目次

  1. 1. 電話加入権とは何か
  2. 2. 電話加入権は相続財産になるのか 
    1. 2-1. 電話加入権の評価方法
    2. 2-2. 金額は小さいが申告は必須
  3. 3. 引き継ぐ場合は名義変更の手続きが必要
    1. 3-1. 手続きの流れ
    2. 3-2. 必要な書類
  4. 4. 名義変更以外の手続きも確認しよう
    1. 4-1. 解約の手続き
    2. 4-2. 休止の手続き
  5. 5. きちんと手続きしよう

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電話加入権とは、NTT東日本、NTT西日本の加入電話回線を契約するための権利のことです。「施設設置負担金」とも言います。負担金ではあるものの、個人間の売買ができるため、「電話加入権」といった権利のような呼称で呼ばれます。
電話事業が開始された当初、無料で電話は利用できました。しかし、NTTグループの前身である日本電信電話公社が戦後、電話回線を引くための電柱や電線を敷設するための資金調達として負担金を求めるようになって以降、有料となっています。

1976年には8万円にもなった電話加入権は、民営化でNNTとなった1985年、7万2000円に改変されました。ですが、高額すぎる価格や1990年代の携帯電話の普及で固定電話を使う人が減少したのです。結果、2005年3月1日から従来の半額である3万6000円となりました。

現在、NTTの電話回線を経由しない通信サービスや光ファイバーが登場していることもあり、お金を払ってまで電話加入権を取得しようとする人はほとんどいません。
ただ、高齢の方なら電話加入権を持っているということはよくあります。そのため、相続のときは、他の財産と同様、電話加入権の有無も確認しなくてはなりません。

結論から言うと、電話加入権は相続財産になります。また相続税の課税対象となるため 、財産評価が必要です 。

電話加入権の評価は、相続税法財産評価基本通達により、次のように定められています。

  1. 取引相場のある電話加入権…課税時期における通常の取引価額
  2. 上記以外の電話加入権…売買実例価額等を基として、電話取扱局ごとに国税局長の定める標準価額
  3. 特殊番号の電話加入権…上記2つのいずれかを元に評価した金額をベースとして、売買実例価額や精通者意見価格などを参考にし、評価額を増減した金額

一般的な電話加入権は、上記3つのうちの2番目に該当します。2020年分の標準価格は、全国一律1500円です。国税庁のウェブサイト上で確認できます。

【参考】2020年分 東京都電話加入権の評価 (国税庁)

なお、3の特殊番号は次のようなものです。

  • 「1番から10番まで」「100番」など呼びやすく覚えやすい数字を使った番号
  • 「42番」「4989番」のように嫌われやすい数字を使った番号

こういった特殊な番号で標準価格での評価が当てはまらないと見られるものは、売買実例価額や専門家の意見を参考にした上で、最終的な評価額を算出します。

電話加入権は少額なので、相続税の納税額にほとんど影響しません。
しかし、わずかな金額でも財産の一つです。相続税は、すべての相続財産を申告することになっています。そのため、たった1500円でも申告書への記載が必要です。

なお上記の評価は2020年12月31日までに生じた相続に関してのものです。2021年1月1日以降の相続において、電話加入権は家庭用財産としてまとめて一括評価することとなりました。

電話加入権を相続する際は、名義変更の手続きが必要です。

名義変更は次の流れで行います。

  1. 名義変更の対象となる電話番号の種類を確認する
  2. 遺言書を確認する、又は遺産分割協議で誰が引き継ぐかを決定する(ただし、相続人が1人しかいないなら省略可能)
  3. NTTから請求用紙を入手するとともに、他の必要書類を準備する
  4. 請求用紙に必要事項を記入する
  5. 管轄のNTTのセンターに郵送し、名義変更の手続きをする

名義変更には次の書類が必要です。

1.NTT専用の名義変更の請求用紙
請求用紙は下記のウェブサイトからダウンロードできます。
【NTT東日本】電話加入権等譲渡承認請求書(記載要領等の解説含む)
【NTT西日本】電話加入権等承継・改称届出書(記載要領等の解説含む)

2.死亡の事実と相続関係を証明できる書類
次のようなものが該当します。写しでも構いません。ただし、有効期限のない公的な証明書については、期限が定められています。NTT東日本は発行から3カ月以内、NTT西日本は発行から6カ月以内です。

  • 戸籍謄本・抄本
  • 検認済みの遺言書
  • 遺産分割協議書(相続人全員の印鑑証明書を添付)
  • 法定相続情報一覧図

3.新契約者の氏名・住所・生年月日が確認できる書類(NTT東日本のみ)
これには次のようなものが該当します。

  • 運転免許証
  • パスポート
  • マイナンバーカードなど

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「名義変更してまで使いたくない」ということもあるでしょう。このようなときは解約か休止のいずれかを行います。

解約は電話番号の利用を完全に止めてしまう手続きです。復活はできません。また、権利金も返還されません。
解約の手続きは、オンラインではできません。個別に管轄のNTTのセンターへ連絡します。

休止は、NTTで電話加入権を預かる手続きです。原則5年間ですが、最長10年休止できます。ただし再度利用するときは、新たな電話番号を使うことになる他、名義変更が必要です。また、休止・再開のいずれについても2000円から1万円程度の手数料を払わなくてはなりません。
こちらもオンラインでの手続きはできません。自ら管轄のNTTのセンターに連絡します。

電話加入権は不動産や預貯金に比べて少額です。しかし、契約している間は基本料金がかかります。何もしなければ、「誰が電話代を負担するのか」と親族内でトラブルになるかもしれません。放置せず、きちんと手続きを済ませましょう。

(この記事は2021年4月1日現在の情報に基づきますが、21年5月に電話加入権の評価方法の変更に伴い、7月20日に内容の一部を加筆修正しました)

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