目次

  1. 1. 土地に贈与税がかかる主なケース 名義変更は?
    1. 1-1. 名義変更したとき
    2. 1-2. 共有持分を変更したとき
    3. 1-3. 親族から安く土地を譲り受けたとき
    4. 1-4. 共有の土地の分筆をしたとき
    5. 1-5. 負担付贈与をしたとき
  2. 2. 土地の贈与税の計算①:暦年課税制度
    1. 2-1. 暦年課税制度とは
    2. 2-2. 土地の評価方法
  3. 3. 土地の贈与税の計算②:相続時精算課税制度
    1. 3-1. 相続時精算課税制度とは
    2. 3-2. 土地の評価方法
  4. 4. 土地に贈与税がかからないにようにするには?
    1. 4-1. 相続時精算課税制度を使う
    2. 4-2. 贈与税の配偶者控除を使う
  5. 5. 土地の贈与税の注意点
    1. 5-1. 贈与税が非課税でも不動産取得税や登録免許税がかかる
    2. 5-2. 相続時精算課税で贈与税がかからなくても相続税の対象になる
    3. 5-3. 死亡日以前3年間の贈与は相続財産に加算する
  6. 6. まとめ

生存中の個人から財産をもらったときは贈与税の対象になります。この財産とは現金だけでなく土地などの不動産や株式なども含まれます。では、どのような場合に土地の贈与になるのかを以下に簡単に紹介します。

A名義の土地を無償でB名義の土地に変更をした場合、財産がAからBに無償で移転するため贈与になります。

AとBの共有名義になっている土地の持分を無償で変更した場合、価値が増加した部分は贈与になります。

親などの親族から土地を著しく低い価額で譲り受けた場合、土地の時価と実際に譲り受けた価額の差額は贈与とみなされて贈与税がかかります。ここで「著しく低い価額」は、目安として時価の約80%以上であれば「著しく低い価額」にならないとしていますが、一義的な定義があるわけではないので、慎重に検討する必要があります。

共有の土地を分筆した場合(いくつかの土地に分けて登記すること)、分筆後の土地の価値の割合が共有持分の割合と異なるときは贈与になります。

借入の返済を負担してもらうことを前提に土地を贈与する場合は負担付贈与になります。負担付贈与は、土地の通常の取引価額(相続税評価額ではありません)から借入の残債分を差し引いた金額が贈与税の対象になります。

贈与税の課税方法は大きく分けて「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」があり、受贈者は贈与者ごとに課税方法を選択することができます。

暦年課税制度とは、暦年(1月1日~12月31日)ごとに贈与を受けた金額を合計し、その贈与を受けた金額の合計額が110万円(基礎控除)を超えた場合に贈与税がかかります。

【暦年課税の計算式】
贈与税=(贈与財産の合計-110万円)×一定の税率(10%~55%)

なお、暦年課税は受贈者と贈与者の関係および受贈者の年齢により特例贈与または一般贈与に分類され、同じ贈与額でも特例贈与と一般贈与では贈与税率が異なります。

特例贈与は父母や祖父母などの直系尊属からその年の1月1日において18歳以上(※1)の子や孫(直系卑属)への贈与のことをいいます。そして、一般贈与は特例贈与以外の贈与のことをいい、特例贈与と比較して贈与税が高くなります。

例えば、700万円の贈与をした場合、

特例贈与は(700万円-110万円)×20%-30万円=88万円

一般贈与は(700万円-110万円)×30%-65万円=112万円
になります。

(※1)2022(令和4)年3月31日以前の贈与により財産を取得した場合は20歳以上

土地を贈与した場合は路線価方式または倍率方式で土地を評価します。どちらの方式に該当するかは国税庁のホームページで確認することができます。

路線価方式における路線価(※2)は道路に面した土地1㎡当たりの評価額のことを指し、「路線価×補正率×地積」で評価することができます。

また、倍率方式は「固定資産税評価額(※3)×倍率(※2)」で評価することができます。

(※2)路線価方式による路線価または倍率方式による倍率の数字は国税庁のホームページから確認できます。

(※3)固定資産税納税通知書、固定資産評価証明書、名寄帳などから固定資産税評価額を確認します。

次に「相続時精算課税制度」を解説します。

相続時精算課税制度とは、原則として贈与した年の1月1日において60歳以上の父母や祖父母などの直系尊属から同年1月1日において18歳(※1)以上の子や孫に対して贈与する場合に選択できる贈与税の制度になります。

相続時精算課税は、贈与財産の累計が2500万円(特別控除額)までは贈与税がかかりませんが、累計が2500万円を超えると一律20%の贈与税が課税されます。また、この制度の特徴として、贈与者および受贈者間で一度この制度を選択すると暦年課税制度には戻ることができないため、注意が必要です。

【相続時精算課税の計算式】

(贈与財産の価額-2500万円(※4))×20%

(※4)前年以前に既に特別控除額を控除している場合は、その残高が限度

土地の評価方法については、暦年課税制度でも相続時精算課税制度でも変わりません。

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では、土地に贈与税がかからないようにするためにはどうしたらよいかを説明します。

土地の評価額は高額になりやすいため、暦年課税だと贈与税が高額になります。相続時精算課税を選択すれば2500万円まで贈与税が課税されないため、一般的には相続時精算課税の方が贈与税を低く抑えることができます。

婚姻期間が20年以上の夫婦間で自宅の贈与があった場合は、一定の要件に該当すれば2000万円まで贈与税の非課税を受けることができます。

このほか、土地の贈与税については以下のような点も注意が必要です。

土地を贈与すると不動産取得税、名義変更時に登録免許税が課税されます。

不動産取得税は固定資産税評価額×1/2(一定の場合は1/2はない)×3%(令和6年3月31日まで)が課税されます。

登録免許税は固定資産税評価額×2%が課税されます。

なお、土地を相続するときは不動産取得税が非課税、登録免許税が固定資産税評価額×0.4%になるため、贈与の方が不動産取得税及び登録免許税の税負担は重くなります。

相続時精算課税により贈与した財産は、相続財産に加算して相続税を計算しなければなりません。そのため、贈与税の節税にはなりますが、相続税の節税にはなりません。

相続が発生する前3年以内の贈与(暦年課税に限る)は相続財産に加算して相続税を計算しなければなりません。そのため、亡くなる直前に土地を贈与しても相続財産にその贈与財産を加算するため、相続税の計算には影響を与えません。ただし、相続時に被相続人から財産を取得していない人は相続が発生する前3年以内に贈与を受けても、相続財産に加算する必要はありません。

土地の移転は評価額または取引価額が高額になるため税金の負担額も高額になりがちです。しかし優遇措置もたくさんあるため、条件次第では税金の負担額を減らすことができるかもしれません。土地の移転を検討する場合は、早めに不動産に強い税理士に相談して最適な方法を検討してみてください。

(記事は2022年8月1日時点の情報に基づいています)