相続税申告を依頼した税理士を変更したい! トラブルにならない断り方や注意点を解説
税理士に相続税申告を依頼したものの、相性が合わないなどを理由に税理士を変更したいと考えるケースがあります。税理士を変更することは可能ですが、デメリットも踏まえたうえで本当に変更すべきかどうかを適切に判断しましょう。相続税申告を依頼した税理士を変更することのメリットとデメリット、トラブルを避けるための注意点などをわかりやすく解説します。
税理士に相続税申告を依頼したものの、相性が合わないなどを理由に税理士を変更したいと考えるケースがあります。税理士を変更することは可能ですが、デメリットも踏まえたうえで本当に変更すべきかどうかを適切に判断しましょう。相続税申告を依頼した税理士を変更することのメリットとデメリット、トラブルを避けるための注意点などをわかりやすく解説します。
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相続税の申告について、依頼者が税理士と締結する委任契約は、各当事者がいつでも解除できます(民法651条1項)。したがって、依頼者の意向によって相続税申告を依頼する税理士を変更することは可能です。税理士が信頼できない場合には、別の税理士への変更を検討しましょう。
税理士を変更したほうがよいケースとしては、以下の例が挙げられます。
すべての税理士が相続税に詳しいわけではありません。
その理由の一つとして、税理士試験で相続税は選択科目のため、相続税を勉強しなくても税理士の資格を得られることが挙げられます。また、企業向けの税務など別の分野に特化しているため、相続税関連業務の経験がほとんどない税理士もいます。依頼した税理士が相続税に関する知識に乏しい場合は、相続税に詳しい税理士に依頼し直したほうがよいでしょう。
約束を守らない、依頼者の話を聞かない、質問に答えない、不遜であるなど、税理士の態度が誠実でない場合は、ストレスを軽減するために別の税理士への依頼を検討すべきでしょう。
相続税の申告を依頼する税理士を変更することのメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
相続税に詳しくない税理士に依頼すると、申告業務に誤りが生じるおそれがあるほか、申告の前提となる遺産の分け方についてアドバイスを受けられないことがあります。
相続税について深く理解している税理士に依頼し直せば、税法に従って適正な形で申告を行うことができます。一次相続で相続人となった配偶者が亡くなることで発生する二次相続も見据えた効率的な遺産の分け方を提案してもらえるほか、控除や特例なども適切に利用でき、相続税負担の軽減にもつながるでしょう。
相性の悪い税理士に依頼していると、その対応についてストレスを感じる場面が多くなってしまいます。相性のよい税理士に変更すれば、依頼に関するストレスが大幅に軽減されます。
相続税の申告を依頼する税理士を変更することには、いくつかのデメリットがある点に注意が必要です。
変更前の税理士に支払った報酬は、委任契約を解除しても返還されないことが多いです。その場合、税理士費用が二重に発生してしまいます。税理士費用の取り扱いについては、委任契約の内容をあらかじめ確認しましょう。
相続税の申告期間は、相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内です。
税理士を変更すると、申告書などの準備が最初からやり直しになることがあります。申告の期限が迫っている場合は、税理士に対応を断られたり、追加費用が発生したりする可能性があるので注意が必要です。
委任契約の解除にあたり、変更前の税理士との間でトラブルになる場合もあります。たとえば着手金の返還や違約金の支払いについて揉めたり、預けている書類がなかなか返還されなかったりするケースが典型例です。
税理士とのトラブルをできる限り避けるため、後述する「6. トラブルを避ける税理士変更の伝え方」を参考にして、穏便な形で税理士に契約解除を伝えましょう。
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相続の相談が出来る税理士を探す相続税申告を依頼する税理士を変更する場合、変更のタイミングは早ければ早いほどよいです。変更が遅くなると、相続税申告の期限との関係でスケジュールがタイトになり、さらに税理士費用も高くなりやすい傾向にあります。
税理士に対して変更を切り出すのは勇気がいることですが、スムーズに相続税申告を行うためにも、早めに変更の意思を伝えましょう。
税理士とのトラブルを避けるためには、税理士の変更をどのように伝えるかが重要です。基本的には、穏便な契約解除をめざした伝え方をするのがよいでしょう。
依頼者には、税理士に対して真実の変更理由を伝える義務はありません。税理士の性格や態度を見ながら、(本当か否かにかかわらず)以下のような理由を適宜伝えましょう。
・相続税に詳しい税理士を紹介された
・親戚に税理士を紹介されて断れなかった
・兄弟姉妹と同じ税理士に依頼することにした
・相性が合わなかった
・申告の方針に納得できない部分があった
ただし、税理士の不適切な事務処理が理由で委任契約を解除する場合は、着手金の返還などについて争いになることを想定して、変更理由を正直に伝えたほうがよいこともあります。この場合は、弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。
相続税申告を依頼する税理士を変更する際の手順は、大まかに以下のとおりです。
契約を解除したい税理士と締結した委任契約をチェックし、着手金の取り扱いや解除手続きなどを確認します。
相続税について豊富な知識と経験を有する税理士を探して、事前に相談しておきましょう。
前述の伝え方を参考にして、契約解除の意思を伝えましょう。
相続税申告のために預けていた書類を返してもらいます。スムーズに返してもらうためには、穏便に契約解除の意思を伝えることが望ましいでしょう。
新しい税理士と委任契約を締結して、相続税申告のために必要な書類などを預けます。なお変更前の税理士は、契約締結に立ち会わないのが通常です。
委任契約を解除する際に違約金が発生するかどうか、および着手金が返還されるかどうかは、委任契約の内容に従って決まります。特に定めがない場合は、解除のやむを得ない事由がある場合を除き、事務処理の段階に応じて税理士に生じた損害を賠償しなければなりません(民法651条2項)。
税理士変更に伴う違約金や着手金返還の取り扱いについて、わからない部分があれば弁護士にご相談ください。
税理士との委任契約を解除する際には、必ず証拠が残る形で意思表示を行いましょう。一般的な郵便やメールによって解除を伝えるケースもありますが、内容証明郵便で解除通知を送る方法が最も確実です。
税理士が委任契約の解除を拒否したとしても、依頼者側に解除権が認められるケースであれば、依頼者の一方的な意思表示によって委任契約が終了します。内容証明郵便で解除通知を送っておきましょう。
相続税申告のために預けている書類が返還されない場合や、契約に従って着手金が返還されない場合には、その税理士の所属税理士会や弁護士へ相談してください。
相続税申告を依頼した税理士の知識が乏しい場合や、税理士と相性が合わない場合は、別の税理士に変更することも考えられます。そうしたケースでは、無料相談を利用してセカンドオピニオンを求めるなど、複数の税理士の話を聞いたうえで変更先を決めるのがよいでしょう。
ただし、税理士を変更する場合、報酬が二重に発生する、申告期限までの時間が短くなる、税理士とトラブルになるなどのデメリットがあります。本当に税理士を変更すべきかどうか、十分に検討したうえで判断することが大切です。
(記事は2023年12月1日時点の情報に基づいています)
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