目次

  1. 1. 法定後見は申立時、任意後見は契約時と申立時に費用が発生
    1. 1-1. 法定後見の場合
    2. 1-2. 任意後見の場合
  2. 2. 家族信託は専門職に依頼する費用が必ず発生
  3. 3. 家族信託の導入コストは、未来の安心のための‟保険料“

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まずは成年後見制度から解説します。
同制度の導入にかかる費用については、「法定後見」と「任意後見」に分けて考える必要があります。

法定後見の場合、既に本人の判断能力が低下・喪失している場合に利用する仕組みですので、導入費用は、家庭裁判所への後見人選任申立ての費用となります。この手続きを本人や家族で行える場合は、裁判所に納付する印紙代金1万円弱で済みます。さらに裁判所の判断により医師の鑑定が実施される場合は、担当医に支払う鑑定料が5~10万円程度発生します。
しかし、集める必要書類や記入する書類が多いので、司法書士・弁護士等の専門職に申立て手続きを依頼する方も多いです。この場合は、前述の実費以外に専門職への報酬が金10~15万円程度発生するものと思われます。

任意後見の場合は、将来に備え本人が元気なうちに、老後を託したい相手との間で任意後見契約を公正証書で取り交わす必要があります。この作成費用に関し、公証役場に支払う手数料等の実費が金2~3万円となります。この契約書作成事務を司法書士等の法律専門職に依頼する場合は、やはり金10~15万円程度の報酬がかかるでしょう。
そして将来、本人の判断能力が低下・喪失して、任意後見契約を発効させる必要性が出てきた際には、任意後見を発動するための申立て(任意後見監督人選任申立て)を法定後見と同じように家庭裁判所にすることになります。この場合の費用は、前述の法定後見の実費と報酬と同じイメージになります。

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家族信託を導入する場合、まず、公証役場で信託契約公正証書を作成する手数料が発生します。
これは、受託者に管理を託す信託財産の評価額により変動します。自宅と預金合わせて数千万円の信託財産なら金3万円前後、1億を超える信託財産となれば10万円超という概算イメージとなります。
また、信託財産に不動産がある場合は、不動産登記簿に受託者の名前を掲載する「信託登記」をする必要がありますので、この登記手続きの際に収める登録免許税が不動産の固定資産税評価の0.4%(土地は現時点で軽減措置により0.3%)かかります。

なお、家族信託に精通した法律専門職に依頼しないで信託契約公正証書を作成することは、後々に様々な法律的・税務的トラブルを巻き起こしかねませんので絶対に避けるべきです。
家族会議の中で老親を支える仕組みの検討から始まり、家族信託の設計をし、それをもとに信託契約書作成のコンサルティングを法律専門職に依頼する場合、かなりの業務ボリュームが発生しますので、信託財産の大きさに応じて数十万円以上のコンサルティング報酬がかかるでしょう。また、信託登記も司法書士に依頼することになるでしょうから、この登記手続き報酬も10万円単位でかかると思われます。

以上をまとめますと、信託財産として何を託すかにもよりますので、かなり大雑把な概算イメージとなりますが、信託契約で管理を託す財産の評価額(不動産は固定資産税評価額)の1.2~2%が家族信託導入にかかる総コストとご案内することが多いです。

将来において困らないために‟保険“の意味で親が元気なうちに家族信託を実行しておくと、今後10~数10年の長期にわたり老親を支える仕組みが構築できて安心と言えます。家族信託の導入コストは、老親を支えるための、さらには、争族対策にも有効な必要経費という捉え方ができるでしょう。

(記事は2020年9月1日時点の情報に基づいています)

前回は、収益不動産がある場合の信託報酬の決め方について解説しました。
引き続きこの連載では、家族信託に必要な知識やトラブル予防策を読み解いていきます。

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