目次

  1. 1. 生前贈与とは
  2. 2. 贈与は年110万円まで非課税
    1. 2-1. 2024年から実質的な増税 事情に応じた対策が重要に
    2. 2-2. 控除や特例の活用も検討を
  3. 3. 生前贈与の相談先とそれぞれのメリットとデメリット
    1. 3-1. 税理士:税の専門家、生前贈与による節税に最適な相談先
    2. 3-2. 弁護士:法の専門家、トラブルを避けたいときに
    3. 3-3. 司法書士:登記の専門家、不動産贈与時に
    4. 3-4. その他
  4. 4. 無料相談で依頼をすべき税理士を見極める方法
    1. 4-1. 相続税や贈与税の案件の経験が豊富かどうか
    2. 4-2. 親身になって対応してくれるか、報酬額の確認も
  5. 5. 生前贈与による相続税対策について税理士に依頼したときの報酬
    1. 5-1. 初回相談は無料の事務所も多い
    2. 5-2. 相続財産額に応じた基本料金は5万円
  6. 6. ポイントは贈与税と相続税のトータルでの節税
  7. 7. 生前贈与の相談についてよくある質問
  8. 8. まとめ|生前贈与の相談は、税理士に

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生前贈与とは、自分が生きている間に子どもや孫などに財産の一部を譲ることです。その結果、将来の相続税の負担を減らすことができます。

相続税は、基本的に亡くなった際の相続財産に応じて課税されるものですから、税金額を減らそうと思えば自分の財産を減らせばよいということになります。これを狙って、将来、相続によって財産を移転するのではなく、生前から贈与をすることで相続税を減らそうという考え方があります。

しかし、これが自由にできると、相続税の課税を簡単に逃れることができてしまうため、税法では、贈与された財産には贈与税をかけることにしています。そのため、生前贈与をするには、この贈与税への対策を検討したうえで進めなければなりません。

生前贈与の対策については、なるべく税金を抑えたいという気持ちから、対策にかかる費用もできるだけかけずに進めるケースもありますが、必要な対策がされていなかったり、誤解をしていたりする例も見受けられます。専門家にも相談をして、しっかりと知識を身につけたうえで、適切な方法で対策を進めるのが賢明です。

生前贈与を使った節税をするためには、贈与税についての対策を検討することが必要です。

贈与税には年間110万円までの非課税枠が認められており、これを超える贈与がなされたときに贈与税がかかります。

年間110万円は、贈与を受け取る側それぞれについて認められている非課税枠です。そのため、複数人に対して贈与をしたときには、それぞれに税金がかからずに贈与をすることができる金額を増やすことができます。

他方で、両親それぞれから110万円の贈与を受けた場合には、子どもは220万円の贈与を受けたことになり、贈与税がかかります。この点を誤解しないようにしてください。

なお、生前贈与してから一定期間内に亡くなった場合、その贈与はなかったものとされ、相続財産に持ち戻され、相続税の対象となります。その期間は「3年」だったのですが、2024年1月1日の贈与から「7年」となりました。

実質的な増税で、単純に年110万円以内の生前贈与をすれば相続税対策になるわけではなくなりました。どのように生前贈与をするのが最適であるのかは、さまざまな事情を考慮したうえで決めていく必要性が高まっています。

【関連】生前贈与は亡くなる7年前までが相続税対象に 実質増税への対応策も解説

生前贈与においては、年間110万円の基礎控除額を利用するだけでなく、各種の特例が認められてもいますので、これらの活用も検討しましょう。

「住宅取得資金贈与の特例」を利用できれば、最大1000万円の非課税枠を利用することができます。「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」を利用すれば、受贈者一人あたり1500万円の贈与税が非課税になります。

これまでは「使いにくい」と言われていた、相続時精算課税制度に2024年1月から新たな非課税枠が加わりました。「年110万円までの贈与なら、贈与税も相続税もかからない」との内容で注目を集めています。

ただし、これらの制度を利用するためには要件を満たしているかを確認する必要がありますし、制度を利用するにあたっては多くの注意点もありますので、しっかりと検討してから進めるようにしましょう。

【関連】新しい相続時精算課税制度とは 年110万円まで非課税に 2500万円まで贈与税もかからない

生前贈与を相談する先としては、以下の候補があります。それぞれのメリットとデメリットを説明していきます。

  • 税理士
  • 弁護士
  • 司法書士
  • その他(税務署、ファイナンシャルプランナー、銀行)

