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「子どもに迷惑をかけたくない」から始まる墓じまいのありかた【未来へつなぐ 人生のしまいかた】
終活セミナー講師の吉原友美さんが終活について語ります
終活セミナー講師の吉原友美さんが終活について語る連載「未来へつなぐ 人生のしまいかた」。ここ数年、墓じまいの相談に来られる方が、最初に口にする言葉が変わってきているそうです。特に増えているのが、「子どもに迷惑をかけたくない」というひと言です。お墓を代々受け継いでいくのが当たり前ではなくなった今、自分の代で整理を考え始めた親世代の、静かな選択が広がっています。
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墓じまいの理由は、「不便だから」から「子どものため」へ
厚生労働省が発表した『衛生行政報告例(2024年度)』によれば、お墓から遺骨を取り出して別の場所に移す「改葬」の件数は、2024年度に17万6105件と過去最多を更新。2014年度の8万3574件と比べると、10年でおよそ2倍になっています。お墓の整理は、もはや特別なことではなく、現代家族の選択肢のひとつとして広がっています。
終活セミナー講師として多くの方から相談を受けてきた実感として、その理由の中身も変わってきています。以前は「お墓が遠くて管理が大変だから」という声が多かったのが、最近は冒頭でお伝えしたように「子どもに迷惑をかけたくないから」という理由が増えてきました。
代々受け継ぐことが、子ども世代の負担になりやすい三つの理由
お墓は本来、ご家族の絆をつなぐ大切な存在です。けれど、その「つなぐ」ことが、子どもや孫世代にとって重荷になりやすい現実があります。
その理由の一つ目は、お墓が遠いこと。親世代がお墓のある地方に住んでいても、お子さんは進学・就職で都市部に移り住むケースが大半です。年に1度のお墓参りでさえ、丸1日がかりになることがあります。
二つ目は、管理費が長く確実にかかり続けること。墓地の管理費は年に数千円から2万円ほど。一見少額ですが、子ども・孫・ひ孫へと引き継がれていけば、大きな負担になります。
そして三つ目は、少子化によって、お墓を継ぐ人が少なくなっていること。お子さんがひとりの場合、その子がご両親、祖父母、配偶者側のお墓まで背負うとなれば、個人では支えきれない負担になります。
「お墓のこと、どう思っている?」と、自分から話してみる
とはいえ、突然「墓じまい、どう思う?」と聞いても、若い世代にはピンとこないことが多いものです。今のお子さんやお孫さん世代は、お墓に手を合わせた経験そのものが、親世代に比べてずっと少ないからです。まずは、「お墓ってね、こういう場所だったんだよ」と、その意義を伝えることから始めてみてください。
そのうえで、お子さんやお孫さんに気持ちを聞いてみましょう。「お墓のこと、あなたたちはどう思ってる?」「私たちが元気なうちに、ちゃんと考えておきたくて」──こんなひと言からで構いません。
お子さんたちは、ご両親から話を切り出してもらうのを待っています。親が先に「あなたたちの負担にならないようにしたい」と切り出してくれた瞬間、ホッとする方も多いでしょう。
そして、もう一つ大切なのは「決めるための話し合い」にしないこと。最初は「気持ちを聞く」だけで十分です。少しずつ、何度かに分けて話していくくらいで、ちょうどよいと思います。
「話せる場所」を、家族のために残すということ
ここで少し、立ち止まって考えてみたいことがあります。私たちはなぜ、これほど長くお墓を大切にしてきたのでしょうか。
檀家制度の歴史は、実は400年ほどとされています。江戸幕府がキリスト教を禁じるなかで、民衆を寺院に所属させる仕組みとして広がりました。「家のお墓を代々守る」という今のかたちは、それほど古い習慣ではありません。
けれど、その下にもっと深い感覚が流れています。民俗学者の柳田國男は『先祖の話』で、日本人は、亡くなった人は祖霊となり、山々から家族の繁栄を見守っていて、お盆や正月に帰ってくると感じてきた、と述べています。ご先祖さまをそばに感じる感覚は、古くから日本人の中に受け継がれてきたものなのです。
つまり、お墓というかたちが続いてきた本当の理由は、制度でも義務でもありません。生きている家族にとって、亡くなった方と「話せる場所」が必要だったからではないでしょうか。
自分が亡くなったあとのことは、誰にもわかりません。けれど、残されたご家族にとっては、「お父さん、今年も無事に過ごせたよ」「おばあちゃん、孫が生まれたよ」と報告できる場所があることに、確かな意味があります。それは、生きている人を支える場所なのです。
墓じまいを考えるとき、本当に問うべきは「お墓を残すか、なくすか」ではありません。「これから先、家族が安心して話せる場所を、どこに、どんなかたちで持つか」ということ。それこそが、長く日本人が大切にしてきたことの中身なのではないでしょうか。
急がない。迷う時間そのものが家族と向き合う時間
墓じまいは、急いで決めるものではありません。「子どもに迷惑をかけたくない」という気持ち、ご先祖さまへの感謝、親戚との関係、お子さんやお孫さんが大人になったときの気持ち──いろんなことに思いを巡らせる時間そのものが、何より大切な「家族と向き合う時間」だと、感じています。
最近は供養のかたちも多様になりました。墓じまいを経験した、または検討している230人を対象に行われた『墓じまい実態調査2026』(墓じまいパートナーズ)では、墓じまい後の供養先として「永代供養墓」が48.7%、「納骨堂」16.5%、「樹木葬」6.5%となっています。お墓を残したまま、お寺に永代供養をお願いしておく方法もあります。完全に閉じなくても、子ども世代の負担を減らす道はいくつもあるのです。
どれが正解ということはありません。大切なのは、家族みんなが「ここで手を合わせたい」と思える場所を、ゆっくり選ぶこと。「子どもに迷惑をかけたくない」というその想いは、決して間違っていません。それと同じくらい大切なのは、「これから先、家族がご先祖さまと話せる場所をどう残すか」を、家族みんなで考えていくことなのです。
(記事は2026年11月1日時点の情報に基づいています)
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