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再婚相手の連れ子に相続権はある? 相続させる方法・させない方法を解説
養子縁組をすれば、連れ子にも相続権は生じます(c)Getty Images
再婚相手に子どもがいる場合、「自分が死んだら、その子どもに相続権はあるのだろうか?」と気になっていませんか。
再婚相手の子ども(いわゆる連れ子)に相続権が認められるのは、自分と連れ子の間で養子縁組をしている場合に限られます。養子縁組をしていない連れ子には相続権がありませんが、遺言書・生前贈与・家族信託などの方法で財産を譲り渡すことはできます。
連れ子に財産を譲り渡す場合は、親族が反発する可能性があるので注意を要します。弁護士のサポートを受けながら、親族間のトラブルを予防する方法を検討しましょう。再婚相手の連れ子に相続権があるのかどうか、連れ子に財産を残す方法、注意すべきトラブルなどを弁護士が解説します。
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1. 連れ子に相続権はある?
「連れ子」とは一般に、配偶者の子であるものの、自分の実の子ではない子どもを指します。たとえば、再婚相手の子である息子や娘が「連れ子」にあたります。自分が亡くなったときに、再婚相手の連れ子に相続権があるかどうかは、生前に連れ子と養子縁組をしていたかどうかによって決まります。
1-1. 法定相続人になる者
「法定相続人」とは、民法の規定に従って相続権を有する者です。法定相続人は遺産分割協議に参加する権利を持ちます。自分が亡くなったときに法定相続人となるのは、以下の①または②に当たる者です。
【①配偶者】
※内縁(事実婚)は不可
【②以下の者のうち、最上位者】
・第1順位:子
・第2順位:直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母など)のうち、自分との親等が最も近い者
・第3順位:兄弟姉妹
※子が死亡している場合は、その子(自分の孫)が第1順位として代襲相続人となる
※兄弟姉妹が死亡している場合は、その子(自分の甥・姪)が第3順位として代襲相続人となる
1-2. 連れ子が法定相続人になるのは、養子縁組をしている場合のみ
自分の実子は法定相続人になりますが、再婚相手の子どもは、再婚しただけでは法律上自分の子にはなりません。自分と連れ子が法律上の親子関係を結ぶには、養子縁組が必要です。法律上は養子縁組をして初めて、再婚相手の子どもは自分の「子」となり、自分が亡くなったときに遺産を相続する権利を持つようになります。
2. 連れ子に財産を譲り渡すための方法
再婚相手の子どもに、自分の生前または死後に財産を渡したい場合、養子縁組以外にも、遺言書の作成・生前贈与・家族信託などの方法が考えられます。以下では、それぞれの方法の概要を説明します。
2-1. 連れ子と養子縁組をする
前述のとおり、再婚相手の連れ子と養子縁組をすると、自分が亡くなったときに連れ子が法定相続人になります。法定相続人は遺産分割協議に参加し、法定相続分などの権利を主張して財産を相続することができます。
養子縁組をするためには、養親と養子の間で合意したうえで、市区町村役場に養子縁組届を提出します。届出先は養親もしくは養子の本籍地、または届出人の所在地の市区町村役場です。養子縁組届には、証人2人の署名が必要とされています。
なお、連れ子が15歳未満の場合は、その親である再婚相手が本人に代わって養子縁組への承諾を行います。
2-2. 遺言書によって財産を贈与する(遺贈をする)
遺言書を作成すれば、自分が亡くなったときに財産を渡す人を自由に決められます。再婚相手の子どもが法定相続人であるか否かにかかわらず、遺言書によって財産を譲り渡すこと(=遺贈)は可能です。
ただし、遺言書は民法に定められた方式に従って作成しなければなりません。方式に不備がある遺言書は無効となります。紛失や改ざんのリスクを防ぐことも考慮すると、公証役場で公正証書遺言を作成するか、または自筆証書遺言を作成したうえで法務局に預けるのが安心です。
2-3. 生前贈与をする
連れ子に対して、財産を生前贈与することも考えられます。生前贈与をすれば、早い段階から連れ子に財産を活用させられます。
