山林の法的な定義とは

「山林」と聞くと、一般的には木や竹の生えた山をイメージすると思います。

法的な山林の定義を見てみましょう。不動産登記事務取扱手続準則の第68条9項に山林の定義が記されています。

不動産登記事務取扱手続準則 第68条

次の各号に掲げる地目は,当該各号に定める土地について定めるものとする。この場合には,土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的にわずかな差異の存するときでも,土地全体としての状況を観察して定めるものとする。

九 山林 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地

山林は法的にこのように規定されています。つまり、耕したり、苗木を植えたりするなど、人の手を入れることなく、自然に樹木が生育する土地であれば、「山林」として取り扱われることになります。

保有している土地の地目がわからない場合は、登記事項証明書を確認してみましょう。登記事項証明書には、さまざまな事項が記録されています。見てみると、面積や地目などを記録する「表題部」と所有者などを記録する「権利部」に分かれていることが確認できます。

登記事項証明書の上部にある表題部には「地目」という項目があり、登記された内容が記載されています。土地の区分が不安な場合は、地目を確認すると良いでしょう。ただし、登記された地目と実態が異なる場合もありますので、注意しましょう。

山林の区分と相続税評価

山林の相続税評価は、山林の状況によって、純山林、市街地山林、中間山林に区分して行うことと定められています。

「純山林」とは、市街地から遠く離れている山林のことを指します。人里離れた山をイメージすると、おおむね問題ないと思います。このような土地は、山林以外の用途に転用することが難しいため、相続税の評価においては、宅地の評価額にあまり影響されません。

「市街地山林」とは、市街地にある山林のことを指します。こちらについては、竹木を伐採し造成することで宅地に転用できる可能性があるため、評価も純山林とは異なる方法で行います。

「中間山林」は、純山林との市街地山林の中間の山林です。

山林の分類と評価方法

では、三つの山林はどのように区分するのでしょうか。

分類を把握するためには、国税庁の公表する「評価倍率表」を確認しましょう。インターネットで「評価倍率表 市町村名」で検索すると、目的となる評価倍率表を見つけることができます。中身を見てみると、地域ごとに、山林欄に「純」「中」などの文字と、数字が記載されていることがわかります。

下記は、その地域の「山林」の価額を評価する場合における山林の分類と、評価方式及び固定資産税評価額に乗ずる倍率が記載されたものです。

山林の分類は、次に掲げる略称を用いて記載されています。

続いて、評価方法を確認しましょう。

山林の評価方法は、財産評価基本通達において純山林と中間山林は倍率方式で評価することとされています。そして、市街地山林は比準方式または倍率方式で評価することと定められています。

まず、純山林と中間山林の評価方法を具体的に確認しましょう。

倍率方式とは、その地域の実情や売買実例価格などを参考にして国税局長が定めた倍率を国税長官が定める倍率を、評価対象となる不動産の固定資産評価額に乗じて算出した価格を相続税評価額とする方式です。

地域ごとの評価倍率は、国税庁の「評価倍率表」に記載されています。固定資産評価額は、納税通知書に添付された明細か、固定資産評価証明書で確認することができます。固定資産評価証明書は、不動産の所在する地域を管轄する市町村等役場の窓口で取得できます。

たとえば、評価倍率1.5、固定資産評価額が150万円の純山林について計算してみましょう。

この場合の相続税評価額は、150万円×1.5=225万円となります。中間山林は一般的に、純山林より高い評価倍率が設定されています。

続いて、市街地山林の相続税評価の評価方法を確認しましょう。

市街地山林の相続税評価の方法は、比準方式または倍率方式となります。比準方式とは、市街地山林を宅地に転用した場合の1平方メートルあたりの価格から、山林を宅地に転用するためにかかる1平方メートルあたりの造成費用を控除し、算出された価格に地積をかけて、相続税評価額を計算する方式です。

たとえば、市街地山林を宅地に転用した場合の1平方メートル当たりの価格が20万円、1平方メートルあたりの造成費用が10万円、地積が100平方メートルだった場合を考えてみましょう。

計算式は、(20万円-10万円)×100平方メートル=1000万円となり、相続税評価額は1000万円となります。

なお、市街地山林の所在する区域が、倍率方式を用いて山林の評価を行う区域に指定されていることもあります。その場合は、純山林や中間山林と倍率方式による評価を行います。

また、市街地山林でも、急傾斜地など、宅地への転用が見込めないと認められる場合には、近隣の純山林の価額に準じて設定された価格で評価すると定められています。この場合、相続税評価額は比準方式で評価する際よりも低くなる可能性が高いといえます。

使用予定のない山林は物納可能

山林のなかには、「保安林」に指定されているものがあります。

保安林とは、災害防止などのために、農林水産大臣または都道府県知事によって指定される森林で、森林機能を維持するため、立木の伐採や土地の形質の変更などが規制されます。保安林の相続税評価額は、通常の評価額から一定割合を控除した価格となります。

特別緑地保全地区内にある山林もあります。特別緑地保全地区内にある山林も、通常の評価額から一定割合を控除した価格となります。

なお、敷地内にある立木は独立して相続税評価の対象になり、評価方法が定められています。山林や立木の評価は複雑なので、税理士に相談することをおすすめします。

ところで、山林は境界があいまいなことがよくあります。そもそも、相続予定の土地がはっきりしない、というケースもあるでしょう。その場合は、土地家屋調査士などの専門家に測量を依頼する方法が考えられます。ただし、山林は広大であることが多いため、費用が高額になる可能性がありますので、注意しましょう。

相続税の納付について、使用予定のない山林を物納したいという人がいるかもしれません。山林は条件を満たしていれば、物納できます。ただし、条件の一つに「境界が明らかであること」がありますので、市街地山林以外については、現実的には難しいかもしれません。

山林の相続手続きは専門家へ相談を

山林を相続した場合、相続税申告以外の手続きとして、相続登記と市町村長への届出が挙げられます。

森林法改正により、平成24年4月以降、森林の土地の所有者となった方は市町村長への事後届出が必要になりました。届出の期限は土地を取得してから90日以内となっています。期限が短いので忘れないように気をつけましょう。

相続登記は法務局で申請します。相続登記は現時点では義務ではありませんが、義務化が予定されていますので、早めに済ませたほうが良いと思います。相続登記をせずに土地を放置しておくと、二次相続が発生して関係者の数が多くなり、手続きが困難になることが予想されます。

山林を相続したくない場合については、相続放棄が考えられます。ただし、特定の財産のみを放棄することはできませんので、十分な検討が必要です。

山林の相続は、このように宅地に比較して複雑であり、専門家に依頼せずに適切な手続きを行うことはとても難しいと思います。お近くの税理士や司法書士に相談してみましょう。

(記事は2021年4月1日時点の情報に基づいています)