目次

  1. 1. 贈与税は誰が払うのか
    1. 1-1. 贈与税を払うのは「財産をもらった人」
    2. 1-2. 贈与税は「もらった財産の合計額」にかかる
    3. 1-3. 贈与税は「個人が、生きている個人から無償でもらった財産」が対象
    4. 1-4. お金以外は「贈与時の時価」が贈与額
  2. 2. 生前贈与でも贈与税がかからないとき
    1. 2-1. もとから非課税の贈与
    2. 2-2. 基礎控除額以下の贈与
    3. 2-3. 「贈与が成立していない財産」はそもそも贈与税の対象外
  3. 3. 贈与税の計算は「もらう人」で変わる
    1. 3-1. もらう人が18歳以上の子・孫のとき
    2. 3-2. もらう人が18歳以上の子や孫以外のとき
  4. 4. ケース別で贈与税を計算してみよう
    1. 4-1. ケース1:60代の父が自分(30代)に450万円、自分の息子(10歳)に450万円を贈与
    2. 4-2. ケース2:60代の父が100万円、50代の母が80万円を30代の自分に贈与
  5. 5. 贈与税を払うときの注意点
    1. 5-1. 贈与税の支払いの肩代わりも課税の対象
    2. 5-2. 翌年3月15日までに申告と納税をしよう

贈与税は、普段はなじみがないので、一般の人にはわかりにくい税金です。まず、贈与税の基本を説明します。

贈与税を払うのは「財産をもらった人」です。「あげた人」ではありません。

基本的に税金というのは、「得した部分」にかかります。贈与ならば、得するのは財産をあげた贈与者ではなく、財産をもらった受贈者です。なので、贈与税は財産をもらった人、つまり受贈者が納めます。

なお、贈与税は個人に課税されます。もらった世帯ごとではありません。

贈与税は原則、毎年1月1日から12月31日までの間にもらった財産の合計額にかかります。もし、1年間に3人から贈与を受けたならば、3人からもらった財産の合計額をもとに、贈与税がかかるかどうかの確認や税額の計算を行います。

贈与税は「個人が、生きている個人からもらった財産」が対象です。一方、会社や市区町村など法人からもらった財産は、贈与税ではなく所得税がかかります。また、法人ではなく個人からのお金でも「仕事を手伝った」などの対価ならば、所得税の対象です。

このほか、遺贈や死因贈与は、贈与税ではなく相続税がかかります。

自宅や車、宝石など、お金以外の財産にも贈与税がかかります。計算の基準となる贈与額は「贈与時の時価」です。この時価は、『相続税法財産評価基本通達』に記載されている方法で評価します。

贈与をしても、税金がかからないことがあります。次のようなケースです。

次のような贈与は、もとから贈与税はかかりません。

1.その都度、家族からもらう生活費・教育費

配偶者や親、祖父母といった扶養義務者から必要に応じてもらう生活費や教育費は、最初から贈与税がかかりません。もらった金額が年間500万円でも非課税です。

2.社会慣習や礼儀でもらう財産で常識的な金額のもの

お年玉やお祝い金、お中元やお歳暮、結婚祝いや香典といった、いわゆる社会の慣習や礼儀として受け取るお金には、贈与税がかかりません。ただし、常識的な金額が限度です。

上記以外の贈与でも、すぐに贈与税がかかるわけではありません。贈与税には「基礎控除」という非課税枠が設けられています。基礎控除の範囲内なら、生活や教育のためでない贈与でも課税されません。

基礎控除額は、贈与税の制度ごとに、次のように定められています。

【一般的な贈与(暦年課税制度)】
毎年1月1日から12月31日までの贈与につき110万円までは非課税

【事前の届出が必要な贈与(相続時精算課税制度)】
累計の贈与額で2500万円までは非課税

「あげたら何でも贈与だ」と思われがちですが、そうではありません。次の3つの要素がすべて揃わないと、贈与は成立しないのです。

1. 無償であげる
2. もらう側は何の責任も負わない
3. 贈与の当事者が「あげます」「もらいます」と意思表示をしている

特に3は重要です。子や孫の名義で勝手に口座を作ってお金を振り込んでも、本人が預金の存在を知らないのなら、贈与は成立していません。このような財産は親や祖父母の財産のままです。贈与税ではなく、将来の相続税の対象になります。

たいていの贈与は、暦年課税制度の対象です。この贈与税は次の式で計算します。

(1年間にもらった財産の額-110万円)×贈与税率-控除額

ただし、贈与税率や控除額は、もらう人の立場や年齢で異なります。同じ500万円の贈与でも、人によって納税額が違うのです。

贈与税の税率と控除額は次の2パターンになります。

もらう人が次の条件を両方とも満たしているとき、「特例税率」という贈与税率と、専用の控除額を使います。

【もらう人の条件】

l あげる人の子や孫といった直系卑属である
l財産をもらった年の1月1日時点でもらった人が18歳以上である(ただし、2022年3月31日以前の贈与により財産をもらった場合は20歳以上)

もらう人が「あげる人の子や孫で18歳以上」以外のとき、例えば30歳の弟だったり15歳の孫だったりすることがあります。このときの贈与税の税率は「一般税率」を用います。特例税率と一般税率、またそれぞれの控除額は次のようになります。

暦年課税制度の贈与税の計算

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簡単な事例で贈与税の計算をしてみましょう。

この場合、贈与税を払うのは自分と自分の息子です。自分自身は18歳以上の贈与者の子なので特例税率を、息子は贈与者の孫だけど10歳なので一般税率を使い、次のように計算します。

【自分】

450万円-110万円=340万円(基礎控除後の課税価格)
340万円×15%(特例税率)-10万円=41万円(贈与税額)

【息子】

450万円-110万円=340万円(基礎控除後の課税価格)
340万円×20%(一般税率)-25万円=43万円(贈与税額)

受贈者は贈与者それぞれの子であり18歳以上なので、特例税率を使って計算します。

100万円+80万円-110万円=90万円(基礎控除後の課税価格)
90万円×10%(特例税率)=9万円(贈与税額)

贈与税には次の2つの注意点があります。

先ほど「贈与が成立していない財産」に触れましたが、「贈与の意識がなくても、税法上は実質的に贈与とみなされるもの」というものもあります。次のようなものです。

1. 借金や税金の肩代わり
2. 債務の帳消し
3. 親族間で時価よりも安く財産を売ってもらったときの「時価-購入額」の部分
4. 生命保険や不動産、車の名義変更

これらは贈与税の対象となります。ただし1と2は、「債務の負担がなくなった本人が、もともと生活にかなり困っていた」など特別な事情がある場合は課税されません。

贈与税は、翌年3月15日までに申告と納税をします。贈与税が生じるならもちろん必要です。ただ「贈与税0円」でも、次のようなケースは申告しなくてはなりません。

l 相続時精算課税制度の対象となる贈与を受けたとき
l 住宅取得等資金の贈与税の非課税制度の対象となるお金をもらったとき
l 贈与税の配偶者控除の対象となるお金や不動産をもらったとき

以上が贈与税のおおまかな内容ですが、実際は複雑なこともあります。特に親族間で財産を売買したときや名義変更をしたときは、贈与税が生じることに気づかないかもしれません。財産に何らかの変更が生じる場合は、事前に税理士に相談した方が安心です。

記事は2022年9月1日時点の情報に基づいています。