相続がおきてまず確認することは、亡くなった被相続人が遺言書を作成していたかどうか、ということです。遺言書を作成していた場合には、遺言書の内容に従って相続財産の手続きを行っていくことになります。一方で、被相続人が遺言書を作成していなかった場合には、相続人の間で遺産分割協議という話し合いを行って、誰がどの財産を相続するかを決めなければなりません。遺産分割協議は、相続人間で話し合いがまとまれば、遺産分割協議書を作成し、それにしたがって相続手続きを行います。

遺産分割協議は誰に相談すべき?

遺産分割協議は、誰がどの財産を相続するかを相続人同士で話し合いをすることです。相続財産が預貯金だけであれば、相続人間で預貯金の分け方を決めて、話し合いが終わるケースもあるでしょう。ですが、相続財産は、預貯金のように分けやすい財産だけではありません。土地や建物といった不動産は、平等に分けることは難しいですし、共有で相続すれば、その後の処分も共有者で話し合って決めなければなりません。
こうしたケースでは、相続人同士の話し合いではまとまらず、最終的には家庭裁判所で調停や審判といった手続きを行うことになり、相続手続きが長引くことにもなりかねません。そのため、遺産分割協議で、相続人同士では話し合いがまとまらなさそう、という場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、相続人の代理人として、他の相続人との交渉を行いますので、相続人間で直接話し合いをする必要がなくなり、相続人の負担を減らすことができますし、早めに相談することで、紛争の長期化を避けることにもなります。

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遺産分割協議書の作成を頼める専門家は?

遺産分割協議がまとまったら、相続人間で話し合って決めた内容を記載した、遺産分割協議書という書面を作成します。相続人間でもめることなく遺産分割協議がまとまった場合でも、いざ遺産分割協議書を作ろうとすると、遺産分割協議書ってどう書いたらよいのか?という悩みがでてきます。
せっかく相続人間で話し合いがまとまっても、遺産分割協議書の記載に間違いがあって、相続手続きができない、財産に漏れがあって作り直さなければならない、という事態にならないようにするためにも、遺産分割協議書の作成も、専門家に相談することをおすすめします。
相続人間ですでに話し合いがまとまっている場合には、司法書士や行政書士も遺産分割協議書を作成することができます。

注意すべき点としては、司法書士や行政書士は、相続人の代理人として交渉を行うことはできませんので、相続人間でもめている場合には、弁護士に依頼する必要があります。相続財産が140万円以下の場合には、司法書士も代理人として交渉を行うことが可能です。

相続税について相談すべき専門家は?

相続で気になることといえば、税金、すなわち相続税です。相続税の申告は、相続人自身で行うこともできますが、申告期限は相続開始を知ったときから10カ月と短く、期限を過ぎてしまうと、無申告加算税というペナルティが課されることになります。そうならないためにも、相続税については、税理士に早めの相談をおすすめします。

また、相続税を計算する際に、相続人によっては特例や控除を利用することで、税金を抑えることができる場合があります。そうした制度を利用すると、誰がどの遺産を相続するかによって、税金の金額が変わってくることがあります。そのため、遺産分割協議がまとまった後に相続税を計算してみたら、特例や控除が利用できなかった、こんなに税金がかかるならこの分け方はしなかった…ということもあります。財産を相続しても、税金を含めて考えたら実際に手元に残る財産が少なくなってしまう可能性もありますから、税金は遺産分割協議を進める上でも、重要な考慮要素の一つです。

遺産分割協議をするにあたっては、今予定している分け方では税金がどのくらいかかるのか、税金が抑えられる分け方はできるのか、などを税理士に相談しながら進めることをおすすめします。

不動産の登記で相談すべき専門家は?

遺産分割協議で不動産の分け方を決める場合、相続人の一人が不動産を相続するのであれば問題ありませんが、相続財産のうち不動産の占める割合が大きい場合、不動産を一人の相続人が取得してしまうと、相続人間で不公平が生じます。

そのため、不動産を相続人で平等に相続したい場合には、共有で相続したり代償分割といって特定の相続人が不動産を取得する代わりに他の相続人に金銭を支払う方法をとることもあります。その他に、土地の分筆や建物の区分登記という、登記上別々の不動産とした上で相続する方法もあります。

土地を分筆するには、分筆登記という手続きを行う必要があり、分筆登記を行うには土地家屋調査士に土地の測量や書類の作成などを行ってもらう必要があります。

また、建物についても、部屋ごとや階層ごとに相続人が相続するには、建物区分登記を行う必要があり、こちらも土地家屋調査士が手続きを行います。土地家屋調査士が、土地の分筆登記や建物の区分登記を行ったあとは、司法書士によって相続登記を行うことになります。
こうした不動産の登記に関する手続きについては、土地家屋調査士や司法書士に相談が必要です。

遺言書があるケースでも紛争に?

