目次

  1. 1. 分割できない不動産を分ける方法とは
  2. 2. そのままの形で引き継ぐ「現物分割」
  3. 3. 代償金を支払って解決する「代償分割」
  4. 4. 売却したお金を分け合う「換価分割」
  5. 5. 複数で持ち合う「共有」
  6. 6. 意見が合わなければ遺産分割調停・審判で決定
  7. 7. まとめ

遺産相続をしたら、相続人たちが話し合って遺産の具体的な分け方を決めなければなりません。これを遺産分割協議と言います。
現金や預貯金などであれば1円単位で法定相続分に従って分ければ良いのですが、不動産の場合そうはいきません。不動産は世界に1つしかない財産で、お金のように細かく分割することはできないからです。不動産だけではなく株式や絵画、骨董品、宝石などの動産類についても同じことがいえます。

遺産の中に不動産や株式、動産類のような「1円単位では分割できない財産」が含まれているときには、以下の4種類の対応方法から選択します。

  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割
  • 共有

それぞれの対処方法について、詳しくみていきましょう。

現物分割とは、不動産などの遺産を「そのままの形で引き継ぐ」方法です。たとえば土地建物を長男などの特定の相続人が1人で相続したり、土地を法定相続割合と同じ割合に「分筆」して各相続人が取得したりします。
分筆とは、一筆の土地をいくつかの部分に分けてそれぞれ登記して「別の不動産」にすることです。ただし分筆できるのは「土地」のみであり「建物」の分筆はできません。また条例などによって分筆が禁止されているエリアもあります。
現物分割は相続手続きが簡単になるメリットがありますが、相続人間で不公平になりやすい点が問題です。特定の相続人が不動産を独り占めしてしまうと、他の相続人から不満が出て遺産分割協議がまとまらなくなる可能性が高くなります。

不動産は分割しにくいので、相続時にトラブルを招くこともあります。どのような形の相続が適しているのか、シミュレーションすることも大切です。弁護士に相談すると、適切なアドバイスを受けることができます。

2つ目の遺産分割の方法は「代償分割」です。これは不動産などの財産を1人の相続人が取得し、他の相続人に法定相続割合に応じた代償金を支払って解決する分け方です。
たとえば3,000万円の価値のある不動産があり、3人の子どもが相続するとしましょう。
長男が不動産を相続し、兄弟2人にそれぞれ1,000万円ずつ(法定相続分である3分の1)の代償金を払って解決します。

代償分割は現物分割と違い、代償金が支払われるので他の相続人から不満が出にくい分け方です。また分筆できない土地でも建物でも公平に分割できるメリットもあります。
ただし代償分割するときには、不動産の「評価」が必要です。不動産には「定価」がなく、評価方法にもいくつか種類があるので、相続人たちが「どの評価方法を適用するか」でもめてしまうケースがあります。また不動産の取得を望む相続人に「代償金の支払能力」がなかったら利用できません。

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換価分割は、不動産を売却して売却金を相続人間で分け合う方法です。相続人たちが協力して不動産を売って諸経費を差し引き、手元に残った金額を法定相続割合に応じて分配します。
たとえば3,000万円の不動産があって3人の子どもが相続するとき、不動産が3,000万円で売れて諸経費が300万円かかったとします。すると残りの2,700万円を子ども達が3分の1ずつにわけるので、全員が現金900万円ずつを受け取ります。
換価分割の場合、不動産を売却してしまうので「評価」の必要がないため、どの評価方法を適用するかで相続人たちがもめるリスクはありません。
ただし売却を急ぐと安値でしか売れない可能性もありますし、諸経費が差し引かれるので手元に残る金額が思ったより低くなってしまうケースも少なくありません。
せっかく親が残してくれた不動産を失ってしまう寂しさもあるでしょう。

共有は、不動産を「分けない方法」です。相続人たちが話し合いをしてもどうしても不動産の分け方について決められない場合や、そもそも話し合いができない場合などに「とりあえずそのままにする」のが共有です。
共有とは、不動産を複数の人が共同所有することです。相続した不動産を共有する場合、法定相続人が法定相続割合に応じた「共有持分」を取得してそのまま全員で共有状態にします。

ただし共有状態の不動産は、1人1人の共有持分権者が自由に管理処分できません。たとえば「賃貸に出して活用したい」、「リフォームしたい」などと考えても他の共有持分権者の同意がないと自由に動けません。活用が難しいので放置状態になり、固定資産税だけがかかるので売却したいと思っても売却には「共有持分権者全員の合意」が必要です。
共有持分権者が死亡して再度の相続が発生したときにはさらに共有持分が細分化されて「誰が権利者かわからない状態」になってしまうケースも少なくありません。

このような問題があるので、相続不動産を共有のままにするのはお勧めではありません。不動産を相続したら、現物分割、換価分割、代償分割のどれかの方法で分けましょう。

自分たちで話し合っても解決できなければ、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てて、裁判所で話し合いを行います。調停でも合意できなければ、「審判」という手続きに移行し、家庭裁判所が遺産の分け方を決定します。
ただし審判になると、必ずしも相続人たちの希望通りの分け方にはなりません。
裁判所は基本的に「相続人たちに公平になるように(法定相続割合に応じて)分割する」ので、誰か1人に不動産を与える現物分割は行いません。
不動産を分筆できず取得を望む相続人に代償金を払う余裕がない場合には、不動産を売却して分けるしかないので「競売命令」が出る可能性があります。誰も代償分割を望んでいなくても、もめていると不動産を売らないといけなくなるリスクが発生するのです。
競売になると、不動産は市場価格より安値でしか売れないケースも多いので、全員が損をしてしまう可能性も高まります。

不動産の遺産分割では、上記のようなリスクも理解した上でできるだけ自分たちの話し合いによって決定しましょう。分け方が分からなくて困ったときには弁護士などの専門家に相談してみてください。

(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)