続人が複数いる場合、根抵当権付き不動産を誰が取得するのかを遺産分割協議で明確にしておく必要があります。協議書には、不動産の取得者だけでなく、根抵当権の扱いについても具体的に記載することが重要です。

記載があいまいだと、登記手続きの段階で補正を求められたり、金融機関との協議が進まなかったりすることがあります。後のトラブルを避けるためにも、協議書の内容は慎重に整える必要があります。

根抵当権に関する手続きの多くは、相続人全員の合意を前提とします。遺産分割協議がまとまらなければ、相続登記や根抵当権の抹消・変更登記に進むことができません。

また、一部の相続人だけで金融機関と交渉することは難しく、意思の統一が取れないと手続きが長期化しがちです。相続人が多い場合ほど早めに方針を共有し、必要に応じて専門家の関与を検討することが重要です。

根抵当権付き不動産を相続したあと、担保を外して不動産を整理・活用したいと考える場合には、根抵当権の抹消手続きが必要になります。ただし、根抵当権は通常の抵当権と異なり、債務の有無や金融機関の関与が重要な判断要素となります。以下では、抹消に向けて押さえておきたい基本的な流れと注意点を整理します。

根抵当権が登記簿上に残っていても、実際に借り入れが存在しないケースは少なくありません。そのため、まずは金融機関に連絡し、現在の残債の有無や、元本が確定しているかどうかを確認する必要があります。

残債がある場合、その債務を相続人が引き継ぐのか、返済して整理するのかを判断しなければなりません。根抵当権は将来の借り入れも担保対象になる仕組みであるため、内容を正確に把握しないまま放置すると、後のトラブルにつながるおそれがあります。

根抵当権を抹消するためには、必ず債権者である金融機関の同意が必要です。金融機関が発行する解除証書や承諾書類がなければ、抹消登記はできません。

残債がある場合、原則として完済しなければ抹消に応じてもらえないことが多く、返済方法や時期について金融機関との協議が必要になります。借り入れがすでに終了していても、形式上の手続きが残っている場合があるため、自己判断せず確認することが重要です。

金融機関から必要な書類を受け取ったら、法務局で根抵当権抹消登記を申請します。申請時には、解除証書や登記識別情報など複数の書類をそろえる必要があります。

抹消登記には登録免許税がかかり、書類不備があると補正を求められることもあります。手続きに不安がある場合や相続関係が複雑な場合には、司法書士に依頼することで手続きを確実に進めやすくなります。

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根抵当権は、元本が確定するまで将来の借り入れも担保する仕組みですが、相続が発生すると、その状態がいつまでも続くわけではありません。一定の期間が経過したり、相続人の意思表示があったりすると、元本が確定します。元本確定のタイミングを誤解すると、その後の借り入れや抹消、売却に影響が出るため、正確な理解が重要です。

根抵当権者または債務者に相続が発生した場合、民法の規定により元本が確定することがあります。具体的には、相続開始後6カ月以内に、指定債務者についての合意を行い、その合意の登記をしないと、元本は相続開始時に確定したものとみなされます。

元本が確定すると、それ以降に新たに発生する借り入れは根抵当権の担保対象にはなりません。事業の継続や追加融資を予定している場合には、この6カ月という期間を意識せずに放置すると、想定外の不利益が生じるおそれがあります。

相続人の判断により、6カ月を待たずに元本を確定させることも可能です。事業を終了する予定がある場合や、不動産の売却・整理を進めたい場合には、早期に元本を確定させることで、根抵当権の扱いを明確にできます。

元本が確定すると、担保される債務の範囲が固定されるため、完済後の抹消手続きや不動産の処分が進めやすくなります。一方で、元本確定後は新たな借り入れには対応できなくなるため、相続後の方針を踏まえた慎重な判断が必要です。

