マンションを相続放棄するときの注意点 手続きや管理義務を免れる方法を解説
マンションを相続したくないなら「相続放棄」が有効な対処方法となります。ただし、他に相続人がいない場合に相続放棄すると、マンション管理を続けなければなりません。また、相続放棄には期限もあります。今回はマンションを相続放棄するときの注意点を専門家が解説します。マンションを引き継ぎたくない方はぜひ参考にしてみてください。
マンションを相続したくないなら「相続放棄」が有効な対処方法となります。ただし、他に相続人がいない場合に相続放棄すると、マンション管理を続けなければなりません。また、相続放棄には期限もあります。今回はマンションを相続放棄するときの注意点を専門家が解説します。マンションを引き継ぎたくない方はぜひ参考にしてみてください。
目次
「相続会議」の弁護士検索サービスで
相続財産にマンションが含まれるケースは少なくありません。マンションを相続する際には下記のデメリットがあることに注意しましょう。
立地が悪かったり老朽化が進んでいたりしてマンションの売却が困難な場合、上記デメリットを回避するため、相続放棄をしたいと考える人もいるでしょう。そこで、マンションを相続放棄するときの注意点を解説します。
相続放棄をしたい場合には、期限内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすることと、法定単純承認に該当する行為をしないことが必要です。
被相続人(亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、相続放棄の申述書を提出して受理してもらうことが必要です。
個別事情によって必要書類は変わってきますが、被相続人の住民票除票、申述人(放棄する方)の戸籍謄本、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本、収入印紙800円分、連絡用の郵便切手は最低限必要です。
相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時」(基本的には、被相続人が亡くなったことを知った時)から3カ月以内にしなければなりません。
この期間内に相続財産の状況を調査しても相続放棄をするかどうかを判断できない場合は、家庭裁判所に対して期間伸長の申立てをして期限を延ばしてもらいましょう。ただし、期限を延ばしてもらえない可能性もあるので、期限から余裕をもって申立てをしてください。
相続人は通常、相続を承認するか、あるいは相続放棄をするかを自由に選ぶことができます。しかし、法律で定められた一定の事由に該当すると、相続を承認したとみなされ、相続放棄ができなくなってしまいます。これを法定単純承認といい、典型例は、相続財産の「処分」です。
そのため、マンションを相続する場合、部屋内の残置物(遺品)を勝手に処分してはいけません。相続財産の「処分」をしたとして、相続することを承認したとみなされてしまう可能性があるからです。
いわゆる形見分けにも注意が必要です。第三者から見て、換価価値が明らかにないものであれば問題ありません。例えば、写真や手紙などです。しかし、絵画や高価な時計などは換価価値があるので、安易に形見分けをしないように注意してください。
相続放棄をすると、相続に関する一切の責任から解放されるように思われるかもしれませんが、そうではありません。
相続放棄をした人は、その放棄により相続人になった人が相続財産の管理を始めることができるまでは、その財産の管理を継続しなければなりません(民法940条1項)。なぜなら、相続人が相続放棄をしたからといって相続財産の管理をしないでいると、その結果、相続財産が滅失・毀損されるなどして他の相続人や債権者などに損害を与える可能性があるからです。
他に相続人がいる場合は、その相続人がマンションを相続し、管理することになります。管理費用なども他の相続人が支払います。
その相続財産を「現に占有」している場合、他の相続人や相続財産清算人に引き継ぐまでは、その財産の保存をしなければなりません(民法940条)。
従って、他に相続人がいない場合や、他の相続人全員が相続放棄をした場合、そのマンションを「現に占有」している相続放棄者は、そのまま保存をしなければなりません。
なお、「現に占有」とは、亡くなった親名義のマンションに住んでいるような状態を指します。
一方、相続財産である、被相続人のマンションにまったく関わっていない場合には「現に占有」とは言えないため、相続放棄した時点で保存義務からも解放されます。
ただし、「現に占有」の解釈は明確になっていないため、「自分は親のマンションに住んでいなかったから相続放棄すれば管理義務もない」などと自己判断せず、弁護士に相談することをお勧めします。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る弁護士を探すでは、「現に占有」している相続人は相続放棄したとしても、永遠にそのマンションを保存しなければならないかというと、そうではありません。家庭裁判所に相続財産清算人選任の申立てをし、選任された相続財産清算人に管理を引き継ぐことで、保存義務を免れることができます。
相続財産清算人とは、相続人の存在・不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する人がいなくなった場合も含まれる)に、相続財産の管理や処分をするため、家庭裁判所によって選任される人です。
ただし、相続財産の管理に要する経費や相続財産清算人の報酬等が相続財産から支払えないと見込まれる場合は、申立人が経費や報酬の相当額を予納金として家庭裁判所に納めなければなりません。
予納金は、個別の事情によるものの、概ね20万~100万円程度です。最終的に相続財産から経費や報酬が支払えなければ、これらは予納金から支払われ、その分は申立人には返ってきません。このような負担が生じ得ることを踏まえつつ、相続放棄をするかどうかを決めてください。
家庭裁判所からの相続放棄申述受理通知書や証明書を提出するなどして、相続放棄が完了していることを伝えましょう。
マンション管理組合としては、相続人全員が相続放棄していることが確認できた場合、相続財産清算人選任の申立てをし、預貯金やマンションの売却代金などから滞納管理費を回収することを検討することになるでしょう。
なお、区分所有建物の滞納管理費については、その建物を新しく譲り受けた新所有者に対して請求できることとされています。そのため、債権者が債権を回収するためにマンションを競売にかけ、当該区分所有建物の新所有者が現れた場合は、その新所有者が滞納管理費の支払義務を引き継ぎます。
マンションを相続放棄したときの影響は、他に相続人がいるかどうかなどの個別事情で異なってきます。相続放棄には期限もありますので、早めに判断しなければなりません。迷ったときには弁護士に相談して対応を決めると良いでしょう。
(記事は2024年4月1日時点の情報に基づいています)
「相続会議」の弁護士検索サービスで