親から子に土地の名義変更 贈与税はいくら? 計算方法と税額をおさえる方法を解説
土地の贈与税は、名義変更や格安で購入した時にもかかります。では、土地の贈与税はどのように計算するのでしょうか。贈与税がかからないようにするコツもあわせて、税理士が解説します。
土地の贈与税は、名義変更や格安で購入した時にもかかります。では、土地の贈与税はどのように計算するのでしょうか。贈与税がかからないようにするコツもあわせて、税理士が解説します。
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生存中の個人から財産をもらったときは贈与税の対象になります。この財産とは現金だけでなく土地などの不動産や株式なども含まれます。では、どのような場合に土地の贈与になるのかを紹介します。
A名義の土地を無償でB名義の土地に変更をした場合、財産がAからBに無償で移転するため贈与になります。
AとBの共有名義になっている土地の持分を無償で変更した場合、価値が増加した部分は贈与になります。
親などの親族から土地を著しく低い価格で譲り受けた場合、土地の時価と実際に譲り受けた価格の差額は贈与とみなされて贈与税がかかります。目安として時価の約80%以上であれば「著しく低い価額」にならないとされていますが、一義的な定義があるわけではないので、慎重に検討する必要があります。
共有の土地を分筆した場合(いくつかの土地に分けて登記すること)、分筆後の土地の価値の割合が共有持分の割合と異なるときは贈与になります。
借入の返済を負担してもらうことを前提に土地を贈与する場合は負担付贈与になります。負担付贈与は、土地の通常の取引価格(相続税評価額ではありません)から借入の残債分を差し引いた金額が贈与税の対象になります。
贈与税の課税方法は大きく分けて「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」があり、受贈者は贈与者ごとに課税方法を選択することができます。
暦年課税制度とは、暦年(1月1日~12月31日)ごとに贈与を受けた金額を合計し、その贈与を受けた金額の合計額が110万円(基礎控除)を超えた場合に贈与税がかかります。
【暦年課税の計算式】
贈与税=(贈与財産の合計-110万円)×一定の税率(10%~55%)
なお、暦年課税は「特例贈与」または「一般贈与」に分類され、贈与税率が異なります。特例贈与は父母や祖父母などの直系尊属からその年の1月1日において18歳以上(※1)の子や孫(直系卑属)への贈与のことをいいます。そして、一般贈与は特例贈与以外の贈与のことをいいます。
下記の表は贈与税の速算表です。同じ額の贈与でも、一般贈与は特例贈与よりも贈与税が高くなります。
例えば、700万円の贈与をした場合、
特例贈与は(700万円-110万円)×20%-30万円=88万円
一般贈与は(700万円-110万円)×30%-65万円=112万円
になります。
(※1)2022(令和4)年3月31日以前の贈与により財産を取得した場合は20歳以上
土地を贈与した場合は路線価方式または倍率方式で土地を評価します。どちらの方式に該当するかは国税庁のホームページで確認することができます。
路線価方式における路線価(※2)は道路に面した土地1㎡当たりの評価額のことを指し、「路線価×補正率×地積」で評価することができます。
また、倍率方式は「固定資産税評価額(※3)×倍率(※2)」で評価することができます。
(※2)路線価方式による路線価または倍率方式による倍率の数字は国税庁のホームページから確認できます。
(※3)固定資産税納税通知書、固定資産評価証明書、名寄帳などから固定資産税評価額を確認します。
次に「相続時精算課税制度」を解説します。2024年1月から年110万円の基礎控除枠が新設された注目の制度です。
相続時精算課税制度とは、年間110万円まで贈与税がかからない「基礎控除」と、それとは別枠で累計2500万円まで贈与税がかからない「特別控除」という二つの控除を併せ持つ制度です。
ただし、基礎控除を除いた贈与の累計が特別控除の2500万円を超えると、一律20%の贈与税が課税されます。
原則として贈与した年の1月1日において60歳以上の父母や祖父母などの直系尊属から、同年1月1日において18歳(※1)以上の子や孫に対して贈与する場合に選択できます。また、この制度の特徴として、贈与者および受贈者間で一度この制度を選択すると暦年課税制度には戻ることができないため、注意が必要です。
【相続時精算課税の計算式】
「〈1年間の贈与額-年110万円〉の累計額-2500万円)×20%」
土地の評価方法については、暦年課税制度でも相続時精算課税制度でも変わりません。
