目次

  1. 1. 笑う相続人とは
    1. 1-1. 被相続人にとって予想外に相続の利益を得ることになった人物
    2. 1-2. 笑う相続人は違法ではない
    3. 1-3. 笑う相続人はトラブルのもと
    4. 1-4. 相続人の範囲と相続順位
  2. 2. 笑う相続人の典型例
    1. 2-1. 事例①被相続人と疎遠だった元配偶者との間の子が相続
    2. 2-2. 事例②被相続人と疎遠だった甥姪が相続
    3. 2-3. 事例③法定相続人ではない特別縁故者が財産を取得
  3. 3. 笑う相続人を発生させない方法
    1. 3-1. (公正証書)遺言を作成する
    2. 3-2. 廃除の制度を利用する
    3. 3-3. 生前贈与する
  4. 4. 笑う相続人を防ぐために専門家に相談すべきタイミングとメリット
    1. 4-1. 再婚や養子縁組などで相続人関係が複雑なとき
    2. 4-2. 関係が希薄だったり、悪化している親族がいるとき
    3. 4-3. 相続人がいないか不明確だったり、血縁関係にない特別な関係にある人物がいるとき
    4. 4-4. 法定相続人ではない第三者に財産を受け継がせたいとき
  5. 5. 笑う相続人に関連して、よくある質問
  6. 6. まとめ 予期せぬ相続を防ぐには、備えと相談がカギ

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「笑う相続人」とは、被相続人の死後、本人にとっては予想外の人物が相続人となり、財産を取得するようなケースで使われる言葉です。法律用語ではなく、相続の実務や解説記事などで使われる通称・俗称にあたります。

特に、被相続人と生前ほとんど関わりがなかった人が、法律の定めに従って財産を取得するような場面で、「思わぬ人物が得をした」というニュアンスを込めて使われることがあります。

典型的な「笑う相続人」の例としては、被相続人と長年連絡を取っていなかった親族や、疎遠になっていた兄弟姉妹、あるいは生前ほとんど交流がなかった子どもなどがあげられます。

たとえば、被相続人に身近な家族がいない場合、民法の規定に従って「兄弟姉妹」や「甥・姪」といった遠縁の親族が相続人となることがあります。

その結果、介護や身の回りの世話をしてきた人物が財産を受け取れず、音信不通だった相続人が財産を手にするというケースも起こりえます。

「笑う相続人」と呼ばれるような相続人であっても、その存在自体は法律に則った正当なものです。民法では、被相続人と生前にどのような関係だったかに関わらず、一定の親族関係があれば法定相続人として相続の権利が認められます

たとえ生前に関係が断絶していたとしても、法の定めに基づいて相続権が発生するため、相続人として違法なわけではありません。ただし、被相続人の希望や意思と食い違う結果になることも少なくなく、その点が「笑う相続人」という呼び名につながっています。

被相続人の最期を看取った人や、介護・生活支援を行っていた家族が何の相続も受けられず、関係が希薄だった親族が多くの財産を受け取ると、「不公平だ」と感じる遺族も出てきます。

こうした不満が原因で、相続に関する調停や訴訟へと発展するケースも少なくありません。遺された家族の心情に配慮されていない相続の結果は、感情的な対立を生むきっかけになり得るのです。

笑う相続人の典型例を理解するためには、法定相続人の範囲と相続順位の仕組みを知っておくことが重要です。

相続順位を表した図。被相続人に子も両親もいなかった場合には疎遠だった兄弟姉妹や甥姪が相続人となる可能性がある
相続順位を表した図。被相続人に子も両親もいなかった場合には疎遠だった兄弟姉妹や甥姪が相続人となる可能性がある

たとえば、被相続人に子も両親もいなかった場合、疎遠だった兄弟姉妹や甥姪が相続人となる可能性があります。このように、生前に関係が薄かった親族が相続人となることもあり、それが「笑う相続人」と呼ばれる事態を招くこともあるのです。

