目次

  1. 1. 不動産管理は自主型か委託型かを確認
    1. 1-1. 自主管理型なら賃料の1割程度
    2. 1-2. 管理委託型には留意点あり
  2. 2. 「もらいすぎ」で税務署から指摘されないためには
    1. 2-1. 信託報酬の妥当性は、最終的には個別判断を

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前回は、受託者の責任と負担に応える対価として、「信託報酬」を設定することができる旨をお話しました。今回は、アパートや駐車場のような収益物件(賃貸不動産)を信託財産に入れて受託者に管理を任せる場合において、信託報酬の決め方で注意すべき点をお話します。

親が賃貸不動産を所有している場合、賃貸管理方法として、大きく二つに分けることができます。一つは、オーナーたる親自身(あるいはその家族)が直接賃借人と家賃のやり取りを行う「自主管理型」で、もう一つは、不動産管理会社に家賃等の管理をお願いする「管理委託型」です。

自主管理型の場合、家族信託を実行すると、受託者が賃貸人(貸主)の権利と義務を丸ごと引き受けることになり、賃借人とのやり取りは全て受託者が担うことが原則となります(下図1-1参照)。いわば、受託者が不動産管理会社の立場を担う形になりますので、受託者に対する信託報酬は、管理会社に払う管理委託報酬に準じて、毎月の賃料収入の5~10%程度を貰うことが一般的です。

図1-1:自主管理型の場合
図1-1:自主管理型の場合

一方、管理会社に既に管理を委託している「管理委託型」の場合(図1-2参照)、当該賃貸不動産を信託財産に入れる際には注意が必要です。

図1-2:管理委託型の場合
図1-2:管理委託型の場合

家族信託を実行すると、「自主管理型」と同じように受託者が不動産オーナーとしての権利と義務を丸ごと引き受けた上で、受託者から管理会社に委託するという形になります。つまり、オーナーと管理会社との管理委託契約に受託者が割り込む形になり、受託者と管理会社とで改めて管理委託契約を締結し直すことになります(下記図2参照)。それにより、賃料の流れも変わり、管理会社から振込まれる毎月の賃料は受託者の管理する口座に振り込まれることになります。

図2:管理委託型は、オーナーと管理会社に受託者が割り込む
図2:管理委託型は、オーナーと管理会社に受託者が割り込む

「管理委託型」において受託者が信託報酬を受け取る場合、受託者業務に対する適正な対価となっているかどうかに注意が必要です。
たとえば、毎月の賃料収入の5%を管理会社に支払っている場合、それとは別に受託者が10%前後の信託報酬をもらえるか(オーナーたる親は合計で15%の管理コストを支払っていることになる)という問題です。信託財産が賃貸物件だけなら、管理会社に丸ごと管理委託することで受託者の賃貸管理業務はほぼ無くなりますから、受託者が毎月10%の信託報酬をもらうのは、業務に対する対価としてはもらいすぎ(管理コストの二重計上)として税務当局から指摘されかねません。

このようなケースでは、税務的な憂いを極力排除するために、例えば、受託者がオーナー(受益者たる親)から毎月10%の信託報酬をもらい、受託者がそこから5%を管理会社に支払う(受託者の手取りは実質5%)ような形態が考えられるでしょう。もちろん、管理会社に委託する業務の他に受託者が担う管理業務があれば、その業務ボリュームに見合った信託報酬を受け取ることは問題ありません。

なお、信託財産に自宅や老後の余剰資金たる現金も入れ、受託者が賃貸物件の管理だけでなく、親の毎月の生活費等の管理・給付を担う場合(賃貸管理業務以外にも受託者の業務が想定される場合)は、受託者がまるまる10%の信託報酬を受け取ることに問題は無いかもしれません。つまり、税務上も明確な基準が設けられている訳ではないので、個々の事情や受託者業務の実態を踏まえ、個別に検討・判断をしていくことになります。

(記事は2020年9月1日時点の情報に基づいています)

前回は、受託者の信託報酬の決め方について解説しました。
引き続きこの連載では、家族信託に必要な知識やトラブル予防策を読み解いていきます。

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