目次

  1. 1. 契約書に定めれば「信託報酬」を得られる
    1. 1-1. 「報酬」は生前贈与の代替としても機能する
  2. 2. 報酬額の決め方は、信託財産や業務量とのバランスが重要!
    1. 2-1. 実務経験に基づいて報酬額のアドバイス

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受託者は、財産の管理・処分・給付といった信託事務の処理の対価として信託財産から「信託報酬」をもらうことができます(信託法54条1項)。ただし、信託行為(信託契約書等)に信託報酬の条項を盛り込むことが前提で、条項を設けなければ、受託者は無報酬で信託事務を行うことになります。

家族信託は、家族による家族のための財産管理のため、高い報酬額は想定していません。しかし、一般的には、財産を持つ老親を受託者となる子が生涯支えるという長期的な責任と事務の負担を考え、いくらかの対価は渡したいという親世代も少なくありません。

そこには、複数の子がいる場合に、財産管理の労に報いる対価を設定し負担や貢献度に応じて親からの財産の受取額に差を出すことで、逆に他の子との公平感を持たせたいという想いがあります。また、受託者となる子側からみても、毎月のお小遣い的な報酬を貰うことで、信託事務という仕事としての責任感・使命感を持つことにも繋がるようです。

たとえ複数の子がいなくても、親の判断能力が低下しても、生涯にわたり合法的に親の財産を少しずつ子に渡す方法として、信託報酬を検討する人もいます。なぜなら、信託報酬は受託者が預かった信託財産から信託契約書等に基づき定期的に貰うことが原則であり、受益者たる親がその都度支払う訳ではないため、親の判断能力の低下に影響を受けずに報酬を貰い続けることができるからです(親が元気にうちは「贈与」をすればいいのですが、親の判断能力が低下すると「贈与」自体ができなくなるので、贈与とは別枠で財産を渡したいという想いを形にする方法となります)。

なお、信託報酬は、受け取った受託者の「雑所得」として所得税の課税対象になりますので、注意が必要です(詳細は別コラムで)。

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家族信託における信託報酬の額に、法的な規制や相場があるわけではありません。したがって、委託者と受託者が合意し、信託契約書にその旨を盛り込んでおけば、理論上はいくらでも構いません。ただし、信託報酬という名目でありながら、実体は「贈与」ではないかと税務当局から指摘されないように、信託財産の規模や信託事務の業務量と報酬額との適正なバランスを考えることが重要です。

信託報酬の貰い方は、毎月でも結構ですし、半年や1年ごとにまとめて貰う方もいます。
報酬額の決め方としては、毎月決められた金額を設定する「定額報酬」の場合と信託財産から得られる利益の一定割合とする「定率報酬」の場合があります。

定額報酬の場合、受託者は成年後見人と同じような役割を果たすことから、職業後見人に対する家庭裁判所の報酬付与審判の相場を参考に、月額2万~6万円程度にすることをお勧めすることが多いです。

一方、収益物件を信託財産に入れて賃貸管理まで任せる場合は、定率報酬を採用される方が多く、その場合は不動産管理会社に払う管理委託手数料が参考になります。受託者は、管理会社と同じように、賃料の受領・督促をし、賃貸借契約の締結をするため、毎月の賃料収入の5~10%を信託報酬として設定されるケースが多いです。

(記事は2020年9月1日時点の情報に基づいています)

前回は、「遺言」と「遺言信託」「契約信託」の違いについて解説しました。
引き続きこの連載では、家族信託に必要な知識やトラブル予防策を読み解いていきます。

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