目次

  1. 1. 法定後見は、家庭裁判所が報酬を決定
    1. 1-1. 資産が多い場合は後見監督人報酬が継続的に発生
  2. 2. 任意後見は必ず任意後見監督人報酬が発生
  3. 3. 家族信託は高額なランニングコストを想定しなくて良い
    1. 3-1. 注釈の説明

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法定後見の場合は、親族後見人でも職業後見人でも(※1)、自分たちで報酬額を決めることはできず、後見人が家庭裁判所に「報酬付与審判の申立て」をし、家庭裁判所が後見人報酬を決定します。

職業後見人が就任する場合は、原則として1年間の後見人の職務内容、被後見人の年間収支・保有財産等をもとに金額が算定され、月額で金2~6万円程度というのが通常の相場になります。1年の間に後見人として不動産売却や遺産分割協議に参加するなど、被後見人の金融資産の増額に関与した場合には付加報酬を求めることも可能となりますので、その年の後見人報酬が金100万円近くなることもあります。

本人を支える家族・親族がいれば、その方が後見人に就任するのが理想的ですし、親族後見人は無報酬とされる方が多いです(もちろん親族後見人でも報酬付与審判の申立てをすれば報酬を貰うことが可能です)。
なお、ここで留意が必要なのは、親族後見人が報酬付与の申立てをしなければ、法定後見に関するランニングコストは発生しないと思っている方が多いことです。
しかし、本人が一定規模以上の金融資産を保有している場合には、弁護士・司法書士等が「後見監督人」に選任されるケースが多いので(※2)、被後見人の財産から毎月金1~3万円の後見監督人報酬がランニングコストとして、本人が亡くなるまで発生し続ける可能性があります。

つまり、ランニングコストを抑えるべく家族・親族が後見人になったとしても、年間12〜36万円程度、後見制度を利用後10年間長生きすると総額で120~360万円くらいのランニングコストが発生する可能性があります。

任意後見の場合、任意後見人への報酬は、任意後見契約の中で定めておきますので、家庭裁判所が報酬金額について関与することは原則ありません。一方で、任意後見の制度上、必ず「任意後見監督人」(通常は弁護士・司法書士等が就任)が就きますので、任意後見契約において任意後見人は無報酬と定めても、前述の任意後見監督人報酬というランニングコストは絶対に発生します。
もし、任意後見人も法律専門職に依頼した場合は、任意後見人報酬が月額金3~5万円程度、任意後見監督人報酬は月額金1~2万円程度、合計で月額金4~7万円のランニングコストを見込む必要があります。

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一方の家族信託の場合、信託業法の規制があり、法律専門職等が家族信託の受託者になることはできず、原則として家族・親族が受託者になります。従って、信託契約を締結して受託者による財産管理がスタートした後は、ランニングコストを想定する必要がありません。

信託契約書の条項に基づいて、受託者に「信託報酬」を支払う場合もありますが、これは身内たる受託者に敢えて金銭を渡しているのであって、一般的には必要不可欠なランニングコストとは言えません。受託者に対する監督指導役として、また相談相手として、家族・親族以外の法律専門職などを「信託監督人」として置かない限り、外部に支払うランニングコストは原則発生しません。

以上を踏まえますと、「家族信託はコストがかさむ」という誤解をされがちですが、老親を支える長期的な期間で考えた場合、支え手となる家族の負担軽減、将来の争族回避となどのメリットだけではなく、総コストの面からも家族信託の優位性・メリットが出てくる可能性をご理解下さい。

(※1)本人を支える家族・親族が後見人になる場合を「親族後見人」といい、司法書士や弁護士等の専門職がご家族に代わって後見人に就任する場合を「職業後見人」といいます。

(※2)被後見人本人に不動産が少なく、資産の大半を預貯金が占める場合は、後見監督人を選任する代わりに「後見制度支援信託」を導入するケースが増えています。これは、被後見人の財産のうち、日常生活に必要不可欠と思われる金銭を後見人の手元に残し、通常使用しない残りの余剰金銭を信託銀行等に金銭信託する仕組みです。
この金銭信託は、後見人が勝手に下ろすことはできず、信託財産を払い戻したいときは何のためにいくら必要かをあらかじめ家庭裁判所に申請し、家庭裁判所が出す「指示書」によってはじめて信託銀行等から下ろせるような仕組みとなっています。
なお、この仕組みは成年後見および未成年後見にのみ利用でき、保佐、補助および任意後見で利用することはできません。

(記事は2020年10月1日時点の情報に基づいています)

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前回は、成年後見と家族信託の「導入時のコスト」について解説しました。
あわせて読んでいただくと、より一層ご理解いただけるようになっています。