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「笑う相続人」が生まれる背景には、相続人の範囲や相続順位のルールがあります。被相続人が想定していなかった人物が相続する場合、その人の立場は法律上問題がなくても、周囲から見て「なぜこの人が?」と違和感を持たれることがあります。ここでは、一般的に「笑う相続人」と言われやすい典型的なケースを紹介します。

離婚した元配偶者には相続権がありませんが、その間に生まれた子には法律上の相続権があります。たとえ被相続人が再婚して新しい家庭を築いていたとしても、元配偶者の子どもは現配偶者の子どもと同じ割合で相続する権利を持っています。

被相続人が亡くなった時点で、その子どもと長年連絡を取っていなかった場合でも、相続権があることに変わりはありません。結果として、生前に関わりのなかった子どもが多額の財産を受け取り、近くで支えていた家族がわずかな分しか受け取れないという構図が生まれることもあります。

被相続人に子どもや親(直系卑属・直系尊属)がいない場合、兄弟姉妹が法定相続人となります。そして、その兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、代襲相続によって甥や姪が相続人となることがあります。

このような甥姪が、被相続人とほとんど面識がなかった場合でも、法定相続人として相続権を持ちます。たとえば、遠方で暮らしていた甥が突然相続人となり、多額の財産を得るというケースもあり得ます。

特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた人や、療養看護に務めていた人などを指します。たとえば、内縁の配偶者や長年同居していた友人、さらには介護を担っていた隣人などが該当する場合もあります。

これらの人々は本来、法定相続人ではないため、遺言がなければ原則として遺産を受け取れません。ただし、相続財産管理人の選任・公告といった一定の手続きを経たうえで、家庭裁判所に認められれば、「特別縁故者」として遺産の一部を取得できる可能性があります。

この制度により、周囲から見ると「思わぬ人が遺産を得た」と映ることがあるため、「笑う相続人」と呼ばれます。

法律に従えば、たとえ被相続人が望んでいなかった相手でも、一定の条件を満たせば財産を相続することになります。こうした“想定外の相続”を防ぐためには、生前にしっかりと備えておくことが重要です。ここでは、笑う相続人の発生を防ぐために有効とされる3つの方法をご紹介します。

もっとも基本的かつ確実な対策が、遺言書の作成です。遺言によって、自分の財産をどのように分けるかを明示しておけば、原則としてその内容が優先されます。

特に、公正証書遺言であれば、紛失や偽造のリスクも少なく、家庭裁判所での検認手続きも不要なため安心です。遺言によって、関係の薄い相続人への配分を減らしたり、血縁関係のない大切な人へ遺産を託したりすることも可能です。

ただし、注意点もあります。子や親などの直系の親族には「遺留分」があるため、たとえば元配偶者との子の相続分を遺言でゼロと定めることはできても、遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

一方で、兄弟姉妹や甥姪には遺留分がないため、遺言によって遺産を全く相続させないことが可能です。

相続人が被相続人に対して虐待や著しい非行を行っていたような場合、「相続人廃除」という制度を使うことができます。これは家庭裁判所への申し立てにより、その相続人の資格を失わせる制度です。

廃除の手続きは生前に行うことも、遺言書の中で行うこともできます。たとえば、生前に暴言や暴力、生活費の無心などで著しい迷惑をかけられていた場合などに検討されます。

ただし、廃除できるのは法律上「推定相続人」のうち直系卑属や直系尊属など限られた親族に対してのみであり、兄弟姉妹や甥姪は対象外です。そのため、確実な排除を希望する場合は、遺言の活用がより現実的な対策となります。

笑う相続人が財産を得るのを防ぐ方法として、生前に信頼できる人に財産を譲る「生前贈与」も一つの選択肢です。これにより、相続発生時の遺産総額が減り、想定外の人物に財産が渡る影響を一定程度抑える効果が期待できます。

ただし、生前贈与には注意も必要です。死亡前の一定期間に行われた贈与は「特別受益」として持ち戻しの対象になることがあり、法定相続人間での遺産分割時に考慮されます。また、相続税の加算対象となるケースもあり、贈与税の申告義務も発生します。

