準確定申告は電子申告したほうがいい? 必要な準備と注意点を解説
被相続人の所得税が必要な場合、準確定申告を行います。このときに電子申告で手続きをするとスムーズです。特に被相続人が不動産オーナーや個人事業主であれば、電子申告は節税につながります。今回は、普通の確定申告と準確定申告の違いや電子申告の事前準備、注意点などを、元国税専門官のライターが解説します。
被相続人の所得税が必要な場合、準確定申告を行います。このときに電子申告で手続きをするとスムーズです。特に被相続人が不動産オーナーや個人事業主であれば、電子申告は節税につながります。今回は、普通の確定申告と準確定申告の違いや電子申告の事前準備、注意点などを、元国税専門官のライターが解説します。
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所得税の申告が必要な個人が死亡すると、「準確定申告」の手続きが必要です。従来、所得税の準確定申告は電子申告(e-Tax)に対応していなかったのですが、2020年分から可能となりました。
電子申告(e-Tax)を利用すると、国税に関する申告などの手続きをインターネットで行えます。税務署などに行く必要はなく、自宅から手続きができるので便利です。また、人によっては電子申告を行うことで所得税や住民税を下げることができます。
電子申告による節税ができるのは、青色申告の場合です。事業所得または不動産所得のある人で、事前に青色申告の承認を受けていたのであれば、電子申告をお勧めします。
青色申告の承認を受け、期限内申告を行うなどの要件を満たす場合、所得から青色申告特別控除を差し引くことができます。この青色申告特別控除の金額は、以下のように3段階に分かれています。
つまり、紙で申告をした場合に控除額が55万円の人が電子申告を行うと、控除額が10万円増えるのです。
なお、電子帳簿保存により控除額を増やすこともできますが、「優良な電子帳簿」として認められる帳簿作成ソフトを使うなどの条件があり、ややハードルが高いと考えられます。
準確定申告を電子申告で行う場合、いくつか事前準備が必要です。
まずはマイナンバーカードを取得する必要があります。マイナンバーカードには「電子証明書」という公的な認証に必要な情報が組み込まれており、これがなければ電子申告を行うことができません。
準確定申告の場合、被相続人ではなく、手続きをする相続人のマイナンバーカードを使います。もし相続人が複数いれば、相続人代表1名のマイナンバーカードを用意してください。
ちなみに電子申告にはマイナンバーカードを使わない「ID・パスワード方式」がありますが、準確定申告には対応していません。
次に「利用者識別番号」を取得する必要があります。通常の確定申告であれば本人が番号を取りますが、準確定申告の場合は相続人代表が番号を取ります。
この利用者識別番号は税務署の窓口でも取得できますが、国税庁ホームページから取得する方がスムーズです。e-Taxのサイトにアクセスし、「開始届の提出」を行えば、番号が即時発行されます。
なお、税理士に準確定申告の電子申告を依頼する場合、相続人のマイナンバーカードは不要となりますが、利用者識別番号は必要です。
(引用:国税庁ホームページ)
準確定申告を行う場合、後述する「確定申告書付表」を添付する点以外は、通常の申告書の作成方法とほぼ変わりません。
ただし、「亡くなった前年分」と「亡くなった年分」の2つの申告が必要になる可能性がある点に注意してください。
たとえば2022年1月31日に死亡したとしましょう。すると、以下の期間の所得や控除を集計して、準確定申告が必要かを判断します。
2021年分:2021年1月1日〜2021年12月31日
2022年分:2022年1月1日〜2022年1月31日
準確定申告の申告が必要な場合、その期限は「被相続人の死亡を知った日から4カ月以内」です。この期間内に被相続人が生前得た所得や控除などを集計し、準確定申告書で計算しなくてはいけません。
年金収入や医療費控除など、申告する項目が多い場合、早めの準備が必要です。
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相続の相談が出来る税理士を探す次に、準確定申告を行うときの提出書類を見ていきましょう。
所得税及び復興特別所得税の準確定申告書
通常の確定申告書の様式を使います。氏名欄については、相続人本人ではなく、次のように記載してください。
(被相続人)〇〇〇〇
または
(被相続人)〇〇〇〇 (相続人)▲▲▲▲
所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
相続人ごとに税額や還付金の分け方などを記載する書類です。紙で申告する場合、相続人が1人なら提出不要になります。ただし、電子申告の場合は相続人1人でも提出が必要なので注意しましょう。
準確定申告の確認書
相続人が2名以上いる場合に必要な書類です。電子申告の場合、各相続人が署名をした書面をPDFデータにし、送信します。
委任状
相続人が2名以上いる場合で、相続人代表がまとめて還付金を受け取る場合に必要な書類です。
上記は準確定申告の基本的な提出書類です。このほか、申告内容によって必要書類が増えます。
電子申告には、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を使う方法と、e-Taxソフトを使う方法があります。国税庁ホームページからe-Taxソフトをダウンロードする必要があります。
準確定申告の場合、前者を使うことはできません。このとき、Macには未対応な点に注意してください。Windowsのパソコンを用意する必要があります。
繰り返しになりますが、準確定申告の期限は4カ月以内です。この期限内に相続人自ら電子申告の準備をするのは大変かもしれません。
もしも期限に間に合わなければ、青色申告特別控除は65万円ではなく、10万円になるので、税負担が増えてしまいます。
そのようなときは、税理士に相談するなどし、期限内に申告できるよう準備を進めていくようにしましょう。
(記事は2022年3月1日時点の情報に基づいています)
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