生前贈与を行う際には、贈与契約書を作成しましょう。贈与契約書には、贈与する財産や贈与の時期などを明記したうえで、自分と連れ子が署名捺印をします。連れ子が未成年者(18歳未満)の場合は、法定代理人である親権者が代わりに署名捺印を行います。
生前贈与を活用することで、財産を確実に引き継げるだけでなく、遺産分割トラブルを避けやすくなるメリットがあります。
2-4. 家族信託を設定する
「家族信託」とは、信頼できる家族に財産の管理や運用を任せる仕組みです。「委託者(財産の所有者)」が所有している財産を「受託者」に預け、受託者は「受益者」のためにその財産を管理・運用します。
再婚相手や他の親族を受託者、連れ子を受益者として家族信託を設定すれば、万が一自分に何かあったときも、信託財産は連れ子のために活用され続けます。
家族信託を設定する際には、信託契約書の作成が必要です。信託契約書には、家族信託の内容を細かく記載する必要があるので、弁護士や司法書士のサポートを受けてください。
また、受託者が信託財産を横領するリスクにも注意しなければなりません。信頼できる親族を見極めたうえで、受託者になることを依頼しましょう。
3. 連れ子に財産を譲り渡すときによくあるトラブル
連れ子に財産を譲り渡すと、親族同士の争いや税金に関するトラブルが発生するおそれがあります。具体的には、以下のトラブルに十分ご注意ください。
3-1. 取り分が減った実子が反発する
自分に実子がいる場合、連れ子に対して財産を譲ることで、実子が相続で得られる財産が減ることになります。
その結果、想定していたよりも取り分が少なくなったことについて、実子が反発するかもしれません。それにより実子と連れ子の関係性が悪化し、自分の死後に相続トラブルが生じるリスクも高くなります。
実子の心情に配慮するなら、実子に対しても生前贈与で財産を譲り渡すことや、遺言書で実子の相続分を多めに指定することなどが考えられます。
3-2. 相続人でなくなった兄弟姉妹が反発する
自分に子がおらず、父母などの直系尊属が全員亡くなっている場合、兄弟姉妹が相続人となります。しかし、この状態で再婚相手の連れ子と養子縁組をすると、連れ子が相続人になる一方で、兄弟姉妹は相続人から外れることになります。
相続人でなくなった兄弟姉妹は、遺産を受け取れなくなることに不満を抱き、反発するかもしれません。その結果、兄弟姉妹と連れ子の関係性が悪化し、親族間で険悪な雰囲気になる可能性があります。
兄弟姉妹に対して配慮を示すなら、生前贈与や遺言書によってある程度の財産を譲り渡すことなどを検討しましょう。
3-3. 遺留分侵害によって相続人同士が争う
連れ子に譲る財産が多すぎると、他の相続人の「遺留分」を侵害することがあります。「遺留分」とは、相続などによって取得できる財産の最低保障額です。兄弟姉妹とその代襲相続人以外の法定相続人に認められています。
たとえば、法定相続人が再婚相手(配偶者)・連れ子・実子の3人であるとします。この場合、実子には相続財産等の額の8分の1に相当する遺留分が認められます。
仮に再婚相手と連れ子にすべての財産を譲り渡し、実子には全く財産を与えないとすれば、実子の遺留分を侵害することになります。その際、実子は再婚相手と連れ子に対して「遺留分侵害額請求」を行い、金銭の支払いを求めてくるかもしれません。
このような遺留分に関するトラブルを防ぐには、各法定相続人の遺留分を侵害しないように配慮することが望ましいです。上記のケースであれば、実子にも相続財産等の8分の1以上を確保しておくことで、争いを防ぎやすくなります。
3-4. 生前贈与について追徴課税を受ける
年間計110万円を超えて贈与を受けた場合は、原則として超過分に対して贈与税が課されます。支払い義務があるのは贈与を受けた側です。
連れ子に対して多額の贈与をしたにもかかわらず、連れ子が贈与税の申告をしていないと、数年後に税務署に指摘されて追徴課税を受けるおそれがあります。延滞税や加算税が上乗せされ、本来よりも多額の納税を余儀なくされるので要注意です。
贈与税の申告については、主に税理士が相談を受け付けています。連れ子に対する生前贈与に伴い、贈与税の申告が必要になりそうな場合は、あらかじめ税理士にご相談ください。
4. 連れ子に遺産を相続させたくないときは、どうすべき?
