目次

  1. 1. 養子縁組とは 主な目的・代表的なトラブル
    1. 1-1. 養子縁組によって発生する法律効果
    2. 1-2. 養子縁組の代表的なパターン
    3. 1-3. 養子縁組に関する代表的な相続トラブル
  2. 2. 孫と養子縁組をした際に起こりやすい相続トラブル
  3. 3. 子どもの結婚相手と養子縁組をした場合に起こりやすい相続トラブル
  4. 4. 結婚相手の連れ子と養子縁組をした場合に起こりやすい相続トラブル
  5. 5. 同性パートナーと養子縁組をした場合に起こりやすい相続トラブル
  6. 6. 節税目的で養子縁組をした場合に起こりやすい相続トラブル
  7. 7. まとめ|養子縁組に関する相続トラブルは弁護士に相談を

養子縁組とは、もともと親子でない個人の間で、法律上の親子関係を発生させることをいいます。

養子縁組をすると、養子と養親の間には直系血族と同一の親族関係が生じ(民法727条)、主に以下の法律効果が発生します。

  • 養子は原則として、養親の氏を称する(民法810条)
  • 養子が未成年の場合、養親に親権が発生する(民法818条2項)
  • 相互に扶養義務が発生する(民法877条1項)
  • 養子は養親の相続権を取得する(民法887条1項) など

養子縁組の主なパターンとしては、以下の例が挙げられます。

  • 孫と養子縁組をする
  • 子どもの結婚相手と養子縁組をする
  • 結婚相手の連れ子と養子縁組をする
  • 同性パートナーと養子縁組をする
  • 節税目的で養子縁組をする など

すべてのパターンに共通して発生し得るトラブルとしては、実子が不満を持ち、遺産分割協議で揉めてしまうケースが挙げられます。
養子縁組とした場合、子の人数が増えるため、他の実子の相続分が減ってしまいます。
そのことに不満を抱いた実子は、遺産分割協議でさまざまな要求を行い、結果的にトラブルへと発展してしまう可能性が高いのです。
そのため、相続を見据えて養子縁組をする場合は、事前に実子の理解を求めるべきでしょう。

次の項目から、発生しやすい相続トラブルの内容と対処法を、養子縁組のパターンごとに解説します。

孫と養子縁組をするのは、主に「孫に遺産をあげたい、相続権を与えたい」という目的によるケースが多いです。
孫の立場のままでは、代襲相続が発生しない限り相続権を得られませんが、養子の立場になれば、実子と対等な相続権を得ることができます。

ただし、孫と養子縁組をする場合には、予想外に相続税が高額になるケースがあることに注意が必要です。
被相続人の孫が養子として相続する場合、孫に課される相続税額は2割加算されます。
参考:相続税額の2割加算|国税庁

そのため、想定していたよりも相続税額が高額となり、納税資金が用意できないという事態になることもよくあります。
孫を養子として相続権を与える場合には、被相続人が生前の段階から、相続税額の具体的なシミュレーションを行っておきましょう。

家や事業を継がせるなどの目的で、子どもの結婚相手(嫁・婿)と養子縁組をするケースもあります。
ただし、子どもの結婚相手と養子縁組をした後、仮に子どもが離婚した場合、元結婚相手との養子縁組に基づく相続権は残ってしまうことに注意が必要です。

養子縁組を解消したい場合には、離縁の手続きが必要です(民法811条以下)。
養子側が離縁を拒否する場合には、裁判に発展するリスクもあることを認識したうえで、養子縁組の是非を検討しましょう。

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結婚相手に連れ子がいる場合、連れ子との絆を深める、あるいは法律上の扶養関係を発生させるといった目的で、連れ子と養子縁組をするケースがあります。

このケースでも、仮に離婚することになった場合、養子縁組を解消するには離縁の手続きが必要となる点に注意しましょう。
元配偶者や連れ子との関係性が悪化している場合には、離縁に関する手続きが紛糾する可能性もあることを踏まえて、本当に養子縁組をすべきかどうかご検討ください。

日本の法律上、同性婚は認められていないため、結婚により同性パートナーに相続権を与えることはできません。
その代わりに、同性パートナーと養子縁組をすることで、養子としての立場での相続権を与えようとするケースがあります。

LGBTに対する理解は、社会一般にかなり浸透してきているものの、理解についてはまだまだ個人差があるのが現状です。
遺産分割協議の場において、LGBTに対する理解の低さなどが原因で無益な争いを生じさせないように、同性パートナーとの養子縁組については、特に他の相続人によく説明しておくことをお勧めします。

なお、仮に将来法改正が行われ、同性婚が認められた場合でも、養子縁組をしたままでは結婚できないことに念のため留意しておきましょう(民法734条1項)。

相続税には以下の基礎控除額が設けられており、基礎控除額に達するまでの相続財産については、相続税が課されません。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

この仕組みを利用して、養子縁組によって法定相続人の数を増やし、基礎控除額を増額しようとするケースがあります。
ただし、基礎控除額の計算上、法定相続人の数にカウントできる養子の人数には、以下のとおり上限が存在します。

1.実子がいる場合
法定相続人の数にカウントできる養子は1人まで
2.実子がいない場合
法定相続人の数にカウントできる養子は2人まで

したがって、むやみにたくさん養子縁組を行っても、相続税を減額する効果はないことに気を付けましょう。

また、専ら相続税対策のみを目的として養子縁組を行い、親子関係を形成する意思が全くないと認められる場合には、養子縁組が無効となるおそれがある点にも注意が必要です。
参考:最高裁平成29年1月31日判決 養子縁組無効確認請求事件│裁判所

相続対策を目的として養子縁組をする場合、実子をはじめとした他の相続人との事前調整を十分に行い、相続トラブルを回避することが大切です。
安易な養子縁組は深刻なトラブルに繋がりかねないので、慎重な対応を期すためにも、事前に弁護士へご相談ください。
(記事は2021年11月1日時点の情報に基づいています)