目次

  1. 1. 「貸している割合」で安くなる
    1. 1-1. なぜ貸していると安くなるのか?
    2. 1-2. 借地権割合・借家権割合とは?
    3. 1-3. 評価額の計算例
  2. 2. 小規模宅地等の特例で安くなる
  3. 3. ローンで建てるとより安くなる
  4. 4. アパートでどれくらい相続税は安くなる?
    1. 4-1. 現金1億円を相続したときの相続税額
    2. 4-2. 1億円で購入したアパートを相続したときの相続税額
  5. 5. アパートで相続税対策をするメリット
  6. 6. アパートで相続税対策をするデメリット
  7. 7. アパートを建てるならここをチェックしよう
    1. 7-1. 建てる人自身が投資に積極的
    2. 7-2. 他人まかせにしない
    3. 7-3. 節税目的ではなく収益目的で経営する
  8. 8. まとめ|判断が難しかったら税理士に相談を

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土地や建物を他人に貸している場合、その土地や建物を売却したいと考えても、買おうとしている人は、借りている人の存在により、その土地や建物を自由に使うことができないことになります。

このことは、その土地や建物の評価額が低くなることを示しています。そこで、相続税法においては、どの程度評価を減らすかについて、借地権割合(しゃくちけんわりあい)や借家権割合(しゃっかけんわりあい)を使用して、不動産の評価減を行うこととしています。

借地権割合は相続税路線価図において、土地ごとに30%~90%まで決められています。路線価図に記載されているアルファベットが借地権割合に対応しており、一般的な住宅地の借地権割合は、ほとんどのケースで60%~70%となっています。

そして、アパートやマンションの建っている土地のことを貸家建付地(かしやたてつけち)といいます。貸家建付地の評価額に、その土地の路線価評価額に、借家権割合(全国一律30%)をかけて計算します。

また、土地の評価額には賃貸割合と呼ばれるものも関係してきます。アパート・マンションの全部屋を他人に貸している場合、賃貸割合は100%となります。しかし、一部を自宅として使用している場合は、合理的な基準で賃貸割合を算定しなければなりません。

たとえば、アパート5部屋(すべて同じ床面積と仮定)のうち、1部屋を自宅として使用し、他の4部屋を貸している場合は、賃貸割合は80%となります。原則として貸している部屋の床面積の割合で賃貸割合を算定することになります。

ここまでの内容を反映すると、貸家建付地の評価額は以下の算式となります。

貸家建付地の評価額=本来の相続税評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

本来の相続税評価額が1億円、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合80%の場合の評価額は、1億円 ×(1-0.6×0.3×0.8)= 8560万円となり、本来の評価額1億円より1440万円評価が低くなったことがわかります。

小規模宅地等の減額の特例とは、土地に建物が建っている場合に、要件を満たすことで、土地の評価額を一定の割合で減額するという特例です。

アパート、マンションが建っている土地は、小規模宅地等の減額の特例により、200平方メートルまでを本来の評価額の50%に減額することができます。200平方メートルを超える部分は評価額の減額はありません。評価額が減額される部分があるため、アパートを建てることなく、現金として持っていた場合よりはるかに相続税を抑えることができます。

アパートやマンションを建てる際に、アパートローンを利用すれば、さらに相続税を軽減することができます。

借り入れた資金でアパートやマンションを建てれば、資産は現金ではなく建物に替わります。すると建物は、建築した費用で評価されるわけではなく、固定資産税評価額で評価されるのです。一般的に固定資産税評価額は本来の評価額よりも低く、借り入れた金額よりも低いのが通常ですから、その分、相続税が抑えられることになります。

預貯金など多額の現金資産を保有している場合は、その預貯金を利用してアパートやマンションを建設し、ほかに貸し出せば、相続税を大きく節税することができるでしょう。

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ここでは、以下の設定で相続税がいくらになるか見ていきましょう。

現金1億円を1人で相続したときの相続税額は以下のとおりです。
基礎控除額=3000万円+(600万円×1人)= 3600万円
(1億円 - 3600万円)× 30% - 700万円 = 1220万円

  • 相続人1人、建物6000万円、土地4000万円で購入した。
  • 路線価評価は実勢価格×80%、固定資産税評価額は実勢価格×70%とする。
  • 借地権割合60%、借家権割合30%
  • アパートは満室(賃貸割合100%)

上記の設定の場合、相続税額は以下のとおりです。

土地の評価額:4000万円 × 80%×(1-60%×30%×100%)= 2624万円
建物の評価額:6000万円×70%=4200万円
相続税額=(2624万円+4200万円-3600万円)×20%-200万円=444万8000円

同じ遺産総額1億円でも、現金で相続するより、アパートを建てて相続したほうが相続税を大きく抑えられていることがわかるでしょう。

相続税対策としてアパートを建てるメリットは、相続税を安く抑えられることはもちろん、相続した後、賃貸料収入が得られ、生活の安心につながるという点があげられます。また、賃貸料収入により不動産所得が発生しますが、減価償却費も計上できるため、多額の所得税が発生するということはありません。

一方、アパートを建てるデメリットとしては、空室リスクがあります。空室が多くあると相続税評価額がそれほど減額されないということもあります。また、アパートの建設に多額の費用がかかり、生活資金に影響することもデメリットとなるでしょう。アパートローンを利用すれば、返済が困難になることも考えられます。

アパートを建てるなら、その人自身が投資に関心を持ち、投資に関するさまざまなリスクを理解した上で、積極的にアパート経営をしようとしていることが重要になります。

家賃の回収や修繕などアパート経営に関する管理を不動産管理会社にまかせることもできます。しかし、全面的に他人まかせにすると、思わぬ出費を伴うこともあるため注意しなければなりません。

必要な範囲での節税は行うべきですが、過度な節税はかえってアパート経営が失敗する結果となります。アパート経営はあくまでも収益目的で行い、その範囲で節税を行うことを意識して経営することが重要です。

不動産に関しては、相続対策においても不動産経営においても、税金の問題がつきまといます。税金の知識に乏しい一般の方にとっては、判断が難しいことばかりです。判断に困ったら、税理士に相談するといった方法も検討してみてください。

【訂正】2022年5月9日に記事の内容を一部訂正しました。
(訂正前)相続税額=(2624万円+4200万円-3600万円)×20%-200万円=4448万円
(訂正後)相続税額=(2624万円+4200万円-3600万円)×20%-200万円=444万8000円
内容に誤りがありましたことを、おわびします。

(記事は2021年6月1日時点の情報に基づいています)

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