金利優遇がある「相続定期預金」 中途解約などの注意点も知っておこう
「定期預金」は誰にとっても身近な金融商品といえるでしょう。その一種で、相続した資産のみを対象としたものが「相続定期預金」です。通常の定期預金とはどう違うのか、利用の仕方やメリットとデメリットについてファイナンシャル・プランナーが解説します。
「定期預金」は誰にとっても身近な金融商品といえるでしょう。その一種で、相続した資産のみを対象としたものが「相続定期預金」です。通常の定期預金とはどう違うのか、利用の仕方やメリットとデメリットについてファイナンシャル・プランナーが解説します。
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銀行などが扱う預金商品には、預け入れ期間が決まっておらずいつでも出し入れできる「普通預金」と、預入期間が決まっていて原則として期間中のお金の出し入れはできない分、普通預金より金利が高い「定期預金」があります。おもに地方銀行や信用金庫などが扱っている「相続定期預金」は、仕組みとしては通常の定期預金と同じなのですが、次の3点が異なります。
つまり「相続した資産を対象にした一定期間金利優遇のある定期預金」といえます。相続によって受け取った資金には、現金・預貯金のほか、生命保険などの保険金や、相続した有価証券(株、債券、投資信託など)や不動産を売却した資金も含まれるのが一般的です。多くの場合、相続定期預金が利用できるのは、相続手続終了後あるいは相続財産を受け取ってから1年以内となっています。ネットバンキングやテレホンバンキング、ATMなどでは利用できず、店頭での手続きが必要です。
以下のようなこまかい条件は金融機関によって違いがあります。
・預け入れ期間
3カ月、6カ月、1年など、中には3年、5年というところもあります。「3カ月または6カ月」など、複数の期間から選べるようになっていることも多く、その場合、期間が長いほど金利が高くなります。
・預け入れられる金額
多くの金融機関は、最低金額が「100万円」で「相続で受け取った額」までを上限としています。金融機関によっては最低額が「10万円」「50万円」「300万円」など、上限額が「3000万円」などのケースもあります。
・金利優遇のパターン
通常の定期預金金利に「+〇%」という形で上乗せ金利が適用される形が主流ですが、金融機関によっては預入期間ごとに「〇%」と固定した金利を適用しています。
・相続定期の利用期間
期間の定めがないところがほとんどです。「〇年〇月〇日まで」と期間が決まっている金融機関でも、期間終了後に金利の見直しを行って新たに期限を設ける形で継続するケースが多いようです。
相続定期を利用する際、被相続人の相続手続きをした金融機関と同じ金融機関に預け入れるのであれば、本人確認書類と届出印で申し込みができます。被相続人の預金を解約して別の金融機関の「相続定期」に預け入れたり、保険金や有価証券・不動産の売却資金を預け入れたりする場合は、本人確認書類、届出印に加えて、遺産分割協議書または遺言書、戸籍謄本などを提出します。預け入れる資産に応じて、それが相続によって得たものであることを証明するための書類も必要です。
では、相続定期の優遇金利はどのくらいなのでしょうか。2020年11月現在、メガバンクの通常の定期預金金利は、スーパー定期(300万円未満)、スーパー定期300(300万円以上)、大口定期(1000万円以上)のいずれも、預入期間にかかわりなく0.002%となっています。
「相続定期」の優遇金利がどのくらいかは金融機関によってさまざまですが、金利上乗せ型だと+0.2~0.4%程度上乗せするところが多いようです。預入額が1000万円だとすると、通常より2万円から4万円ほど多く利息が受け取れる計算です。固定金利型だと金利が1.0%というところもありますが、預入期間が3カ月なので、年換算すると0.25%となり、金利上乗せ型と同程度といえます。いずれの場合も、通常の定期預金と同様に、利息からは約20%の税金が差し引かれます。
「相続定期」はどのような場合に利用するとよいのでしょうか。例えば、相続した資金の使いみちが決まっていない場合に、ひとまず金利優遇のある相続定期に預けて、満期までのあいだに資金計画を立てる、といった使い方ができます。あるいは、相続税の納税にあてるお金を3カ月あるいは6カ月の相続定期に預け入れておくことも考えられます。相続した資産を少しでも増やしたいなら、手間をかけてでも相続定期の金利が高い金融機関を探して預け入れるのもよいでしょう。
ただ、相続定期を利用するにあたっては注意点もあります。1つは、途中で解約すると金利の優遇がなくなるということ。相続定期に預け入れたあとで、相続税の納税資金が足りなくなり、お金が必要になって解約する、といったことにならないよう、預入額や預入期間は慎重に選ばなければなりません。
もう1つは、相続定期を利用することによって、その金融機関から他の金融商品の勧誘を受けるようになることです。金融機関側から見ると、まとまった資金を預けてくれる人は最も望ましい顧客ですから、「相続した資産をより有利に運用しませんか」と言って外貨建ての保険商品や投資信託などを盛んに勧めてくるはずです。
勧められた金融商品が、自分の資金の使い道や運用方針に当てはまっていればよいのですが、商品の仕組みや手数料をよく理解せず勧められるままに商品を購入してしまうと、お金が必要な時に解約できなかったり、高い手数料を支払うことになったりする可能性があります。特に注意したいのが、定期預金と、投資信託・外貨預金を組み合わせた抱き合わせ商品です。定期預金と同時に同額の投資信託・外貨預金を購入することで金利が優遇されますが、優遇された金利で受け取れる利息より、投資信託の購入手数料や外貨預金の為替手数料のほうが高いことが多いからです。相続定期に限らず、金利優遇のある商品は、金融機関がなぜ金利を優遇するのかを理解し慎重に利用しましょう
(記事は2020年11月1日時点の情報に基づいています)
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