贈与税がかからない方法とは? 税理士が注意点もあわせて解説

親子や夫婦、兄弟姉妹の間で財産を譲る際、気になるのが「贈与税」です。贈与税がかからない方法にはどんなものがあるのでしょうか。また、注意点はあるのでしょうか。税理士が解説します。
親子や夫婦、兄弟姉妹の間で財産を譲る際、気になるのが「贈与税」です。贈与税がかからない方法にはどんなものがあるのでしょうか。また、注意点はあるのでしょうか。税理士が解説します。
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「贈与」とは、財産を渡す側の「あげます」という意思と、受け取る側の「もらいます」の双方の合意に基づき、「相手に無償で財産をあげる」ことをいいます。贈与税はその無償でもらった財産に対して贈与税が課税されます。
ただし、双方の合意に基づかなくても贈与税が課税されてしまう場合があります。これを「みなし贈与」といいます。例えば、借入を免除してもらったり、著しく安い価格で財産を買い取り、相手側から利益を受けたりした場合は実質的に贈与を受けたものとみなして贈与税が課税されます。
贈与税は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの計算方法があります。
「暦年課税」は、1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産に対して贈与税が課税されます。贈与する人(贈与者)と贈与を受ける人(受贈者)の対象者に制約はなく、1年間に受け取った財産の合計額が110万円を超えた場合、超えた部分に対して10%から最大55%の贈与税が課税されます。
なお、暦年課税はさらに「特例贈与」と「一般贈与」に分かれます。「特例贈与」は20歳(※令和4年4月1日以降の贈与により財産を取得した場合は18歳、以下※印は同様。)以上の人が祖父母や父母などの直系尊属からの贈与をいいます。
また、「一般贈与」は特例贈与に該当しない贈与をいいます。同じ額の贈与をした場合、一般贈与よりも特例贈与の方が贈与税は少なくなります。
「相続時精算課税」は、相続時精算課税選択届出書を提出した贈与者と受贈者間の贈与財産の累計が2500万円までは贈与税が課税されませんが、2500万円を超えた場合、超えた部分に対して一律20%の贈与税が課税されます。なお、この制度を利用する場合はいくつか要件があります。
2023年度税制改正大綱では、相続に関連する課税ルールの大きな見直しがありました。詳しくは以下の記事をご参照ください。
以下のような様々な特例を利用することで、贈与税がかからないようにすることができます。
贈与税がかからない方法一覧
それぞれについて詳しく説明していきます。
歴年課税の場合、受け取った贈与が年間110万円以下であれば贈与税が課税されません。そのため毎年コツコツ暦年課税による贈与を行えば、10年間で最大1100万円まで贈与税は課税されません。一方で贈与者は何人に贈与してもかまいません。
例えば6人の子や孫へそれぞれ110万円の贈与を行えば、1年間で最大660万円まで贈与税が課税されずに贈与をすることができます。さらに上記を組み合わせれば、10年間に6人の子や孫へ最大6600万円まで贈与税がかからず贈与することができます。
ただし、最初から1人に対して1100万円を贈与するために計画的に贈与すると定期贈与として1100万円に対して贈与税が課税されてしまいます。毎年贈与をする場合は、その都度贈与額を決めて贈与契約書を作成するようにしましょう。
相続時精算課税を選択した場合、累計2500万円までは贈与税がかからないため、贈与税が課税されずにまとまった財産を贈与することができます。
また、相続時精算課税の贈与財産は相続財産に加算して相続税を計算することになりますが、相続財産に加算する金額は贈与時の価格で加算します。そのため、今後値上がりするような財産は贈与時の価格で相続財産に加算することができるため、値上がり分だけ節税をすることができます。
なお、2023年度の税制改正大綱では、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除枠を設け、その枠内であれば申告も不要とすることが決まりました。また、この年間110万円の基礎控除は、累計2500万円の特別控除には含まれません。つまり、2つの控除が使えるようになるということです。2024年1月以降の贈与から適用となります。
贈与税には暦年課税や相続時精算課税とは別に、そもそも贈与税が非課税になる贈与があります。知っておきたい贈与税の非課税措置を以下でいくつか挙げてみます。
婚姻期間が20年以上の夫婦間(内縁関係は除きます)で居住用不動産の贈与や居住用不動産の購入資金の贈与を受けた場合、最大2000万円まで贈与税が課税されません。「おしどり贈与」とも呼ばれています。この贈与は贈与者が亡くなっても相続財産に加算しないで相続税を計算することができます。