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相続の相談が出来る税理士を探す上記で紹介した二つの贈与税の課税方法を踏まえた上で、土地に贈与税がかからないようにするためにはどうしたらよいかを説明します。
土地の評価額は高額になりやすいため、年間110万円までしか非課税にならない暦年課税だと贈与税が高額になります。一方、相続時精算課税を選択すれば、年間110万円の基礎控除に加え、2500万円まで贈与税が課税されません。従って、評価額の高い土地を贈与をする場合には、一般的に相続時精算課税の方が贈与税を低く抑えることができます。
婚姻期間が20年以上の夫婦間で自宅の贈与があった場合は、一定の要件に該当すれば2000万円まで贈与税の非課税を受けることができます。婚姻20年未満の夫婦間、親か子への贈与ではこの制度は使えません。
土地の贈与税については以下のような注意が必要です。
土地を贈与すると不動産取得税、名義変更時に登録免許税が課税されます。
不動産取得税は「固定資産税評価額×1/2(一定の場合は1/2はない)×3%(2026年3月31日まで)」が課税されます。
登録免許税は「固定資産税評価額×2%」が課税されます。
なお、土地を相続するときは不動産取得税が非課税、登録免許税が固定資産税評価額×0.4%になるため、贈与の方が不動産取得税及び登録免許税の税負担は重くなります。
相続時精算課税により贈与した財産は、年間110万円の「基礎控除」を除き、相続財産に加算して相続税を計算しなければなりません。そのため、2500万円の控除枠については贈与税の節税にはなりますが、相続税の節税にはなりません。
暦年課税を選択した場合、相続が発生する前3~7年以内(※4)の贈与は相続財産に加算して相続税を計算しなければなりません。
そのため、亡くなる直前に土地を贈与しても相続財産にその贈与財産を加算するため、相続税の計算には影響を与えません。ただし、相続時に被相続人から財産を取得していない人は相続が発生する前3年以内に贈与を受けても、相続財産に加算する必要はありません。
(※4)この期間は、2023年までは「3年以内」が対象でしたが、2024年以降の生前贈与については「7年以内」へと順次延長されます。
暦年贈与で、親から18歳以上の親に1000万円の土地を贈与した場合、「特例贈与」となり、「(1000万円-基礎控除110万円)×30%-90万円=177万円」の贈与税がかかります。
相続時精算課税制度を選択した場合は、贈与税はかかりません。ただし、年110万円の基礎控除を除く890万円分は相続税に加算されることになります。
暦年課税で土地を贈与した場合は一度に多額の贈与税がかかるため、相続時精算課税を選択した方が贈与税の節税になる可能性は高いでしょう。
ただし、相続時精算課税を一度選択すると暦年課税に戻れないことや、将来相続財産に加算しなければならないことを考慮する必要があります。
土地の贈与について暦年課税と相続時精算課税のどちらかを選択するかは、贈与税だけでなく、贈与者の年齢や資産状況など相続のことも併せてさまざまな要素を検討する必要がありますので、土地を贈与する場合は税理士に相談することをお勧めします。
土地を配偶者や子供などに渡す場合、土地の価値や利用状況、贈与者の資産状況又は贈与者と受贈者の関係などを考慮して贈与と相続のどちらが得か検討する必要があります。
【相続の方が有利になるケース】
・基本的に暦年課税による贈与よりも相続の方が低い税率で土地を移転できるため、土地などの財産は相続時に渡した方が有利になります。
・土地を贈与した場合、その土地について小規模宅地等の特例が使えません。
【贈与の方が有利になるケース】
・暦年課税で土地を贈与した場合、贈与後一定期間内に相続が発生しなければ相続財産にその贈与財産を加算しなくてよい。
・相続財産に加算する贈与財産は贈与時の時価であるため、将来値上がりしそうな土地の場合は値上がり分を抑制することができます。
・居住用の土地の場合、贈与税の非課税などの特例が使える場合があります。
・土地が賃貸用である場合、賃料による所得税を抑制することができます。また、賃料による現預金の増加がなくなるため、相続財産の増加を抑制することができます。
・生前中に自分の意志で財産を渡すことができるため遺言書の代わりになります。
土地の移転は評価額または取引価額が高額になるため税金の負担額も高額になりがちです。しかし優遇措置もたくさんあるため、条件次第では税金の負担額を減らすことができるかもしれません。土地の移転を検討する場合は、早めに不動産に強い税理士に相談して最適な方法を検討してみてください。
(記事は2024年4月1日時点の情報に基づいています)
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