目次

  1. 1. 遺産分割協議書のひな形
  2. 2. 遺産分割協議書に書き入れるべき項目
  3. 3. 項目別 遺産分割協議書の文例集
    1. 3-1. タイトルと被相続人の表記
    2. 3-2. 前書き
    3. 3-3. 不動産
    4. 3-4. 預貯金
    5. 3-5. 株式
    6. 3-6. 自動車
    7. 3-7. 負債
    8. 3-8. 後に判明した遺産の取り扱い
    9. 3-9. 後書き
    10. 3-10. 日付と署名押印欄
  4. 4. 遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家
    1. 4-1. 弁護士に依頼するケース
    2. 4-2. 司法書士に依頼するケース
    3. 4-3. 行政書士に依頼するケース
  5. 5. まとめ

まずは、下記のひな型で遺産分割協議書のイメージをつかみましょう。朝日太郎(父)、朝日和子(母)、朝日一郎(長男)及び朝日花子(長女)の4人家族を想定した協議書です。

遺産分割協議書のひな型

遺産分割協議書の書き方については、以下の記事も参考にしてください。

【関連】自分で作成できる! 遺産分割協議書の書き方 ひな型・文例と一緒に解説 注意点や活用方法も紹介

遺産分割協議書に書き入れるべき代表的な項目は下記のとおりです。なお、被相続人の遺産に含まれない項目を記載する必要はありません。

  • タイトル
  • 被相続人の表記
  • 前書き
  • 不動産
  • 預貯金
  • 株式
  • 自動車
  • 負債
  • 後に判明した遺産の取り扱い
  • 後書き
  • 日付・署名押印欄

【文例】

               遺産分割協議書
被相続人の表示
氏名     朝日太郎
生年月日   昭和〇年〇月〇日
死亡日    令和〇年〇月〇日
本籍地    東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番地
最後の住所  東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番地

【解説】
「遺産分割協議書」というタイトルに続いて、氏名、生年月日、死亡日、本籍地、最後の住所地などで被相続人を明確に特定しましょう。戸籍謄本や住民票などを参考に正確に記載することが大切です。

【文例】

上記被相続人の遺産について、共同相続人朝日和子、朝日一郎及び朝日花子は下記のとおり遺産分割協議を行い、これに合意した。

【解説】
相続人全員の名前を記し、相続人全員で協議した結果を記載した書面であることを記載しましょう。

【文例】

相続人朝日和子は、次の遺産を取得する。
1 土地
所  在 〇〇区〇〇町〇丁目
地  番 〇番〇
地  目 宅地
地  積 〇〇.〇〇平方メートル

2 土地(共有持分)
所  在 〇〇区〇〇町〇丁目
地  番 〇番〇
地  目 宅地
地  積 〇〇.〇〇平方メートル
持分2分の1

3 建物
所  在 〇〇区〇〇町〇丁目〇番地
家屋番号 〇〇
種  類 居宅
構  造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 〇〇.〇〇平方メートル
    2階 〇〇.〇〇平方メートル

4 マンション(区分所有建物)
(一棟の建物の表示)
所  在  〇〇区〇〇町〇丁目 〇番地〇
建物の名称 〇〇
(専有部分の建物の表示)
家屋番号  〇〇
建物の名称 〇〇
種  類  居宅
構  造  鉄筋コンクリート造〇階建
床面積  2階部分 〇〇.〇〇平方メートル
(敷地権の目的たる土地の表示)
土地の符号 〇
所在及び地番 〇〇区〇〇町〇丁目〇番地
地  目 宅地
地  積 〇〇〇.〇〇平方メートル
(敷地権の表示)
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 〇〇分の〇〇

5 下記土地の借地権(賃貸人〇〇)
所  在 〇〇区〇〇町〇丁目
地  番 〇〇番
地  目 宅地
地  積 〇〇.〇〇平方メートル

【解説】
いずれも登記事項証明書(法務局で取得可)に沿って正確に記載します。借地権の場合は契約書の内容も確認して記載するようにしましょう。

土地は所在、地番、地目と地籍、建物は所在、家屋番号、種類、構造と床面積、マンション(区分所有建物)は一棟の建物の表示、専有部分の表示、敷地権の目的である土地の表示と敷地権の表示などです。共有持分の場合は、上記の各事項を記載した下に「持分〇分の〇」と記載しましょう。

また、不動産は比較的記載漏れが生じやすい遺産です。当時把握していなかった不動産(私道や未登記建物など)があとに判明するケースはめずらしくありません。記載漏れがないように、固定資産税の納税通知書や名寄帳、権利証、公図などのさまざまな手段で不動産の有無を丁寧に確認することが大切です。

【文例】

相続人朝日一郎は、次の遺産を取得する。
1 〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇
2 △△銀行 △△支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇

【NG文例】

〇〇銀行の預金(口座番号〇〇〇〇)1234567円

【解説】
通帳や残高証明書などを参考に金融機関名、支店名、種別(普通預金か定期預金等)および口座番号等を正確に記載しましょう。NG文例は支店名や種別の記載がなく不十分です。また、残高を記載することもできる限り避けるべきです。相続開始後の出金や利息などで残高に差異が生じた場合に修正の手間を要するからです。

【文例】

相続人朝日花子は、次の遺産を取得する。
1 〇〇株式会社 普通株式 〇万株
2 〇〇証券〇〇支店(口座番号〇〇)預かりの以下の株式
〇〇株式会社 株式 1000株