父母や祖父母などの直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合、受贈者が30歳になるまでに支払った教育資金は、最大1500万円(塾や習い事の費用は500万円)まで贈与税は課税されません。ただし、贈与を受ける年の前年の受贈者の合計所得金額が1000万円を超える場合は、この規定は利用できません。また、受贈者が30歳に達したときに残額がある場合は、贈与税の対象になります。
教育資金の一括贈与の制度については、2023年度の税制改正大綱で3年間延長が決まり、2026年3月末までとなりました。
20歳(※)以上50歳未満の人が父母や祖父母などの直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受ける場合、受贈者が50歳に達するまでに支払った結婚・子育て資金は最大1000万円(結婚資金は300万円)まで贈与税は課税されません。
この規定は教育資金の贈与税の非課税措置と同様に、贈与を受ける年の前年の受贈者の合計所得金額が1000万円を超える場合は利用できません。また、受贈者が50歳に達したときに残額がある場合は、贈与税の対象になります。
結婚・子育て資金の一括贈与の制度については、2023年度の税制改正大綱で制度の2年間延長が決まり、2025年3月末までとなりました。
20歳(※)以上である人が父母や祖父母などの直系尊属から居住用不動産の購入資金や居住用不動産のリフォーム資金の贈与を受けた場合、一定額まで贈与税が非課税となる特例です。省エネルギー性の高い住宅や耐震性の高い住宅を備えた良質な住宅用家屋に対する一定の贈与があれば最大1000万円、それ以外の贈与であれば最大500万円まで贈与税はかかりません。特例期間は2023年12月末までです。
特定障害者(特別障害者及び特別障害者以外で精神または身体に障害のある人)が信託受益権の贈与を受けた場合、一定の手続きをすることにより、信託受益権のうち6000万円(特定障害者のうち特別障害者以外の人は3000万円)まで贈与税はかかりません。
他にも贈与税がかからない贈与はいくつかあります。上手に使えばまとまったお金を配偶者や子、孫に贈与できるので、贈与をする前にどのような贈与が最適な方法なのか税理士などに確認してみるとよいでしょう。
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相続の相談が出来る税理士を探す贈与税がかからない方法を解説しましたが、いくつかの注意点があります。
贈与税と相続税は相互に関連をしています。暦年課税の場合、贈与者が亡くなる前3年以内の贈与は相続財産に加算して相続税を計算します。また、相続時精算課税はすべての贈与を相続財産に加算して相続税を計算することになります。そのため、贈与税だけ考えて贈与すると相続税で思わぬ課税が生じることがありますので注意が必要になります。
なお、2023年度税制改正で、暦年課税で相続財産に加算する生前贈与の期間が死亡前3年から7年に延長されました。また、相続時精算課税で相続財産に加算する贈与財産は、新設の基礎控除である年間110万円を除いたすべての贈与となります。いずれも2024年以降の贈与から適用されます。
贈与を多くすると将来の相続財産は減少するため相続税の節税になりますが、一方で多額の贈与は贈与者である本人の老後資金を不足させてしまう可能性があります。自分の老後資金を考慮して贈与をしましょう。
相続時精算課税による贈与を行う場合、非課税措置の規定を適用するためにはいくつかの要件がある上に、期限内に一定の書類を税務署へ提出しなければなりません。そのため、贈与をする前に国税庁のホームページなどで諸要件や必要書類を確認する必要があります。まとまった財産の贈与をする場合は一歩間違えると多額の贈与税が課税されてしまいますので、事前に税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
「手渡しで現金を贈与すれば税務署にばれないから贈与税の申告をしなくても大丈夫」という話をよく聞きますが、税務署は申告漏れを見つけるためにさまざまな方法を使って調査します。税務署は預金の動きから過去の給与、不動産の収入状況および父母などから取得した相続財産などの情報を得ているため、大まかな財産額やお金の動きを把握することができます。そのため、現金贈与をしても税務署に指摘される可能性が高いと考えていた方が賢明です。
相続対策の一貫として贈与をする場合は、相続についても併せて検討しなければなりません。トータルで検討ができる相続に強い税理士や弁護士などに相談して計画的に贈与することをお勧めします。
(記事は2023年2月1日時点の情報に基づいています)
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