遺言書がある場合には、遺言に従って手続きするだけですから、何も問題はないのでは?と思うかもしれません。しかし、遺言書の記載に不備があったり、解釈の余地があったりする場合には、その遺言書で相続財産の手続きをすることが難しくなります。他にも、遺言書を作成した当時、遺言者が認知症だったとして、遺言書が無効になる場合もあります。
こうしたケースでは、遺言書があったとしても、結局は相続人間で遺産分割協議をしなければならず、紛争化してしまう可能性があります。

また、遺言書の内容が相続人間で公平に分配する内容であればよいですが、相続人のうち誰か一人だけが相続するとか、相続人以外の第三者が相続する、といった記載がされていることもあります。相続人によっては、遺留分という遺産について最低限認められた権利がありますので、遺言書によって遺産を相続する相続人や第三者に対し、自分の遺留分が侵害されているとして、遺留分侵害額の請求をすることができます。すると、遺留分を侵害しているのかどうか相続人間で話し合い、話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所で調停や審判といった手続きを行うことになります。

このように、亡くなった被相続人が、遺言書を作成していたとしても、相続人間で紛争になってしまうケースは少なくありません。遺言書があったとしても、問題になりそうな場合には、早めに弁護士に相談しましょう。 

「争続」にならないために、生前からできることは?

相続が起こった場合に相談すべき専門家をご紹介してきました。相続人間で紛争になり、「争続」となってしまわないためには、相続が起きる前の生前に対策をしておくことが重要です。そこで、生前に相続対策をする場合に、相談できる専門家をご紹介します。

紛争の予防のために生前にできることとして一番といってもよい対策は、遺言書を作成しておくことです。遺言書を作成しても、結局紛争になってしまうのでは?と思われるかもしれません。ですが、遺言書の記載内容を工夫することで、残された相続人間で紛争にならないようにすることができます。

遺言書の作成で相談すべき専門家は?

遺言書を作成するには、民法の規定に従った形式で作成しないと遺言書として有効とされません。遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という3つの種類があり、よく利用されているのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。遺言の作成で相談できる専門家は、行政書士や司法書士、弁護士がいます。
自筆証書遺言は、遺言を作成する遺言者が、自筆で書面に記載して作成するもので、最も簡単に作成できます。公正証書遺言は、公証役場に遺言者が出向き、証人二人以上の立会いのもと、公証人に遺言者が遺言の内容を口述し、公証人がその内容を筆記して、遺言書を作成します。自筆証書遺言は簡単に作成できますし、公証役場で作成する場合と比較すると、費用もかからないため、利用しやすい方法になります。

しかし、形式上の不備があったり、遺言の読み方によっては何通りも解釈できる記載をしてしまう場合もあり、むしろ相続人間での紛争を生じさせる要因にもなってしまいます。そのため、遺言書の作成にあたっては、事前に弁護士に相談をしましょう。

相続税のために生前からできる対策は?

生前の相続対策としては、相続人間の紛争を予防するという観点だけでなく、相続税の対策も重要です。いざ相続が起きて相続税を払おうとしても、相続財産の預貯金が十分でない場合もあります。すると、相続税を支払うために不動産を売ったりして資金を捻出しなければならず、相続発生から10カ月という申告期限の中で資金を確保するのは、相続人の大きな負担になります。

被相続人としては、できるだけ相続人には相続税の負担の少ないように相続させたいという思いがあるでしょう。そのため、財産を生前贈与で先に渡しておくことや、一番税金のかからない分け方で遺言書を作成しておくことも対策として考えられます。こうした相続税対策については、税理士に相談する必要があります。

ただし、税金が一番かからない分け方で遺言書を作成していても、税金を気にするあまり、遺留分を侵害する分け方になってしまって、相続人間で紛争になる、という可能性もあります。そのため、相続税も重要な要素ですが、紛争を予防するという観点から、弁護士に相談し、場合によっては、税理士と弁護士が協同して、対策を行うことが必要になるでしょう。

このように、相続は、色々な専門家が、それぞれの専門知識をもって対応するものです。どの専門家にだけお任せすれば大丈夫!というものでもありませんので、それぞれの専門家に相談して、「争続」にならないようにしましょう。

(記事は2019年9月1日時点の情報に基づいています)