税理士は、税金の専門家であり、相続税と贈与税ともに専門的な知識を有しています。そのため、相続税対策として生前贈与をする場合の相談先としては最も適していると言えます。

まず税理士であれば、不動産を含めた財産の評価額を適切に計算してくれます。そのうえで、贈与税と相続税をトータルで考えたなかでの節税策の提案や、適切な控除や特例の活用についてのアドバイスを受けることができます。また、贈与税の申告を依頼することもできるので、面倒な作業に時間をとられることもありません。

他方で、依頼をする場合には費用がかかるというデメリットがあります。ただし、初回の相談を無料で受け付けている事務所もありますので、これを利用すれば費用を抑えることができるでしょう。

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弁護士は、法律の専門家ですので、トラブルを起こすことなく、法的に確実に生前贈与を進めていこうとする場合には、適切にアドバイスを受けることができるでしょう。

他方で、税金の専門家ではありませんので、相続税対策には適していません。依頼には一定の費用もかかります。

司法書士は、登記の専門家ですので、不動産を生前贈与する場合には、適切なアドバイスを受けることができるはずです。

他方で、税金の専門家ではありませんので、相続税対策には適していないでしょう。

【税務署】
税務署には、無料で税金に関する相談をすることができます。しかし、税務署に答えてもらえるのは、基本的に手続きに関する事項ですし、どのように生前贈与による対策をすればいいのかについての相談には応じてもらえません。

【ファイナンシャルプランナー】
ファイナンシャルプランナーは、人生設計に応じた財産形成などのアドバイスをしてくれます。老後の費用などを踏まえて生前贈与ができる額を考えたいときに相談するとよいでしょう。他方で、法律や税金についての専門的な知識があるわけではありませんし、税務に関する相談をすることもできません。

【銀行】
銀行も相続についての相談を受けるようになっています。また、生前贈与に関して税理士や司法書士などの専門家を紹介してもらうこともできますので、ワンストップでのサービスが提供できるでしょう。

しかし、銀行の担当者は、民間の資格を持っていることがありますが、公的な専門家というわけではありませんし、専門家に直接相談するよりも高額の費用がかかる傾向にあるようです。

生前贈与について相談をするなら、まずは税金のエキスパートである税理士に意見をもらうことをお勧めします。相談料がかかる税理士もいますが、初回の相談料が無料の税理士もいます。

ここでは、無料相談で依頼をすべき税理士を見極める方法について解説していきます。

すべての税理士が相続税や贈与税に詳しいわけではありません。相続税などの資産税をあまり扱っていない税理士も多くいますので、これを多く扱っている税理士に相談することが重要です。

あらかじめ生前贈与に関する質問をいくつか準備しておき、それに対して適切な回答ができるかどうかで、生前贈与に詳しい税理士かどうかを見極めましょう。

税理士が相談で適切なアドバイスをしてくれているかどうかはなかなか見極めることが難しいと思います。

それぞれの相談者に合った適切なアドバイスをするためには、相談者の事情をしっかりと聴き取る必要があります。そのため、相談を受けた税理士が親身になって対応をしてくれるかどうかを見極めてください。

生前贈与においても、節税効果や対策の費用対効果、ほかの相続人とのトラブル防止など、何を重視するかということもあるでしょうし、対応する税理士との相性もあるでしょう。

依頼した場合の報酬額についても、大事な話ですから、しっかりと説明をしてくれるかどうかを確認してください。

生前贈与による相続税対策を税理士に依頼する場合、相談のみであれば、30分あたり5000円程度の料金で応じている事務所が多いようです。初回は無料で応じている事務所も多いですし、まずはこのような事務所を利用されることをお勧めします。

しっかりと対策を進めていくには、相続税がどの程度かかるのか、生前対策をすることでどの程度の効果があるのかを正確に把握していく必要があります。この現状把握のためには、相続税の申告の際と同様の財産評価の手間がかかりますので、この試算をしてもらうためには費用がかかります。

事務所によって種々の費用体系があるようですが、一例として、相続財産額に応じた基本料金として5万円から、土地の評価が問題になるものは一利用区分あたり2万円の加算、特例などの控除も反映させる詳細な試算であれば5万円の加算などといったものがあるようです。現金の生前贈与をサポートしてもらう依頼、各種特例を利用した贈与といった手続きを依頼など、依頼の種類によって個々に報酬が発生することになるでしょう。