根抵当権付き不動産を相続したあと、内容を十分に確認しないまま放置してしまうと、後になって大きな支障が生じることがあります。とくに、元本確定のタイミングを過ぎた場合や、金融機関との調整を先送りにした場合には、抹消や売却が難しくなることも少なくありません。相続後は、早い段階で根抵当権の状況を把握し、対応方針を整理しておくことが重要です。

根抵当権は、元本が確定するまでは将来の取引も含めて担保する仕組みですが、いったん元本が確定すると、担保される債務の範囲が固定されます。ただし、元本が確定しても根抵当権が自動的に消滅するわけではありません

元本確定後に債務を完済・整理した場合でも、根抵当権を消すためには抹消登記手続が必要となり、その際は原則として債権者である金融機関の承諾を得る必要があります。

相続後に何も手続きをせず、元本確定の時期を迎えてしまうと、相続人の判断だけで整理できなくなるケースもあります。金融機関との交渉や書類調整に時間を要し、手続きが煩雑化・長期化するおそれがある点は、放置による大きなリスクといえるでしょう。

登記簿上に根抵当権が残っている不動産は、第三者から見ると「担保付き」の状態にあります。そのため、売却を進めようとしても買い手が見つかりにくくなったり、新たな融資を受ける際の妨げになったりすることがあります。

とくに相続後の不動産整理や資産の有効活用を考えている場合、根抵当権の存在は大きな制約になります。不要な担保を残したままにせず、相続後できるだけ早い段階で、抹消や継続の判断を行うことが、将来のトラブル防止につながります。

Q. 抵当権のある不動産は売却できる?

抵当権や根抵当権が設定されている不動産でも、法律上は売却することが可能です。ただし、登記簿に担保権が残ったままの状態では、買主にとってリスクが高く見えるため、取引を敬遠されたり、売却価格が下がったりする傾向があります。

Q. 相続人が債務を引き継ぐ義務はある?

相続人は、相続を単純承認した場合、被相続人の財産だけでなく、借金などの債務も原則として引き継ぐことになります。抵当権や根抵当権が付いた不動産の場合、担保の裏にある債務の存在を正確に把握することが重要です。

一方、相続放棄をすれば、最初から相続人でなかったものと扱われ、債務を引き継ぐ必要はありません。また、限定承認を選択すれば、相続で得た財産の範囲内でのみ債務を負担する形にできます。いずれも期限や手続きが厳格に定められているため、早めの判断が求められます。

Q. 抹消登記をしないとどうなる?

抵当権や根抵当権を抹消しないままにしておくと、登記簿上は担保付き不動産の状態が続きます。その結果、不動産の売却や有効活用、新たな担保提供が難しくなることがあります。

また、時間が経過すると、金融機関の統廃合や担当者の変更などにより、必要書類の取得や調整に手間がかかるケースもあります。不要な担保であれば、相続後できるだけ早い段階で抹消手続きを検討することが望ましいといえます。

Q. 元本確定後の根抵当権の扱いは?

根抵当権は、元本が確定すると、それまで担保していた取引関係が固定され、それ以後の新たな借り入れは担保の対象になりません。この点で、性質は通常の抵当権に近いものになります。ただし、元本が確定したからといって自動的に消えるわけではなく、抹消するには債権者の関与を含む所定の手続きが必要です。元本確定後の扱いを誤解すると、相続後の整理や売却に支障が出るため、注意が必要です。

根抵当権付きの不動産は、相続が起きても根抵当権だけが自動で消えることはありません。原則として不動産と一緒に引き継がれ、被相続人が借り入れの債務者だった場合は、その借金も相続の対象になります。「家だけ相続して、根抵当権は関係ない」という扱いはできない点に注意しましょう。

相続後は、6カ月以内に手続きをしないと元本が確定し、その後は抹消や売却の際に金融機関の同意が必要になるなど、動きづらくなることがあります。負担を避けたいなら相続放棄という選択肢もありますし、引き継ぐ場合でも、残債の有無や抹消の可否を早めに確認し、金融機関や専門家に相談しながら進めることが大切です。

(記事は2026年1月1日時点の情報に基づいています)

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