贈与税の税率速算表でわかる 贈与税は結局いくら? 特例も紹介

贈与税は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つに分かれます。暦年課税は1月1日から12月31日までに贈与により受け取った財産に対して、相続時精算課税は贈与者と受贈者間の贈与財産の累計が2500万円を超えた場合、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。では、具体的に贈与税の金額はいくらになるのでしょうか? 速算表や事例を使って解説します。
贈与税は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つに分かれます。暦年課税は1月1日から12月31日までに贈与により受け取った財産に対して、相続時精算課税は贈与者と受贈者間の贈与財産の累計が2500万円を超えた場合、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。では、具体的に贈与税の金額はいくらになるのでしょうか? 速算表や事例を使って解説します。
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贈与とは、自分(贈与者)の財産を相手(受贈者)に無償で与える意思表示をして、相手がそれを受け入れる行為です。贈与税は受贈者側に発生する税金で、課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があります。まずは2つの違いを説明します。
暦年課税は、1月1日から12月31日までに贈与で受け取った財産に対して贈与税がかかります。1年間に受け取った財産の合計が110万円の基礎控除額を超えた場合、後述の贈与税速算表の税率による贈与税がかかります。
暦年課税の特徴は、贈与する人(贈与者)と贈与を受ける人(受贈者)の対象者に制限がないという点です。また、暦年課税は1年間に受け取った財産の合計に対して贈与税を計算しますので、1年間に複数人から贈与を受けた場合はそれらの贈与を合計して贈与税を計算する必要があります。
相続時精算課税は、相続時精算課税選択届出書を提出した贈与者と受贈者間の贈与財産の累計が2500万円の特別控除額を超えた場合、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。ただし、暦年課税と異なり相続時精算課税による贈与には以下のような要件があります。
相続時精算課税については、2023年度の税制改正で大きな見直しがあり、2500万円の特別控除とは別に、年間110万円までの基礎控除が認められることになりました。適用は2024年1月の贈与からです。相続時精算課税制度を選んでいても、年間110万円以下の贈与であれば贈与税がかからず、累計2500万円の特別控除に含める必要もなくなります。
暦年課税と相続時精算課税は制度の違いから、贈与税の計算方法が異なります。
暦年課税の贈与税は、以下の計算式で算出します。なお、速算表とは、税額を簡単に計算するための税率表です。
(もらった財産の価額の合計額-110万円〈基礎控除〉)×速算表の税率-速算表の控除額
暦年課税の税率は「特例贈与」と「一般贈与」で区分されます。特例贈与とは、父母や祖父母から18歳(2022年3月31日以前の贈与により財産を取得した場合は20歳)以上の子や孫への贈与をいいます。一般贈与は特例贈与以外を指します。
下の表は贈与税の速算表です。同じ額の贈与でも一般贈与は特例贈与と比較して贈与税が高くなります。
同じ年に特例贈与と一般贈与の両方があった場合、贈与税の計算は以下のように少し複雑になります。
例えば、配偶者から100万円(一般贈与)と両親から400万円(特例贈与)があった場合の計算は以下のようになります。
(400万円+100万円)-110万円〈基礎控除〉=390万円
390万円×20%-25万円=53万円……一般贈与の税率で計算した税額
53万円×100万円÷(400万円+100万円)=10.6万円……一般贈与の割合に応じた税額
390万円×15%-10万円=48.5万円……特例贈与の税率で計算した税額
48.5万円×400万円÷(400万円+100万円)=38.8万円……特例贈与の割合に応じた税額
10.6万円+38.8万円=49.4万円……納めるべき贈与税額
相続時精算課税の贈与税は、以下の計算式で算出します。
(もらった財産の価額の合計額-特別控除額)×20%
もらった財産の価額の合計額とは、相続時精算課税選択届出書を提出した贈与者からの贈与財産の合計額をいいます。また、特別控除額は2500万円が限度(前年以前にすでに特別控除額を控除している場合には、その残額が限度)になります。
暦年課税と相続時精算課税の贈与について事例を使って説明します(事例1、2については現行の相続時精算課税制度、事例3については制度改正後の想定です)。
【事例1】
「40歳の長女が、父から2000万円、母から500万円の特例贈与を受け、父からの贈与について相続時精算課税選択届出書を提出する」
①父からの贈与(相続時精算課税)
2000万円<2500万円
※贈与税はかかりません
※2500万円-2000万円=500万円(残りの特別控除額)
②母からの贈与(暦年課税)
(500万円-110万円〈基礎控除〉)×15%-10万円=48.5万円(贈与税)
【事例2】
「事例1と同じ長女が翌年、父から1000万円、祖父及び祖母から各150万円の特例贈与を受ける」
①父からの贈与(相続時精算課税)
(1000万円-500万円(残りの特別控除額))×20%=100万円(贈与税)