【解説】
残高証明書などを参考に銘柄や株式数を正確に記載しましょう。証券口座で保有する株式については、証券会社名、支店名や口座番号等も記載します。

なお、未受領の配当金がある場合、証券会社からその記載を求められることがあるため、未受領の配当金の有無や記載の要否を証券会社に予め確認しておくと良いでしょう。

【文例】

相続人朝日一郎は、次の遺産を取得する。
普通乗用車1台
車  名 〇〇
登録番号 東京〇〇〇あ〇〇-〇〇
車体番号 第〇〇〇〇号
名義人  朝日太郎

【解説】
車検証などを参考に、車名、自動車登録番号や車台番号などを正確に記載しましょう

【文例】

相続人全員は、被相続人の甲銀行に対する金銭消費貸借契約に基づく借入金債務のうち、相続人朝日一郎及び相続人朝日花子の承継した部分について、相続人朝日和子が免責的に引き受けることに合意した。

【解説】
負債は、各相続人が相続分に応じて分割承継し、遺産分割の対象にならないのが原則です。上記文例のとおり、特定の相続人のみが負担する旨の合意をすることは可能ですが、債権者(上記の文例では、甲銀行)が承諾しない限り、債権者はその合意に拘束されないので注意してください。負債を遺産分割協議書に盛り込むには工夫が必要ですので、弁護士に相談することをお勧めします。

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【文例】

本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産については、相続人朝日和子が相続する。

【解説】
遺産分割協議書の作成後に新たな遺産が判明することはめずらしくありません。そのため、判明した遺産の取り扱いを決めておくとよいでしょう。

上記文例は特定の相続人が取得する内容にしていますが、各相続人が法定相続分に沿って取得する内容や別途協議することとする内容でも構いません。

【文例】

以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を3通作成し、各自1通を保管する。

【解説】
相続人全員による協議が成立した結果として協議書を作成した事実や作成した協議書の通数を記載しましょう。作成枚数に決まりはありませんが、各相続人が遺産分割協議書の原本を保管できるように相続人の人数分作成することが望ましいです。

【文例】

令和〇年〇月〇日
住 所 東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番地
相続人 朝日 和子 印
住 所 東京都〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
相続人 朝日 一郎 印
住 所 神奈川県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
相続人 朝日 花子 印

【解説】
住所は印字でも構いません。遺産分割協議書を作成した日付を記入したうえ、各相続人が氏名を自書し、実印による押印をしましょう。

法律上、実印であることは必須ではないものの、金融機関等の相続手続では実印による押印を求められる場合が多いですし、後日の紛争を防止するという意味でも実印で押印すべきです。各相続手続きで提出を求められますので、印鑑証明書も添付しましょう。

なお、銀行や証券会社など各社専用の用紙への署名と押印を求められる場合もあるので、あらかじめ確認しておき、協議書への押印と同時に行えるように準備しておくことをお勧めします。

遺産分割協議書に契印や割印は必要か
契印とは、遺産分割協議書が複数ページになる場合、各ページが連続していることを証明するためページの境目などに押す印のことです。ページ数が多い場合、毎ページの境目に契印を押すのは大変ですので、製本テープで製本したうえで契印を押すと良いでしょう。

割印は、遺産分割協議書を2部以上作成する場合、それぞれが同一内容であることを証明するため各協議書のすべてにまたがるように押す印のことです。契印や割印は必須ではありませんが、文書の抜き取りや差し替えを防ぐため、少なくとも契印は押すのが望ましいです。

遺産分割協議書の訂正方法や捨印については、以下の記事も参考にしてください。

【関連】遺産分割協議書の捨印の意味とその効果は? 訂正方法もあわせて解説

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遺産分割協議書の作成は弁護士や司法書士、行政書士に依頼することが可能です。下記のとおり、ケースによって依頼すべき専門家が異なりますので、参考にしてみてください。

すでに相続人間で争いが生じている、あるいは相続人間での争いが見込まれる場合には弁護士に依頼するのが良いでしょう。行政書士や司法書士は、遺産分割の場面においてほかの相続人との交渉ができないからです。

また、争いが生じていない場合でも弁護士に依頼することは可能です。弁護士は遺産分割協議書の記載が不適切であったために生じた紛争を取り扱っているため、その経験を踏まえつつ、適切なアドバイスをすることが可能です。

相続人間ですでに合意ができており、遺産に不動産が含まれる場合には司法書士に依頼するのが良いでしょう。司法書士は登記の専門家ですから、不動産の相続登記と遺産分割協議書の作成を一括して対応してもらえます。

相続人間ですでに合意ができている場合、行政書士への依頼も選択肢の一つです。内容の複雑さや費用などを比較して弁護士と行政書士のいずれにするかを決めると良いでしょう。

まずは自分で遺産分割協議書を作成してみたい場合は上記文例をぜひ参考にしてみてください。

作成が難しい場合や不安がある場合は、弁護士に依頼するのが無難です。上記のとおり、相続人の間で主張に相違があって争いになる可能性がある場合には弁護士に、争いの可能性がなく相続する不動産がある場合には相続登記の手続きを見据えて司法書士に依頼するのがよいでしょう。

(記事は2022年9月1日時点の情報に基づいています)