増大する維持管理費

空き家には大きく分けて「税金」と「維持管理費用」という2つの経済的コストがかかります。
「税金」についての詳細は「相続した不動産にかかる費用は?名義変更・登記から売却まで整理」をお読みください。

もうひとつの「維持管理費用」は、建物を良好な状態で維持するためのコストで、主に次のようなものがあります。

①光熱費(水道、電気、ガスなど)
②火災保険料
③除草や庭木の剪定(せんてい)の費用
④清掃、ポストの確認、空気の入れ替えなど
⑤修理費・修繕費
⑥交通費(電車賃やガソリン代、高速道路料金など)
⑦その他(防犯設備、空き家管理サービスなど)

なかには、自分で行えば費用がかからない維持管理もありますが、全体としては、光熱費のように少額でも継続的にかかるコストと、修繕費のように突発的に起こると負担額も大きいコストがあります。

修繕費が高いからといって、そのままにしておくわけにもいきません。なぜなら、老朽化が原因で、屋根瓦や外壁が落下したり塀が倒れたりして、人やものを傷つけてしまった場合、所有者は民法上の「工作物責任」を負うことになり、多額の損害賠償を請求されることもあるからです。

毎年の維持管理の費用は、グラフのように幅広く分布していますが、空き家を所有している限り、コストは毎年かかります。1年に数万円でも10年では数十万円、1年に数十万円かかると10年では数百万円もの負担になってしまいます。

国土交通省の空家実態調査(以下、同調査)によると、実家を相続した場合、約3分の2の人がそのまま空き家にしています。

しかし空き家にも固定資産税、都市計画税といった税金や、清掃・庭木の剪定・修理などの維持管理費がかかります。同調査によると、年間の維持管理に要する費用は、5万円未満という回答が48.9%と約半数ある一方、5万円以上という回答も42.1%あり、その中には20万円以上50万円未満(10.0%)、50万円以上(2.2%)など高額な費用を負担しているケースもあります。これらは保有を続ける限り毎年のコストとして空き家の所有者にのしかかってきます。

目に見えないコストも

空き家のコストには、経済的コストだけではなく、次のような目に見えないコストもあります。

①近隣からの苦情
②部外者の侵入(植物、昆虫、動物、人が入り込むことも…)
③犯罪の不安(破壊、盗難、放火など)
④災害時の被害や、災害に対する不安
これらは「精神的コスト」と捉えられ、積み重なると精神的な負担や不安感が増大する可能性も高まります。

コスト減の工夫を紹介

コストがかかると言っても、やはり愛着のある実家。できるだけ手放したくないという人もいるでしょう。

そのためには、空き家のコストを少しでも抑える工夫も大切です。ひとつひとつのコストを減らせるかどうかを検討し、できることから実施していきましょう。コストダウンに向けたポイントについて、具体例を紹介します。

【電気代】

電気は契約アンペア数を落とせれば基本料金を下げられます。

例えば、関東地方で東京電力と契約(従量電灯B)している場合、基本料金は40アンペアの場合1,144円ですが、10アンペアに変更すると286円に下がります。1年では10,296円(税込み)のコストダウンができます。

【水道代】

水道は解約するとコストダウンができます。空き家になった実家に行く際には、ポリタンクやペットボトルで水を持っていくのも良いですが、多くの市町村では、水道課などに一時使用の連絡をして、1カ月分の基本料金を支払えば水道を使用できます。

たとえば、埼玉県川越市の場合、1カ月の上下水道基本料金は638円、1年では7,656円かかりますが、仮に3カ月に1回のペースで実家に行く場合は、4回で4カ月分の2,552円となるので1年で5,104円のコストダウンになります。(水道口径20㎜の場合)

【火災保険料】

火災保険も、万が一の際に建て替える計画がなければ、保険金額を下げたり、付保率を低くすることで保険料を抑えられます。実際には保険会社によって取扱い条件が異なるため、各社にお問合せ下さい。

【空き家管理サービスの利用】

最近増えている空き家管理サービスは、会社ごとにサービス内容はさまざまです。ある会社では、毎月1回の訪問で、外部の目視点検、敷地内のごみ処理、通気や換気、ポストの確認などを行い、写真付きの報告書を送付してくれます。

国土交通省の「平成26年空家実態調査」によると、空き家管理サービスを利用している人の利用料は、月に1,000円から10,000円の範囲が70.6%となっています。

特に空き家が遠方にある場合、交通費などを考えると、サービス会社を利用した方がかえってコストがかからず、時間も節約できます。費用対効果を比較しながら検討してみるのもよいでしょう。

このように、ひとつひとつの金額が小さくても、積み重ねればまとまったコストダウンを図れます。
その他にも、建物の劣化を遅らせることで、コストがかかりづらくする工夫もあります。

例えば、1階の畳のうち、数枚は敷かずに立てかけておく、押入や部屋の建具は開けておく、雨戸も数枚は開けておく、といったことは、床下や部屋の空気の対流を促すので結露対策として効果的です。

さらに、将来の活用や売却に備えて、屋内にある家財道具などは少しずつ処分を進めしょう。家庭ごみとして処分すれば、無料や安価な金額で済みますが、片づけきれずに業者などに廃棄処分を依頼した場合、多額の費用がかかります。早めの片づけは、将来のコストを抑えることにつながります。

コストダウンと将来計画の両立を

空き家は、相続した実家の最終形ではありません。空き家のまま何年も維持することは経済的にも精神的にも負担が続くことになります。良好な状態で空き家を維持しながらも、将来の活用や売却など次のステップへの可能性を探ることが必要になります。

空き家を保有している状態は、次のステップへの準備と気持ちの整理の時間と捉えることもできます。

そのために事前に空き家のコストを知り、コストダウンと適正な管理を心がけるようにすることが大切です。

(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)