こうした相談を継続的にするために、税理士事務所と年間いくらといった個人顧問契約を結ぶ事例もあります。また、財産や家族の状況の変化などにもしっかりと対応してもらうために、相続開始までのトータルなアドバイスを受ける契約を結ぶケースもあり、この場合には、相続財産や相続人の数など、相続税申告の報酬を決めるのと同様の考慮で報酬が決められることもあります。さらに、事務所によっては、生前対策で支払った税理士報酬の一部を、相続税申告の際の税理士報酬から差し引くというサービスをしているところもあります。

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「税理士は、贈与税と相続税をトータルで考えたなかで節税策を提案できる」と「3. 生前贈与の相談先とそれぞれのメリットとデメリット」の中で指摘しましたが、このことについて詳しく説明します。

生前贈与をする際には、贈与税のことだけでなく、相続税とトータルでの節税を考える必要があります。

「贈与税は相続税よりも税金が高いので、一度に生前贈与をする金額は抑えておくべき」という理解は、おおまかには正しいのですが、正確な理解であるとも言えません。非課税枠の年間110万円を超えても贈与したほうが、節税につながることもあります。

例を挙げて説明しましょう。

課税の対象となる相続分に応じた取得金額が1億円である場合、相続税は、この額の30%にあたる3000万円に700万円が控除されます。つまり、2300万円の相続税がかかります。

相続税の速算表の一覧。相続分に応じた取得金額が1億円である場合、税率は30%で、控除額は700万円となります
相続税の速算表の一覧。相続分に応じた取得金額が1億円である場合、税率は30%で、控除額は700万円となります

ここで、400万円の生前贈与をした場合、18歳以上の人が祖父母や父母などの直系尊属から受ける「特例贈与財産」であれば、この額の15%にあたる60万円に10万円が控除されますので、50万円の贈与税がかかります。

他方で、相続する財産額が生前贈与により400万円減少していますので、相続税額は120万円減少します。すると、贈与税と相続税のトータルでみると、70万円の税金が減少することになり、それだけの節税効果があります。

この現象が起きるのは、相続税30%で課税される部分を、贈与によって減らすことができ、その分が贈与税15%(さらに控除10万円)で計算されるためです。非課税枠の範囲内で生前贈与をしなければならないと考えられている人が多いのですが、実際には上記のようにトータルで考えていく必要があるのです。

贈与税の速算表の一覧。「特例贈与」は18歳(2022年3月末までの贈与により財産を取得した場合は20歳)以上の人が祖父母や父母などの直系尊属からの贈与を指します
贈与税の速算表の一覧。「特例贈与」は18歳(2022年3月末までの贈与により財産を取得した場合は20歳)以上の人が祖父母や父母などの直系尊属からの贈与を指します

ただし、相続税の税額や税率がいくらになりそうなのか、相続人や生前贈与をする対象となる方が何人いるのか、どれぐらい対策をするための期間的な余裕があるのかなどによって、適切な対策方法は異なってきます。この判断をするには専門的な知識が必要なため、税理士のサポートを受けたほうがよいでしょう。

Q. 生前贈与の相談に行くときにはどんな準備をしていけばいいですか?

相続人や家族関係がわかるメモ、どのような財産があるのかがわかるメモを用意していくと相談がスムーズです。 財産に関する資料として、不動産があれば固定資産税の納税通知書や登記情報、株式などの金融資産があればその内容のわかる資料も持参してください。

Q. 贈与税がかからない生前贈与はありますか?

贈与税には年間110万円までの非課税枠があります。 このほかにも、住宅資金や教育資金を目的とする贈与には特例が認められ、贈与税がかからない場合があります。

Q. 生前贈与の手続きは自分でもできますか?

生前贈与の手続きを専門家に依頼しないといけないというルールがあるわけではありません。 そのため、生前贈与の手続きを自分で進めることはできるのですが、生前贈与での対策内容は非常に専門的ですので、失敗せずに適切に進めるには専門家のアドバイスを受けながら進めたほうがよいでしょう。

以上、生前贈与による節税対策や生前贈与の相談先などについて紹介していきました。

今はインターネットで多くの情報を得ることができますが、それぞれの人や家庭に合った生前贈与の方法はどうなのか、贈与税と相続税をトータルに考えて対策を練る方法などは、自分一人だけで進めるにはなかなか難しいかと思います。

すでに述べたとおり、生前贈与についての相談は、まずは税金のエキスパートである税理士を頼るのが賢明です。無料で相談に応じてくれる税理士事務所も少なくありませんので、気軽に相談することをお勧めします。

(記事は2024年1月1日時点の情報に基づいています)

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