家族信託は上場株や国債も対象。対応できる証券会社が増える可能性も
家族信託のコンサルタントとして実績がある宮田浩志司法書士が、初めて家族信託を考える読者にも分かりやすく制度について解説します。今回は家族信託に有価証券類を活用する場合のポイントについて取り上げます。
家族信託のコンサルタントとして実績がある宮田浩志司法書士が、初めて家族信託を考える読者にも分かりやすく制度について解説します。今回は家族信託に有価証券類を活用する場合のポイントについて取り上げます。
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家族信託において、受託者である子世代が管理を担う主な財産には、現金・不動産・未上場株式の3点が挙げられます。では、上場株式や国債、投資信託等のいわゆる「有価証券類」はどうでしょうか?
上場株式は、預託をした証券会社を通じて、名義書換代理人である信託銀行等が、株主名簿の管理やその名義変更手続きを行うことになります。しかし、現時点で、これらの証券会社の多くがまだ家族信託の実務に対応できていません。
そのため、信託財産に上場株式を入れた場合、当事者間では法的に有効でも、株主名簿に受託者の名前を記載する変更手続き(株主名簿に記載の受託者に株主総会招集通知が発送される)ができない可能性があります。これは上場株式に限らず、国債・外国債・投資信託等の有価証券類全般についても同様です。
現在、家族信託の契約に基づいて「信託口口座」の作成に対応できる証券会社は少数です。しかし、昨年より大和証券が正式に対応を始めたことを踏まえれば、今後は他の証券会社が追随するのは間違いないでしょう。
証券会社が対応可能なら、次の2つが可能になります。
委託者である老親が持っている有価証券類を信託財産に入れることで、老親の健康状態に左右されずに換価処分ができ、その代金の払戻を受託者が受け、老親の介護費用等に充てることができます。仮に老親の判断能力が喪失した後でも、成年後見制度を利用する必要はありません。
証券会社によっては「代理人制度」を用意しているところもあります。しかし、この代理人制度では、老親本人の判断能力が低下すれば、代理人の売買発注権限も無くなってしまうので、家族信託の信託口口座の方がより確実な対応ができると言えます。
前述の通り、現時点で家族信託に対応できる証券会社は限られています。現在、預託している証券会社が対応できていない場合は、対応できる証券会社への「移管」手続きが可能です。
ただし、各証券会社が定める移管手数料が発生するうえ、有価証券類の銘柄次第では移管できないもの(各証券会社独自の投資信託商品などは移管不可)もありますので、注意が必要です。
資産に余裕のある親世代が、将来に向けた余剰金銭の活用を、子に託すケースがあります。この場合、信託契約の中で有価証券類への投資運用権限を明確に与えた上で、金銭を信託財産として託します。これで、受託者となった子が、その権限と親の意向に基づき有価証券類に投資・運用できます。
預金の利息が超低金利となっている今日において、少しでも余剰金銭を活かして将来に備えたいという親本人や家族の想いに応えることが、可能となるでしょう。
なお、証券会社に持ち込む信託契約書については、家族信託に精通した法律専門職が作成に関与した上で公正証書で作成するなど、一定の要件を満たす必要があります。直接証券会社に問い合わせるより、まずは家族信託に精通した法律専門職に相談することをお勧めします。
(記事は2020年3月1日時点の情報に基づいています)
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