地積規模の大きな宅地とは 評価方法と注意点を確認
被相続人(亡くなった人)の遺産に、賃貸アパートの敷地のように面積が広い土地がある場合、財産評価基本通達の「地積規模の大きな宅地」に該当するかもしれません。該当すると評価額を下げることができ、相続税の節税効果が期待できるのですが、該当するかどうかの判定の仕方が少し複雑です。「地積規模の大きな宅地」の評価方法も含め、不動産鑑定士の資格を持つ税理士が解説します。
被相続人(亡くなった人)の遺産に、賃貸アパートの敷地のように面積が広い土地がある場合、財産評価基本通達の「地積規模の大きな宅地」に該当するかもしれません。該当すると評価額を下げることができ、相続税の節税効果が期待できるのですが、該当するかどうかの判定の仕方が少し複雑です。「地積規模の大きな宅地」の評価方法も含め、不動産鑑定士の資格を持つ税理士が解説します。
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地積とは、登記簿などに記されている面積のことをいいます。相続税の財産評価のルールブックである財産評価基本通達(以下「評価通達」)には、評価通20-2(地積規模の大きな宅地の評価)が定められています。
この評価通達20-2の趣旨は、以下の図表のように開発業者(デベロッパー)が評価対象地を戸建住宅用地として分割分譲する場合に発生する道路設置等による潰れ地等の減価を反映させる点にあります。したがって、地積規模の大きな宅地とは、戸建住宅用地として分割分譲を想定できるような開発分譲適地を意味します。
ただし、開発業者でもない一般の納税者(相続人)に戸建住宅用地としての開発分譲適地か否かの判断は困難です。そのため、評価通達20-2では地積規模の大きな宅地に該当するかどうか容易に判定できるように以下のような形式的な要件が定められています。
要件としては大きく四つあり、②面積要件を満たす大きな宅地でも、他の要件をすべて満たさないと評価通達20-2の地積規模の大きな宅地には該当しません。そのため、一つひとつ丁寧に要件を判定していく必要があります。
特に③都市計画要件や④指定容積率要件は、各区市町村の都市計画課等への役所調査を行い確認する必要があります。大都市では都市計画情報がインターネット上で公開されているところもありますが、地方都市では公開されていない場合も多いため、直接役所に訪問して確認する必要があります。
地積規模の大きな宅地に関しては、従来は広大地通達(旧評価通達24-4)がありました。しかし、その適用要件の判定をめぐって納税者と税務署との間で争いが多かったことなどを踏まえて平成29年9月の評価通達改正で廃止され、新たに評価通達20-2(地積規模の大きな宅地の評価)が新設されました。平成30年1月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得する宅地から適用されています。
旧広大地通達と地積規模の大きな宅地の評価の大きな違いは、適用要件判定の難易度です。旧広大地通達の適用要件は定性的かつ抽象的な部分が多く、一般の納税者だけでなく税理士にとっても適用可否の判定の難易度がかなり高かったのです。対して、地積規模の大きな宅地の評価では、先にご紹介した四つの要件を順次確認していくことで適用可否の判定が可能であり、旧広大地通達よりも適用要件判定の難易度がぐっと下がりました。
地積規模の大きな宅地の評価方法は、評価対象地が①路線価地域に所在する場合と②倍率地域に所在する場合で以下のとおり異なります。なお、算式中に登場する規模格差補正率については、次の項目で別途解説します。
(1)路線価地域に所在する場合
地積規模の大きな宅地の評価額
=正面路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率等×規模格差補正率×地積(㎡)
(2) 倍率地域に所在する場合
次のABのうちいずれか低い価額
A:その宅地の基準年度の固定資産税評価額×評価倍率
B:その宅地が標準的な間口・奥行を有する宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額×普通住宅地区の奥行価格補正率×不整形地補正率等×規模格差補正率×地積(㎡)
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相続の相談が出来る税理士を探す路線価地域に所在する場合でも倍率地域に所在する場合でも地積規模の大きな宅地の評価にあたっては規模格差補正率を使うことになります。
この規模格差補正率には以下三つの減価要因が考慮されていいます。
規模格差補正率の具体的な求め方は評価通達20-2に定められています。評価対象地が三大都市圏に所在するかそれ以外の地域に所在するかで規模格差補正率の求め方が異なりますので注意が必要です。
なお、「三大都市圏ってどこ?」という場合には以下国税庁HPリンク先等で確認できます。国税庁HP「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件チェックシートを一度、確認してみてください。
評価通達20-2(地積規模の大きな宅地の評価)は、旧広大地通達よりも適用要件の判定が簡単になったとはいえ、その判定において注意しなければならない点がいくつかあります。ここでは以下二つの注意点をご紹介します。
地積規模の大きな宅地の面積要件(三大都市圏500㎡以上、それ以外1000㎡以上)は、財産評価基本通達が定める評価単位で判定することとされています。評価対象地の土地の筆単位で判定するというミスが多いので注意が必要です。
宅地の評価単位は、1筆単位ではなく、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地)によります。詳細は、国税庁HPの「No.4603 宅地の評価単位」をご参照ください。
地積規模の大きな宅地の都市計画要件の一つに市街化調整区域に所在しないことがあります。市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域であり、原則として宅地開発を行うことができません。したがって、市街化調整区域に所在する宅地は、原則として戸建住宅用地としての分割分譲を想定できないので地積規模の大きな宅地に該当しないというわけです。
ただし、市街化調整区域であっても、都市計画法第34条第10号または11号の規定に基づき宅地分譲にかかる開発行為ができる区域内の場合には、例外的にこの都市計画要件を満たすこととなりますので注意が必要です。
上記以外にも地積規模の大きな宅地の判定で注意しなければならない点があり、評価通達20-2の適用があるかどうかで土地の評価額が大きく異なります。要件判定に不安がある人は、早めに不動産評価に精通した税理士に相談するのがよいでしょう。
(記事は2021年7月1日時点の情報に基づいています)
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