目次

  1. 1. 母の遺産は叔父が住む家の共有持ち分
  2. 2. 不動産の共有持ち分はもめやすい
  3. 3. 共有状態を解消する方向性の検討を

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相談者のF子さんがうなだれてやってきました。

「母が亡くなって、母が叔父と共有で持っている不動産(家)を相続することになりました。ただ、今はその家に叔父の一家が住んでいるので、私は不動産を相続しても何の得もありません。しかも、その不動産が地価の高い場所にあるので、高額な相続税がかかることになって……。住むことも売ることもできない不動産に高額な相続税なんて払いたくないんです。 母は遺言書を残していなかったので、相続で叔父にもらってもらうこともできません。せめて、叔父に買い取ってほしいと頼んでいるのですが、『そんなお金はない』と言われてしまいました」

話を聞くと、もともとおじい様が住んでいた土地に、叔父さん家族が住んでいるのだそうです。おじい様が亡くなった時、不動産以外に大した財産がなかったので、母親が不動産の一部の名義をもらうことになったといいます。最初の約束では、叔父がいつかは母(叔父にとっては姉)の持ち分を買い取ってくれるということだったそうですが、約束の証拠はどこにもありません。

かわいそうなF子さん。叔父さんが住んでいる不動産の共有持ち分を相続して、高額な相続税を払わなければいけないなんて、本当に意味がわかりませんが、これもお母さん名義の不動産なら仕方がないことです。相続税を払っていただくしかありません。

あとは、叔父さんと話し合って家賃をもらうとか、共有の持ち分を買い取ってもらうということが考えられますが、いずれにせよ叔父さんが「うん」と言ってくれなければ、強制するのはむずかしそうです。

このように、不動産の共有は、相続する子どもたちに問題を先送りすることにほかなりません。仮に叔父さんが亡くなれば、今度は叔父さんの子ども(F子さんのいとこ)との共有となり、F子さんが亡くなれば、今度はF子さんの子どもが同じ憂き目に遭うことになるのです。

不動産の共有が相続時にもたらす不幸はそれだけに留まりません。

土地を担保にお金を借りようと思ったGさんのケースです。

「自宅を建て替えようと思って銀行に相談に行ったら、土地を担保に入れればお金を貸してくれると言われたんです。自宅の土地は親から受け継いだ土地で、今は自分と妹が半分ずつ共有で持っているんですが、妹が土地を担保に入れることに同意してくれません。これでは銀行からお金が借りられない。どうすればいいのでしょうか」

また、「自宅を売ってくれ」と弟に泣きつかれたHさんの話。

「弟が突然『家を売りたい』と言い出したんです。この家は、弟と共有で相続したものですが、今は私が家族と住んでいるんです。弟は『勤めていた会社が倒産して、収入がなくなって困っている』と言って泣きついてきたんですが、私もこの家がなくなると住むところがなくなってしまう。どうすればいいでしょうか」

さらには、話し合いもないまま共有持ち分を業者に売られてしまったというケースもあるようです。

このように、不動産の共有で困ることは多々あるのです。「すぐに売却するから共有で持つことにする」というような場合は早晩現金化されるわけですから、あまり問題にならないでしょうが、それはあくまで例外的な話です。

売却の予定もない、誰か特定の人のみが利用している、というような不動産を共有で持っている方は、是非今後のリスクを検討した上で、共有をどう解消していくかを考えてみてください。

ちなみに、夫婦の共有名義で不動産を購入するケースがあります。このようなケースの不動産の共有は、住宅ローンの控除がダブルで受けられる、売った場合の税金の特例が二重で受けられるなどのメリットがあります。「離婚」などということにならない限りは、ゆくゆくは子どもに相続されることになるでしょうから、あまり問題はありません。

ただ、お子さんがいない場合は要注意。共有持ち分が相続財産となるため、夫婦の どちらかが亡くなった場合、夫(妻)の両親や兄弟姉妹との共有名義になってしまう、なんて可能性も出てきます。

もう一つ、不動産の名義で問題になりやすいことがあります。それは、相続で持ち主が変わっても不動産の所有権移転登記をしていないケースです。土地の名義が、何代も前のおじいさんになっていて、結局誰のものかわからない、というのもよくあることです。
相続税もかからない、固定資産税もかからない、欲しがる人もいない、というような場合、名義変更が面倒なので、ついそのままにしてしまいがちです。

しかし、そんなことを何代も続けていくと、推定相続人だけでとんでもない数になってしまい、いざ売ろうと思っても売れない、というケースが多々あります。

実は、こういった事態を避けるため、相続登記を義務化する法案が2021年4月に成立しました。2024年4月から施行されます。この法律が適用されるようになると、原則として、相続から3年以内に相続登記をしないと、罰則の対象となります。

施行日よりも前に起こった相続についても、施行日から3年以内に相続登記をすることが義務づけられます。「登記面倒くさいから、放っておく」ということが許されなくなるというわけです。こちらも是非お気をつけください。

(記事は2022年9月1日現在の情報に基づきます)

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