相続した外貨預金は日本円で評価しないといけない

外貨預金とは、ユーロや米ドルなど、日本円以外の外国の通貨で金融機関に預けているものをいいます。

相続した外貨預金は、相続が開始した日の時価で評価します。この時価はあくまでも日本円です。日本での相続税は日本円で計算して納税するのがルールだからです。

なお、相続開始日というのは通常、「被相続人が死亡した日」を指します。また、ここでいう「時価」は、相続税法に規定されています。

「相続会議」の税理士検索サービス

相続税申告に強い税理士を探す

北海道・東北

関東

甲信越・北陸

東海

関西

中国・四国

九州・沖縄

相続税での外貨預金の評価方法

相続した外貨預金は、相続税の財産評価基本通達に基づいて評価します。「いつの時点で評価するか」「どんな指標を採用するのか」などに注意しなくてはなりません。

相続開始日の「対顧客電信買い相場(TTB)」で評価する

相続した外貨預金は、相続開始日における最終の「対顧客電信買い相場(TTB)」という為替相場で評価します。TTBというのは、為替相場の一つです。為替相場には、次の3つがあります。

TTM…対顧客電信相場仲値のこと。一般的に「仲値」という。金融機関が顧客と外国為替取引を行うときの当日受け渡し用の基準相場。後述するTTBとTTSの平均値。
TTB…対顧客電信買い相場のこと。顧客が外貨を売るときに使う相場。TTMから手数料分を差し引いた金額となる。
TTS…対顧客電信売り相場のこと。顧客が外貨を買うときに使う相場。TTMに手数料分を上乗せした金額となる。

つまり、相続した外貨預金は「顧客が外貨を売って日本円に換えた日の最終の為替相場」で評価するのです。「相続した外貨預金を相続開始日に日本円に換えたうえで評価する」とイメージすると、わかりやすいかもしれません。

相続開始日に為替相場がないときは「前」の直近日の為替相場で評価

状況によっては、相続開始日に為替相場が存在しないこともあります。「被相続人が祝祭日に亡くなったとき」などです。このようなときは、相続開始日より前の為替相場のうち直近のものを採用します。

たとえば12月31日の休日に被相続人が亡くなったとします。12月29日と12月30日と1月1日に為替相場があったならば、12月30日の最終TTBで外貨預金を評価することになります。

TTBは相続人の取引金融機関のものを使う

為替相場は金融機関ごとに異なります。では、どの金融機関のものを採用すべきなのでしょうか。

一般的には、外貨預金を相続し、相続税を納める相続人が取引する金融機関が公表する為替相場を使います。被相続人の取引金融機関ではありません。複数人の相続人で外貨預金を相続し、相続人ごとに取引金融機関が異なる場合は、それぞれの取引金融機関が公表している為替相場を用いて評価します。

また、一人の相続人が複数の金融機関と取引している場合は、どの金融機関の為替相場を用いてもかまいません。つまり、複数ある金融機関が公表している為替相場のうち、最も低いものを用いて評価しても良いのです。

相続税の申告書への記載方法

外貨預金の評価額は相続税の申告書にどのように記載したら良いのでしょうか。ここで確認してみましょう。

申告書の第11表に記入

相続した外貨預金の情報は、相続税の申告書の第11表に記載します。第11表はこのような形式となっています。

【引用元】第11表「相続税がかかる財産の明細書」(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/r01pdf/45.pdf
【引用元】第11表「相続税がかかる財産の明細書」(国税庁) https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/r01pdf/45.pdf

日本円の預貯金なら、「種類」「細目」「利用区分、銘柄等」「所在場所等」「価額」「取得した人の氏名」「取得財産の価額」に記入します。外貨預金だと、この7つの項目に加え、「数量」「単価」も記載します。

記載例を見てみよう

国税庁が公開している相続税の申告書の記載例を見てみましょう。亡くなった国税太郎さんの保有していた預貯金のうち、国税花子さんが2万800ドルを相続したら、次のように記載することになります。

【引用元】「相続税の申告のしかた(令和3年分用)」(国税庁)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2021/pdf/E06.pdfの97ページより引用して加工
【引用元】「相続税の申告のしかた(令和3年分用)」(国税庁)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2021/pdf/E06.pdfの97ページより引用して加工

TTBの確認方法

相続した外貨預金のTTBを正確に知るなら、金融機関で残高証明を発行してもらうときにTTBもあわせて記載してもらうと良いでしょう。記載が難しい場合でも、問い合わせれば教えてもらえます。また、たいていの大手の金融機関は、自身のウェブサイト上に過去の為替データを掲載しています。そのデータを確認してもかまいません。

外貨預金の相続税に関する注意点

外貨預金の相続税については、次の点に注意しましょう。

納税資金は日本円で準備しよう

外貨預金は、自宅不動産や車などと違い、現金化しやすく、相続手続きも難しくはありません。

ただし、一つ注意があります。それは「日本円で納税しなくてはならない」ということです。外貨預金そのままでは納税に使えません。日本円に換えるか、別に日本円で納税資金を準備しないといけないのです。

また、外貨預金を日本円に換えるときは、申告した外貨預金の評価額とは異なる点にも注意しましょう。実際に日本円で引き出すのは、持ち主が亡くなったときよりあとになります。このとき、換算する際に用いる為替相場は、引き出す日のものであり、相続開始時点のものではありません。

海外の金融機関にある外貨預金は注意が多い

日本の金融機関にだけ外貨預金があるとは限りません。海外の金融機関に外貨預金を預けていることもあるでしょう。このように海外にある財産は見落としがちですが、申告もれをしないように気をつけましょう。

現在、「相続人と被相続人がともに10年以上日本にいない」といった特殊な状況でない限り、海外の財産であっても日本の相続税の課税対象となります。被相続人が日本で亡くなった日本人ならば、海外財産であっても相続税がかかります。

なお、現在、日本を含め世界各国の税務当局が、各地の金融情報を交換しています。つまり、海外の金融機関に預けてある外貨預金の情報も、日本の税務当局は把握しているのです。申告もれは発覚します。

申告もれをしないためには、被相続人の生前の郵便物や記録だけでなく、所得税の申告書に添付されている「財産債務調書」「国外財産調書」を確認すると良いかもしれません。

また、海外の金融機関に預けてある外貨預金は、現地国の相続税がかかることがあります。放置すると二重課税になる可能性にも注意が必要です。

難しいと感じたら税理士に相談を

外貨預金の相続税評価そのものはそれほど難しくありません。ただし、忙しければ簡単な評価も手間に感じるかもしれません。また、海外の金融機関に預けている外貨預金だと、いろいろと注意すべきことがあります。不安に感じたら、税理士に相談すると良いでしょう。

(記事は2021年11月1日時点の情報に基づいています)