②祖父及び祖母からの贈与(暦年課税)
(150万円+150万円-110万円)×10%=19万円(贈与税)
【事例3】
「30歳の長男が、祖母から100万円の特例贈与を受ける。祖父からは2000万円の贈与を受け、相続精算課税選択届出書を提出する」
①祖母からの贈与(暦年課税)
100万円<110万円 ※贈与税はかかりません
②祖父からの贈与(改正後の相続時精算課税)
2000万円-110万円<2500万円
※贈与税はかかりません
※2500万円-(2000万円-110万円)=610万円(残りの特別控除額)
贈与税の計算は複雑です。相続に強い税理士に相談すれば、その手間も省けますし、申告ミスも防げます。また適切に節税してもらえる可能性もあります。下記の記事では、相続に強い税理士の選び方を説明していますので参考にして下さい。
【関連】相続に強い税理士はどう探す? 選び方のコツと注意点を解説
現金、株式、不動産などの贈与を受ければ、原則贈与税の対象になりますが、内容によって贈与税がかからない贈与もあります。贈与税がかからない贈与について一部紹介します。
扶養義務者とは配偶者・父母・祖父母・子・孫・兄弟姉妹などをいいますが、その扶養義務者間の日常生活に必要な生活費や教育費の贈与は贈与税がかかりません。
18歳以上である人が父母や祖父母などの直系尊属からマイホームの購入資金やマイホームのリフォーム資金の贈与を受けた場合、一定額まで贈与税がかからない特例です。省エネルギー性などを備えた良質なマイホーム資金の贈与であれば、最大1000万円まで贈与税がかかりません。特例期間は2023年12月末までです。
婚姻期間が20年以上の夫婦間でマイホームの贈与やマイホームの購入資金の贈与を受けた場合は、最大2000万円まで贈与税がかかりません。
父母や祖父母などの直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合は、受贈者が30歳に達するまでに支払った教育資金は最大1500万円まで贈与税がかかりません。この特例期間は2026年3月末までです。
18歳以上50歳未満の人が父母や祖父母などの直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受け、受贈者が50歳に達するまでに支払った結婚・子育て資金は最大1000万円まで贈与税がかかりません。この特例期間は2025年3月末までです。
特定障害者(特別障害者又は特別障害者以外で精神または身体に障害のある人)が一定の手続きによりもらった贈与は6000万円(特定障害者のうち特別障害者以外の人が受けた贈与は3000万円)まで贈与税がかかりません。
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贈与税の計算が依頼できる税理士を探す贈与は贈与者と受贈者の双方の合意に基づくため、贈与者のみの意思で子や孫名義の通帳を作ってお金をその通帳に移動しても、子や孫名義の通帳は名義預金とされ、贈与と認められないので注意が必要になります。
また、双方の合意があれば贈与契約書などを作成しなくても贈与は成立しますが、将来税務調査があった時、贈与の事実を書面などに残していないと税務署への説明が難しく、税務署からいやな思いを受けることがあります。そのため、贈与の際には手続きを記録に残すなど、以下の点に注意が必要です。
贈与は相続税の節税対策にも利用されますが、暦年課税による贈与の場合、贈与者が亡くなる前3年以内の贈与(相続財産を受け取る人への贈与)は相続財産に持ち戻すので、節税効果がありません。さらに2023年度の税制改正で、持ち戻しの対象期間が、贈与者が亡くなる前3年以内から7年以内に延長されました。適用は2024年1月1日からです。相続税の節税を目的とした暦年課税による贈与を行う場合は、早めから対策が必要になります。
また、相続税の節税のために合計1000万円を10年に分けて100万円ずつ贈与することに合意した場合、毎年100万円の贈与を受けたことにはならず、あくまでも1000万円の定期贈与を受けたことになり、多額の贈与税が発生します。そのため贈与の方法にも注意が必要になります。
1年間の贈与が親からの1000万円だけで、暦年課税で課税される場合、特例贈与の速算表を使って以下のように算出します。
(1000万円-110万円)×30%-90万円=177万円
親や祖父母以外からの贈与は、すべて一般贈与となります。
不動産の場合は、贈与を受けた不動産の評価額が必要になりますが、贈与税の計算方法は現金などほかの財産の場合と変わりません。贈与の対象が土地の場合、評価額は路線価方式(路線価が決まっている地域の場合)または倍率方式(路線価が決まっていない地域の場合)で算出される相続税評価額となります。贈与対象が建物の場合、評価額は固定資産税評価額です。
2015年1月から相続税の基礎控除が下がり相続税の対象者が増加したことにより、贈与を活用して相続税を節税する人は増加しています。それは、贈与による節税が一番簡単にできるためです。しかし、実務においては間違った贈与をしている人、将来税務調査があったときに税務署に疑われるような贈与をしている人が非常に多く見受けられます。
贈与をしたのに税務で否認されてしまっては意味のない贈与になります。そうならないために、いままで贈与について専門家に相談したことがない人は、早いうちに相続に強い専門家に相談してみることをお勧めします。
(記事は2023年6月1日時点の情報に基づいています)
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