どんな葬儀でも「ちゃんと送れた」と思えるために【未来へつなぐ 人生のしまいかた】
終活コーディネーターの吉原友美さんが終活について語る連載「未来へつなぐ 人生のしまいかた」。家族葬や一日葬、直葬などさまざまな葬儀のかたちが広がる今、お葬式の時間や過ごし方は変化しています。こうした時代だからこそ、大切な人を「安心して送れた」と思うために何が必要なのか。現場での経験や事例をもとに、そのヒントをお伝えします。
終活コーディネーターの吉原友美さんが終活について語る連載「未来へつなぐ 人生のしまいかた」。家族葬や一日葬、直葬などさまざまな葬儀のかたちが広がる今、お葬式の時間や過ごし方は変化しています。こうした時代だからこそ、大切な人を「安心して送れた」と思うために何が必要なのか。現場での経験や事例をもとに、そのヒントをお伝えします。
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近年、お葬式のかたちは大きく変わりました。株式会社鎌倉新書が、直近2年以内(2024年3月~2026年3月)に喪主(または喪主に準ずる立場)を経験した40歳以上の2000人を対象に実施した調査(『第7回お葬式に関する全国調査(2026年)』)によると、行った葬儀は、家族葬が47.0%、一般葬が30.2%、一日葬が11.9%、直葬・火葬式が10.8%となりました。お通夜を省いた一日葬や、火葬のみで送る直葬も広く選ばれるようになっていることがわかります。
一方で、葬儀の現場や、グリーフケア(大切な人を亡くした心の痛みに寄り添い、サポートすること)の相談の場にいると、お別れの時間が限られたご家族から、「悲しみの整理に時間がかかった」「もっとゆっくりお別れをしたかった」という声を聞く機会もあります。
「実感が湧かないまま、半年が過ぎてしまいました」
「父が亡くなったことを、いまだに受け入れられていない気がするんです」
葬儀を終えてしばらく経ってから、こうした言葉とともに相談に来られる方がいます。共通しているのは、お通夜を省いた一日葬や、火葬のみの直葬など、お別れの時間を短くしたかたちで送られたケースが多いということです。
もちろん、葬儀を簡略化したことが直接の原因だと言い切ることはできません。ただ、お別れの時間を十分に持てなかった方ほど、その後の悲しみの整理に時間がかかる傾向は、現場で多くのご家族と接するなかで感じています。
葬儀は単なる儀式ではなく、残された人の心を整える時間でもあります。
お通夜の夜、棺のそばで親族と昔話を交わす時間。出棺の前に、一人ひとりが花を手向ける時間。火葬を待つ間、家族で過ごす数時間。その場では「ただ時間が過ぎていくだけ」のように感じられるかもしれません。しかし、その一つひとつが、故人の死という現実を、少しずつ心に染み込ませていく大切なプロセスなのです。
見送る側にとって、お別れの時間を自分たちなりに納得できるかたちで持てないまま日常へ戻ると、心が現実に追いつかないことがあります。そして数カ月、あるいは1年ほど経った頃になって、しまい込んでいた悲しみが一気に押し寄せてくる――。そうしたご家族を、私はこれまで数多く見てきました。
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相続の相談が出来る弁護士を探す佐藤さん(仮名)は、お父様を一日葬で見送りました。「高齢の親族への負担を考えたこと」「父も派手なことは望まないだろう」と家族で話し合って決めたそうです。1日のうちに、お父様とのお別れを終えました。
葬儀を終えた当初は「これでよかった」と思い、仕事にもすぐに復帰しました。しかし半年ほど経ったある日、お父様が好きだったテレビ番組を見た瞬間、涙が止まらなくなったといいます。
「父が亡くなったことを、そのとき初めて実感しました。それまでは、ただ留守にしているような感覚だったんです」
ご相談に来られた佐藤さんは、「もう一度、ちゃんとお別れを言いたい」と話されました。
そこで、お父様と親交のあった方々を招いてお別れの会を開きました。思い出話が次々と語られ、佐藤さんが初めて知るお父様の一面もあったそうです。会の終わりに、佐藤さんはこうおっしゃいました。
「半年遅れだけど、やっと父を送り出せた気がします」
もうひとつ、ご紹介したいお話があります。仮に鈴木さんとお呼びします。
鈴木さんがお父様を家族葬で見送った際、鈴木さんの高校生のお子さんも参列していました。お子さんにとっては、普段からとても可愛がってくれていたおじいさまでした。
ご家族は、お通夜は行わず1日で見送るかたちを選びました。お別れは慌ただしく過ぎていきましたが、お子さんは涙をこらえながら、最後までしっかりと見送っていたそうです。
ところが葬儀から1カ月ほど経った頃、お子さんは学校へ行けなくなってしまいました。
「教室に座っていると、急におじいちゃんの顔が浮かんできて、涙が止まらなくなるんです」
大切な人の死は、頭では理解していても、心が受け止めるまでには時間がかかります。特に思春期の子どもは感受性が豊かで、自分でも気付かないうちに深い悲しみを抱え込んでしまうことがあります。十分に悲しむ時間を持てなかったことも影響し、その思いが後になって表れることも少なくありません。
鈴木さんはスクールカウンセラーにも相談し、お子さんと一緒にお父様の思い出をアルバムにまとめる時間を持ちました。思い出を語り合い、悲しみを少しずつ言葉にしていくなかで、お子さんは徐々に学校へ通えるようになっていったそうです。
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相続の相談が出来る弁護士を探す葬儀の役割は、亡くなった方を見送ることだけではありません。残された家族が、その死を少しずつ受け止めていくためのものでもあるのです。
もちろん、一日葬や直葬、家族葬という形式そのものに良し悪しがあるわけではありません。費用や事情に応じて、無理のないかたちを選ぶことも必要です。大切なのは、どのような形式を選ぶかではなく、それぞれのご家族にとって納得できるかたちで故人と向き合い、お別れをする時間を持てたかどうかです。
どのようなかたちで送るかを考えるとき、どうか「残された人の心の時間」も、選択肢のひとつに入れてみてください。それは亡くなった方への最後の贈り物であると同時に、これから生きていくご自身への、何よりの支えになるはずです。
涙を流すこと。思い出を語ること。手を合わせること。そうした一つひとつの積み重ねが、「ちゃんと送ることができた」という実感につながります。その実感は、亡くなった方を心の中に受け入れ、残された人が前を向いて生きていくための支えになるのです。
現場で日々ご家族と向き合うなかで、お別れの時間は、亡くなった方のためだけではなく、残された人が前を向いて生きていくためにも欠かせないものだと感じています。
(記事は2026年8月1日時点の情報に基づいています)
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