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空き家の放置は雨漏りや空き巣、不法投棄や不審火など危険がいっぱい

――現在、空き家が増えている原因と空き家の問題点を教えてください。

高齢化社会が進み、空き家が増え続けています。現在、日本の空き家の数は、849万戸(平成30年度住宅土地統計調査)。平成25年の調査に比べると30万戸増加し、過去最高の数字となっています。一番の原因は人口減少。1世帯で2軒の空き家持つ時代になりました。所有者が亡くなったり、高齢者施設などへ入居したりするなどで空き家になるケースがほとんどです。高齢化率の更なる上昇により、空き家の増加傾向は今後も当面変わらないでしょう。

空き家を放置する問題点は数多くありますが、まず劣化が早く進むこと。住んでいれば気がついて手入れする雨漏りや屋根瓦の破損、外壁のひび割れなど、ちょっとしたトラブルを放置することで、家屋の劣化が早まってしまうのです。さらにごみの不法投棄の対象になったり、悪臭、害虫や雑草が増えるなど衛生面でも問題があります。不審火や放火の危険性、また知らぬ間に人が住み着いたり、大麻の栽培がおこなわれていたといったニュースが報じられるなど、犯罪の温床になるケースだってあります。資産価値が低下するのはもちろん、近隣とのトラブルも生じ、将来の売却の障害になることもあります。

――空き家管理を依頼される方が増えているとのことですが、きっかけはあるのでしょうか?

平成27年の「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下空家法)が施行されたことでしょうか。空家法には、空き家の適正管理をしない所有者に対して、市町村が助言、指導、勧告といった行政指導を行い、そして勧告しても状況が改善されなかった場合には命令を出すことができるようになりました。

命令に従わなければ、最大50万円以下の過料に処される場合もあります。過失による失火の場合は損害賠償を負わなくて良い(重大な過失がある場合を除く)という失火責任法という法律がありますが、自治体から空き家の適切な管理を行っていない「特定空家等」とされてしまうと、重大な過失があるとして賠償責任が生じるケースもあります。さらに、特定空家等は固定資産税の減免制度を受けられなくなり、当該宅地は非住宅用地となることから固定資産税が最大3倍~4倍程度にまで上がってしまうので注意が必要です。

特定空家等

  1. 倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある状態
  2. アスベストの飛散やごみによる異臭の発生など、著しく衛生上有害となるおそれがある状態
  3. 適切な管理がされていないことで著しく景観を損なっている状態
  4. その他、立木の枝の越境やすみついた動物のふん尿などの影響によって、周辺の生活環境を乱している状態

――「日本空き家サポート」に管理を依頼する人が、売却せずに空き家として所有しているのはどんな理由でしょうか?

所有者である親が施設に入居するなどして健在の場合や、親が亡くなった後、相続はしたけれど実家に思い入れがあってなかなか手放せない人、将来の売却に備えて資産価値を維持しておきたいなどがあります。近隣への配慮から依頼される方も多いです。

「この家、売ろうかどうしようか……」という将来への漠然とした不安を抱えながらも、とりあえず所有されている方も多いですし、遺産分割協議が整うまで管理を依頼されることもあります。日本空き家サポートに管理を依頼される目的は、貴重な休日を潰して、費用をかけてまで遠方の実家の空き家の様子を見に行くより、定期的な管理を依頼した方が費用対効果が高いと判断されているようです。

空き家管理プランは、一戸建て専用プランでライト5500円(税込み、月1回巡回管理・屋外のみ約30分)、スタンダード11000円(税込み、月1回巡回管理・屋外および室内約60分)、スタンダードプラス14300円(税込み、月2回巡回管理・屋外および室内約60分+屋外約30分)の3種類を用意しています。全てのプランに災害等緊急時無料点検が付帯していて、管理看板を設置しての近隣クレーム等の一次対応も行います。

空き家管理の全国ネットワーク「日本空き家サポート」を運営する株式会社L&F代表の森久純さん。「売却するのか活用するのか住み続けるのか、将来の選択肢を残しておくためにも、資産価値を維持できるよう空き家を定期的に管理していくことが大切です」といいます
空き家管理の全国ネットワーク「日本空き家サポート」を運営する株式会社L&F代表の森久純さん。「売却するのか活用するのか住み続けるのか、将来の選択肢を残しておくためにも、資産価値を維持できるよう空き家を定期的に管理していくことが大切です」といいます

所有者の思い出も大事に 動画で管理・報告

――管理サービスの内容を教えてください。

当社の審査をクリアした地元の優良不動産関連企業を「空き家サポーター」と認定し、空き家サポーターが月に1回ないしは2回、あるいは隔月で空き家を巡回します。具体的には建物の劣化状況などの確認、エントランス周囲等の掃き掃除、雑草除去、ごみ回収、郵便物の回収・転送などをします。室内に関しては、押し入れと全室の窓を開放し、空気の入れ替えを行います。

