古家付きの土地を売却する際の注意点 個人の税金や法人の消費税も解説
不動産の売却方法のひとつに、「古家付き土地」があります。物件広告で「古家付き土地」と謳(うた)うと、自ら取り壊して更地として利用したい人に対しても訴求することができます。古家付き土地は、価値のない建物もセットで売るため、独特の注意点や税金の考え方が存在します。この記事では「古家付き土地の売却」について解説します。
不動産の売却方法のひとつに、「古家付き土地」があります。物件広告で「古家付き土地」と謳(うた)うと、自ら取り壊して更地として利用したい人に対しても訴求することができます。古家付き土地は、価値のない建物もセットで売るため、独特の注意点や税金の考え方が存在します。この記事では「古家付き土地の売却」について解説します。
目次
まず、古家付き土地売却の注意点について解説します。
古家付きの土地を売却するときは、建物の契約不適合責任をすべて免責しておくことが重要です。
契約不適合責任とは、契約の内容に適合しない場合の売主の責任のことです。
売主は契約内容と異なるものを売ったときに、買主から追完請求(修繕の請求)や、契約解除や損害賠償等を追及される責任になります。
古家付き土地の物件の場合、買主は引き渡し後に建物を取り壊すことを前提として購入していることが多いため、売主としては建物に関して余計な契約不適合責任を負わないという条件にすることが適切です。
契約不適合責任を免責するには、買主の了解の上、売買契約書に建物の契約不適合責任を負わない旨の特約を盛り込んでおくことが対策となります。
古家付きの土地を売却するには、ゴミは処分しておくことが適切です。
ゴミが残っている古家は、解体費用に加えてゴミの処分費用が余計に発生します。古家付きで売ると、解体費用の負担は買主の負担になります。
ゴミが残っている古家は余計な解体費用がかかることから、買主に値下げの交渉余地を与えてしまい、売却金額が安くなってしまう原因となります。
一般的な住宅の解体費用の相場は以下の通りです。
※「1平米」は0.3025坪なので、平米数に0.3025を乗じると坪面積が算出できます。
住宅の広さは延床面積が30~35坪程度のものが一般的となります。
木造の解体費用の相場は坪4万円~5万円程度なので、木造戸建て住宅の解体費用は150万円程度となることが多いです。
次に、個人が古家付き土地を売却したときの税金について解説します。
個人が不動産を売った場合、譲渡所得が生じると税金が発生します。譲渡所得とは売却益のことであり、譲渡所得の求め方は以下の通りです。
・譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用
譲渡価額とは売却価額のことです。
取得費は、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額になります。減価償却費とは、一定の算式で計算される会計上の費用のことです。
譲渡費用は、仲介手数料や印紙税、土地の測量費、建物の取り壊し費用などの売却に直接要した費用になります。
税金は譲渡所得に税率を乗じて求めます。
・税金=譲渡所得×税率
税率は所有期間によって決まり、売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のときは「長期譲渡所得」、1月1日時点において所有期間が5年以下のときは「短期譲渡所得」の税率を用います。
相続で引き継いだ古家の所有期間は、親の所有期間も引き継ぎます。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は以下の通りです。
復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。
古家の取得費の計算方法について3つのパターンを解説します。
【土地と建物の購入額の内訳がわかっているときの取得費の求め方】
取得費は、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額です。取得費を計算式で表すと以下のようになります。
・取得費=土地取得費+建物取得費
=土地購入価額+(建物購入価額-減価償却費)
古家の土地と建物の購入額の内訳がわかっている場合は、建物購入額を用いて減価償却計算をすることが必要です。
マイホームや親の実家など、非事業用の不動産の減価償却の計算方法は以下のようになります。
・減価償却費=建物購入価額×0.9×償却率×経過年数
経過年数は築年数ではなく、購入したときから売却したときまでの所有期間のことです。
償却率は建物の構造によって以下の数値を用います。
非事業用の建物の減価償却費は、建物購入価額の95%に達したら、それ以上は減価償却ができないというルールがあります。
減価償却費が建物購入価額の95%に達した以降は、経過年数が何年経ってもそれ以上は減価償却が行われず、建物取得費は「建物購入価額の5%」となります。
例えば、木造であれば経過年数が35年以上になると減価償却費が建物購入価額の95%に達するので、経過年数35年以上の木造住宅の建物取得費は何年経っても「建物購入価額の5%」のままです。
【土地も建物も購入額がわからないときの取得費の求め方】
古家の購入当時の土地建物価格がわからない場合、取得費は概算取得費というものを用いて計算します。概算取得費とは「譲渡価額の5%」です。
・概算取得費=譲渡価額×5%
概算取得費を用いた場合の譲渡所得の計算式は以下のように計算します。
・譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用
=譲渡価額-(譲渡価額×5%)-譲渡費用
【土地だけ購入額がわからないときの取得費の求め方】
古い家がもし注文住宅だった場合、土地だけ取得費がわからないときもあります。注文住宅の場合、建物取得費は新築当初の請負工事契約書から減価償却計算を行って求めます。
減価償却費が請負工事金額の95%に達している場合には、建物取得費は「請負工事金額の5%」です。
土地の購入額だけがわからないときは、「譲渡価格(売却価額)から建物取得費を控除した額」に5%を乗じたものが土地取得費となります。
土地だけ購入額がわからないときの土地取得費の求め方は以下の通りです。
・土地取得費=(譲渡価額-建物取得費)×5%
・取得費=土地取得費+建物取得費
不動産の売却では、建物に消費税が発生し、土地には消費税が発生しないのが原則です。
まず、例外として個人がマイホームなどの非事業用の不動産を売却した場合は、建物に消費税は発生しないことになっています。そのため、個人がマイホームや親の実家を売る場合は、消費税のことを考えなくて大丈夫です。
一方で、個人や法人に関わらず、事業用不動産を売却する場合には、原則通り建物に消費税が発生します。
ただし、古家付き土地の場合、建物価格がゼロ円であるため、消費税は生じないことになります。建物価格がゼロ円で評価され、建物簿価が備忘価格(1円)しかない場合、古家付き土地で売却しても消費税は発生しないということです。
建物の時価がゼロ円であることを証明するには、売却時に不動産鑑定士による鑑定評価書を取得しておくことが望ましいといえます。
以上、古家付き土地の売却について解説してきました。
古家付き土地の売却では、「契約不適合責任を全て免責する」、「ゴミは処分しておく」などの注意点があります。
古家付きの解体費用は、一般的な広さの木造戸建て住宅であれば150万円程度です。
個人が住宅を売却したときは、譲渡所得が発生している場合には税金が生じます。
事業用不動産の古家付き土地を売却した場合、建物価格がゼロ円で評価され、簿価も備忘価格しかない場合には消費税は課税されないことになります。
古家付き土地の売却方法がわかったら早速、売却の準備に取りかかってみましょう。
(記事は2022年1月1日時点の情報に基づいています。)
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