証券投資信託の受益証券の評価方法

まず、証券投資信託の受益証券の評価方法について解説します。

証券投資信託の受益証券とは、投資信託運用会社が不特定多数の投資家から資金を集め、株式や債券等の有価証券に投資し、その運用によって得た利益の分配を受けることができる有価証券です。主に証券会社等の販売会社を通じて投資家に販売されています。

相続税申告における証券投資信託の受益証券の評価は、被相続人の死亡日において、解約請求または買取請求を行ったとした場合に証券会社から支払いを受けることができる価額で評価することとされています。具体的には、国税庁作成のルールブックである財産評価基本通達において以下の区分ごとに評価方法が定められています。

① 日々決算型の証券投資信託の受益証券
② 上場されている証券投資信託の受益証券
③ ①②以外の証券投資信託の受益証券

1 日々決算型の証券投資信託の受益証券の評価方法

日々決算型の証券投資信託の受益証券の具体例としては、MRFやMMF等があります。財産評価基本通達では以下の算式で評価することと定められています。

1口あたりの基準価額は通常1口1円となっており、口数は被相続人の死亡日の残高証明書を証券会社から取り寄せることで確認できます。また、源泉所得税等控除後の未収分配金や信託財産留保額、解約手数料については証券会社に問い合わせて確認したほうが良いでしょう。

2 上場されている証券投資信託の受益証券

上場されている証券投資信託の受益証券の具体例としては、ETFがあります。財産評価基本通達では以下のとおり上場株式に準じて評価することと定められています。

3 1と2以外の証券投資信託の受益証券の評価方法

1と2以外のタイプである証券投資信託の受益証券は、財産評価基本通達では以下の算式で評価することと定められています。

被相続人の死亡日の1口あたりの基準価額や口数は証券会社から残高証明書をとることで確認できます。1万口あたりの基準価額が公表されている場合には口数を1万口で割る必要があるので注意が必要です。マイナスする項目は、証券会社に問い合わせて確認したほうが良いでしょう。

不動産投資信託の受益証券の評価方法

次に、不動産投資信託の受益証券の評価方法について解説します。

不動産投資信託の受益証券とは、不動産投資法人が不特定多数の投資家から資金を集め、オフィスビル、賃貸マンション等の不動産に投資し、その運用によって得た利益の分配を受けることができる有価証券です。

このような投資信託はアメリカではREITと呼ばれていますが、日本ではアメリカと制度が異なることから、頭に「J」を付けてJ-REITと呼ばれています。東京証券取引所が平成13年3月に不動産投資信託の受益証券の流通市場を開設し、J-REITは証券会社を通じて市場で自由に売買されることになりました。

J-REITは上場されている証券投資信託の受益証券と同様に上場株式の評価方法に準じて評価することと定められています。ただし、現行ではJ-REITは東京証券取引所だけに上場されていますので、国内の2以上の証券取引所に上場されている場合の取り扱いは考慮する必要はありません。

なお、不動産投資信託の受益証券としては上場しているJ-REIT以外に、主に機関投資家をターゲットとした非上場の私募REITもあります。一個人がこうした私募REITに投資することはほぼないと思われますし、財産評価基本通達にも私募REITの評価方法は定められていません。

ただし、財産評価基本通達逐条解説によれば「市場における取引価格がない(上場されていない)不動産投資信託証券の場合には、①純資産価値、②配当利回り、③キャッシュフローなどに着目して個別にその価値測定を行うことになると考えられる」と解説されています。

まとめ

ここまで述べてきたとおり、投資信託の評価方法は種類や形態によって異なります。そのため、被相続人(亡くなった人)が保有していた投資信託がどのタイプに区分されるのかを的確に判断し、それぞれの区分に応じて評価に必要な情報(残高証明書等)を入手する必要があります。

被相続人が複数の投資信託を保有していた場合は特に注意が必要です。その金額感が大きい場合には、評価ミスが相続税額に与える影響も大きくなるためです。遺産に投資信託があった場合は、慎重を期して早めに税理士に相続税申告を依頼することをおすすめします。

(記事は2021年4月1日時点の情報に基づいています)