生前贈与は、かえって相続トラブルの原因になることもあるため、税務・法務の専門家に相談したうえで、時期や方法を慎重に検討することが大切です。

【関連】生前贈与とは? 効果的なやり方からデメリットまでわかりやすく解説

笑う相続人を発生させないためには、生前からの備えがとても大切です。とはいえ、相続関係は家庭ごとに事情が異なり、自分で判断するのが難しいケースも少なくありません。

そんなときは、相続に詳しい専門家に相談することで、将来のトラブルを未然に防ぐ手立てが見えてきます。ここでは、相談すべきタイミングと、専門家に依頼するメリットを場面ごとにご紹介します。

再婚した家庭や養子がいる場合、法定相続人の範囲が複雑になりやすく、被相続人が意図しない人物に財産が渡るリスクがあります。たとえば、前妻との間に生まれた子や、養子に出した子が相続人となる場合などが典型です。

このようなときは、専門家の助けを借りて、遺留分に配慮した遺言書の作成や相続関係の整理を行うことが重要です。相続トラブルの火種を残さないためにも、早めの相談が安心につながります。

法定相続では、相続人の関係性の濃淡にかかわらず、順位と割合に応じて自動的に財産が分配されます。そのため、長年支えてくれた親族が報われず、疎遠になっていた親族が多くの財産を受け取るような事態も起こりえます。

関係が悪化している相続人がいる場合は、相続人の廃除が可能かどうかの検討や、遺言での調整が有効な対応になります。専門家であれば、こうした手続きを適切にサポートしてくれるほか、法律に照らした現実的なアドバイスを受けることができます。

法定相続人がいない場合や、誰が相続人になるのか不明な場合には、特別縁故者と認定された人物が遺産を受け取る可能性があります。たとえば、同居していた友人や内縁関係の相手などがその対象となることがあります。

こうしたケースでは、相続人の有無を調査したうえで、遺言や遺贈、寄付の活用によって財産の承継先を明確にしておくことが大切です。生前に専門家に相談しておけば、望まない相続のリスクを減らすことができます。

法律上の相続人ではない相手、たとえば介護をしてくれた知人や長年世話になった施設の職員などに財産を遺したいと考える人もいます。その一方で、子や親などには遺留分があるため、完全に相続から外すことはできません。

このような希望をかなえるためには、生前贈与や民事信託、遺言の工夫などを組み合わせる必要があります。専門家に相談すれば、最も適した方法を選び、できる限り希望に沿った形で財産を託すことができます。

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Q. 「笑う相続人」は違法?

いいえ、違法ではありません。笑う相続人とはあくまで俗称であり、法に従って正当に財産を取得している相続人や特別縁故者を指します。被相続人の意に反する結果であっても、法律上の手続に基づいていれば違法性はありません。

Q. 死亡保険の受取人が法定相続人以外だった場合、笑う相続人と言える?

原則として言えません。死亡保険金は民法上、相続財産とは別に扱われ、受取人に直接帰属する固有の財産と見なされます。そのため、たとえ被相続人と関係が薄い人物が受け取ったとしても、法律上の手続きに基づいていれば問題はありません

ただし、相続税法上は「みなし相続財産」として課税対象になる点には注意が必要です。一定額を超えると相続税の計算に含まれるため、税務上の取り扱いは事前に確認しておくことが望ましいでしょう。

「笑う相続人」は、被相続人が望まなかった相手に遺産が渡る状況を指す言葉です。民法の規定どおりに相続が行われると、被相続人との関係が薄かった親族や、思いがけない第三者が財産を取得するケースもあります。
こうした事態を避けるには、遺言書の作成や生前贈与など、事前の備えが欠かせません。法的な仕組みや相続人の範囲は複雑なため、相続に不安がある方は、早めに弁護士などの専門家に相談し、ご自身の意思を反映した対策を講じることが大切です。

(記事は2026年1月1日時点の情報に基づいています)

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