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水道契約がされている場合は、蛇口を開放、通水し、錆付着や臭気発生の予防を行います。閉栓されている場合は、20リットル程度のポリタンクを持参し排水トラップへ注水します。カビ防止のため、水分はしっかり拭き取り、室内の簡易清掃も実施。天井、床、壁面に雨漏り跡やカビ発生や侵入者等の形跡がないかを確認します。緊急に補修が必要な場合は、簡易的な一次対応を行います。そして、この1時間の作業の様子をお客様のマイページで写真やテキストだけでなく、動画でもレポート配信します。レポートは3営業日以内に配信し、お客様はスマートフォンやパソコンでいつでも確認可能です。

巡回した際の記録は動画や画像などでも報告してもらえる(L&F提供)
巡回した際の記録は動画や画像などでも報告してもらえる(L&F提供)

――利用者に喜ばれるのはどんなサービスですか?

動画はマルチデバイス対応なので、離れた家族と複数名で見ながら家の将来を相談できるところが好評です。「入院している母に毎月見せている」という方もいます。月に1回、動画が届くので、毎月家のことを考えるきっかけにもなっているようです。動画はダウンロードもできるので思い出として残しておく方も多いですね。

私たちは建物だけでなく思い出も一緒に管理しているんです。仏壇に手を合わせ、遺影には頭を下げます。報告も「庭の桜が芽吹いています」など、ちょっとした状況の変化のコメントも付け加えます。地元を離れた方に代わり、家を守るという思いで管理しているので喜んでいただけます。サービスを開始した7年前から一度もクレーム解約はありません。

――空き家サポーターの方は、どのような方が選ばれるのですか?

不動産管理業務に精通した地場の不動産・住宅関連企業です。企業並びにそのグループ企業が直接雇用する人員のみが管理作業を行うことが可能です。問題が生じたときに、責任の所在を明らかにするためにも管理作業の外注はしません。地場の不動産業者に依頼するのは、管理に関する専門性が高いことだけでなく、売買、賃貸、リフォーム、解体等、空き家の将来に関する様々な案件にワンストップで対応できるからです。不動産業者にとっても、社会貢献性が高く、次世代オーナーと接点が持てるという点でメリットも高く、空き家サポーターを希望する企業が増えています。

庭木の枝が隣家へ越えていないか、家の著しい腐食等がないかなどを確認してくれる(L&F提供)
庭木の枝が隣家へ越えていないか、家の著しい腐食等がないかなどを確認してくれる(L&F提供)

相続した家を「負の遺産」にしないために資産価値を維持

――管理サービスを利用していたことで、実家のリスクを回避できた事例はありますか?

水漏れやシロアリの被害を水際で食い止め、劣化を防ぐケースや、台風など自然災害後の危険ヵ所対応など様々な事例がありますが、庭木の越境など近隣とのトラブルになりやすい事象について早めに対応できることも、リスク回避という点では多い事例ですね。管理している空き家には、空き家サポーターの電話番号と、空き家サポーターの情報にリンクできるQRコードを明記した「巡回管理中」の管理看板をつけています。これによって空き巣などの抑止力になっていると思います。いつ巡回にくるかわからないので泥棒も入りづらい。何かあれば連絡できる先があると近所の人も安心です。

また、管理看板を見て、買いたいという人から連絡があり、売却につながったケースもあります。管理物件は、物件を探している人に資産価値が維持されていると判断されるようです。

――空き家を所有する上で、気をつけるべきことを教えてください。

まず、空き家の出口を決めることです。売るのか貸すのか使うのか。その方針が決まればそれに応じたサービスを活用し、素早く行動を起こすことです。動くのは早ければ早い方がいい。空き家になった瞬間、もっといえば空き家になる前から“家の終活”について考えておく必要があるでしょう。

それは親が認知症になって、意思能力を失ってしまった場合、親名義の不動産を活用したり、売却したりすることができなくなってしまうからです。認知症が重度の場合は成年後見制度を利用するしか方法はありませんが、親が必要としている医療費や介護費用を捻出できないなど正当な理由がない限り、空き家になっている自宅の売却が裁判所に認められないこともあります。そうなる前なら家族信託を利用することができます。いずれにしても空き家の出口が決まるまでの間は、きちんとした管理を行っておくことが重要なのは言うまでもありません。

「日本空き家サポートの空き家管理サービス」

L&F社が、全国47都道府県の不動産会社159社と連携して、空き家の定期巡回をして管理するサービス。屋外の庭木や郵便受け、建物の状態、防犯などの確認を行うライトプラン(月額5500円/税込)と室内の換気や水道の通水、雨漏りやカビ確認まで行うスタンダードプラン(月額11000円/同)がある。戸建てだけでなく、マンションの室内を管理するプラン(月額5500円/同)もある。

(記事は2022年12月1日現在の情報に基づきます)

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