目次

  1. 1. 財産から負債を差し引くのが「債務控除」
    1. 1-1. 債務控除の対象となる項目は?
  2. 2. 固定資産税の課税の基準日は1月1日
    1. 2-1. 被相続人が5月に亡くなった場合は?
  3. 3. 共有の不動産は、納税義務も持分に応じて発生

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相続税の計算は、簡単にいうと被相続人(亡くなった人)が残した財産に、税率を乗じて算出します。

計算の対象になるのは、原則として、相続や遺贈によって取得した財産です。死亡退職金や被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金なども、みなし相続財産として課税対象になります。現金や土地、家屋などの不動産はもちろん、貸付金など金銭的価値があるものも、相続税の計算対象に含まれます。

そして、税額の計算にあたって、被相続人が残した借入金などの債務については、遺産総額から差し引くことができます。財産から負債を差し引くことを「債務控除」といいます。債務が控除されると、課税される金額も少なくなりますので、控除できる金額が多いほど、結果として相続税の納付額も少なくなります。

遺産から差し引くことができる債務は、被相続人が死亡した時点で支払い義務が発生しており、その支払いが確実と認められるものです。

ただし、被相続人に課される税金で、被相続人の死亡後に相続人が納付した所得税などについては、被相続人が死亡した時に確定していない場合であっても、原則として債務控除の対象になります。債務控除の適用については居住地の要件などもありますので、必要に応じて税理士に相談しましょう。

債務控除の具体的な項目について考えてみましょう。

債務控除の対象になるのは、銀行からの借入金、生前に使用していた水道光熱費、病院への医療費などです。

少し分かりにくい項目としては、固定資産税が挙げられます。固定資産税とは、土地や建物などを保有している場合に課される税金です。土地や建物については、毎年1月1日時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に対して、その年度の固定資産税納付書が送付されます。

事業を営んでいる場合は、設備などの有形償却資産も課税対象になります。土地と家屋については、登記によって自治体が異動を把握できることから申告は不要です。一方、有形償却資産については、毎年申告が必要になります。発送時期は自治体によって異なりますが、毎年4月から6月ごろに固定資産税の課税明細や納付書が対象者に送付されます。

今まで述べてきたように、債務控除の対象になるのは、亡くなった時点で存在しており、本来は被相続人が支払うべきだった費用などです。

固定資産税の課税の基準日は1月1日のため、亡くなった年の1月1日に不動産を保有していれば、納税義務が発生します。未納付の固定資産税は、相続人が支払うことになるため、相続税の申告において債務控除することができます。

注意が必要なのは、納付時期です。固定資産税は、1月1日を基準日とするものの、納付書が送付されるのは実際には4月以降になります。一般的には、4回に分けて納付することになっており、相続税の計算において債務控除の対象になるのは、亡くなった時点で未納付の部分になります。

固定資産税の納付期限は、自治体によって異なります。また、1年分を一括払いによって納付することもできるようになっています。被相続人が1年分の固定資産税を支払い、その年に亡くなった場合は、亡くなった年における固定資産税はすべて納付していることになります。従って、その場合は債務控除の対象になる固定資産税はありません。固定資産税の納期限については、納付書を確認するか、自治体の窓口に問い合わせをすると良いでしょう。

固定資産税の納付に関して、具体的なケースで検討してみましょう。

たとえば、固定資産税の納期が4月、7月、12月、翌年2月であるケースで、被相続人が5月に亡くなった場合はどうなるでしょうか。

納付期限どおりに支払いを行っていた場合、7月、12月、翌年2月の部分が未納になります。すでに説明したとおり、固定資産税の課税基準日は1月1日のため、被相続人が死亡した時点で、未納である7月、12月、翌年2月に納付期限が到来する部分についても、支払い義務が発生しています。従って、この場合は7月、12月、翌年2月分の3回が債務控除の対象になります。

続いて、被相続人が1月に亡くなった場合について考えてみましょう。

この場合はまず、2月に納付期限が設定されている前年分が未納付になっています。また、納付書は届いていないものの、亡くなった年の固定資産税についても全額が未納付となります。亡くなった年の固定資産税については1月1日時点で納税義務が確定していますので、この場合は、2月に納付期限が到来する前年分と亡くなった年に係る固定資産税の全額が、相続税の債務控除の対象になります。

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続いて、共有の不動産についても考えてみましょう。

土地や建物を複数人で共同保有していた場合は、納税義務も持分に応じて発生します。そのため、未納付の固定資産税があれば、不動産の持分割合に応じた金額を、債務控除の対象とすることができます。

共有不動産の固定資産税は持分に応じて納税義務があるものの、一般的には、納付書は代表者にのみ送られ、それ以外の共有者には納付書が届きません。前に解説したとおり、共有不動産は持分に応じた部分のみ納税義務があるため、債務控除の対象になるのもその部分のみになります。従って、手元にある納付書と債務控除の対象が異なることがあります。

たとえば、被相続人が代表者になっていて納付書が届いていた場合は、記載された固定資産税の全額が債務控除の対象にはなりませんので、注意が必要です。被相続人が代表者になっておらず、納付書が届いていない場合は、状況に応じて、持分割合に応じた債務控除が可能かどうか検討したほうが良いでしょう。

相続人が決まるまでは、被相続人の不動産は相続人全員の共有になります。固定資産税についても、相続人全員が連帯して納めることになりますので、留意しましょう。

控除の対象になる債務については、申告書に記載することで遺産総額から差し引くことができます。ただし、固定資産税の債務控除を受ける手続きや相続税の申告は難易度が高いので、税理士に相談することをおすすめします。

(記事は2021年3月1日時点の情報に基づいています)

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