自分が亡くなったとき、再婚相手の子どもに遺産を相続させたくない場合は、以下の方法を検討してください。
4-1. 養子縁組をしていないなら、何もしない
再婚相手の連れ子と養子縁組をしていないなら、連れ子に相続権はありません。したがって、連れ子に遺産を与えないための行動は、特に必要ありません。
ただし相続トラブルを予防する観点からは、遺言書を作成して遺産の分け方を決めておくことが望ましいです。
4-2. 離縁する
再婚相手の連れ子と養子縁組をしている場合、連れ子には自分の遺産を相続する権利があります。連れ子の相続権をなくしたいなら、離縁をして養子縁組を解消しなければなりません。
離縁をするためには、原則として養親と養子の合意が必要です。ただし、連れ子が15歳未満の場合は、離縁後に法定代理人となる再婚相手から離縁の同意を得る必要があります(民法811条1項・2項)。
なお、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の審判によって離縁が認められることがあります(民法811条4項)。また、以下のいずれかに該当する場合は、養親は訴訟によって強制的に離縁を求めることができます(民法814条1項)。
- 養子から悪意で遺棄されたとき
- 養子の生死が3年以上明らかでないとき
- その他養子縁組を継続し難い重大な事由があるとき
4-3. 遺言書を作成する
遺言書を作成して、再婚相手の連れ子の相続分をゼロと指定すれば、連れ子が遺産を相続することはなくなります。
ただし、連れ子と養子縁組をしている場合は、連れ子にも遺留分が認められます。この場合、連れ子の相続分がゼロだと遺留分侵害が生じます。自分が亡くなった後、連れ子は遺産を受け取った人に対して遺留分侵害額請求を行い、金銭の支払いを求めるかもしれません。
このようなトラブルを防ぐためには、連れ子の相続分をゼロとするのではなく、最低限遺留分に相当する財産は与えておくのが無難と思われます。
4-4. 生前贈与を行って、少しずつ財産を減らす
自分の実子などに対して少しずつ生前贈与を行えば、自分が亡くなったときに残る相続財産を減らせます。その結果、養子縁組をしている連れ子の取り分も減ります。
ただし、年110万円を超える贈与をすると、原則として贈与税が課される点に注意が必要です。また、以下の期間に行われた生前贈与は遺留分侵害額請求の対象になり得ます。
・相続人に対する贈与:相続開始前10年間
・相続人以外の者に対する贈与:相続開始前1年間
贈与税や遺留分に関する懸念点を踏まえると、生前贈与はできる限り、早い段階から少しずつ行うことが望ましいです。
4-5. 家庭裁判所に推定相続人の廃除を申し立てる
養子縁組をしている再婚相手の子どもについて、以下のいずれかに該当する場合は、家庭裁判所に対して推定相続人の廃除を請求できます(民法892条)。
- 連れ子が自分(被相続人)に対して虐待をしたとき
- 連れ子が自分に対して重大な侮辱を加えたとき
- 連れ子にその他の著しい非行があったとき
家庭裁判所によって推定相続人の廃除が認められると、連れ子は相続権を失います。連れ子の素行が上記のようにあまりにもひどい場合は、推定相続人の廃除の申立てを検討しましょう。
5. 連れ子の遺産相続について、弁護士に相談するメリット
遺産相続に連れ子が関係する場合は、一般的なケースよりも相続トラブルのリスクが高いので、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、連れ子に関係する相続トラブルが発生しにくくなる対策を提案してもらえます。連れ子に財産を譲り渡したい、あるいは全く財産を与えたくないなど、自分の要望に合った方法についてアドバイスを受けられます。
養子縁組、贈与契約書や遺言書の作成などの必要な手続きについても、弁護士に依頼すれば全面的に任せられます。特に遺言書を作成する際には、弁護士を遺言執行者に指定すれば、自分が亡くなった後で弁護士に遺言の内容を実現してもらえる安心があります。
連れ子が関係する相続について、不安がある場合には、早い段階で弁護士に相談するとよいでしょう。
6. 相続と連れ子についてよくある質問
Q. 連れ子に遺贈する際の注意点は?
遺言書は、民法の方式に沿って作成しなければ無効になります。弁護士のサポートを受けながら、適切な方式で遺言書を作成してください。また、遺言書によって偏った遺産の配分を指定すると、遺留分侵害によるトラブルのリスクが生じます。基本的には、各相続人の遺留分を侵害しないように配慮すべきです。
Q. 離婚した元配偶者の子は、自分が亡くなったときに遺産を相続できる?
元配偶者との間に生まれた実子であれば、離婚しても法律上の親子関係は続くため、離婚後も法定相続人として遺産を相続できます。一方で、元配偶者の連れ子であれば、自分と元配偶者の連れ子が養子縁組をしていれば、その子は養子として自分の遺産を相続することができます。
Q. 特別養子縁組と普通養子縁組では、相続について違いはある?
養親の相続との関係では、特別養子縁組と普通養子縁組に違いはありません。一方、普通養子縁組の養子は実親の相続権も有しますが、特別養子縁組の養子は実親の相続権を有しません。
7. まとめ 連れ子は養子縁組をすれば相続権を持つ、他の親族とのトラブルに注意する
再婚相手の子どもが遺産相続に関係してくる場合は、実子など他の親族との兼ね合いで、相続トラブルが発生するリスクが高いです。できる限りトラブルにならないよう、弁護士に相談してアドバイスを求めましょう。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)
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